だんだん風越 2021年10月9日

子どもの変化、大人の変化(坂口 惣一)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2021年10月9日

設立準備期間〜現在まで、300記事以上を公開してきた「かぜのーと」。軽井沢風越学園の“いま”をなるべく正直に、スタッフや子どもたちが書き綴ってきました。

改めて、この積み重なってきた風越の道のり(記事)を届けることはできないかと考え、今までの記事を新たな視点でまとめる「キュレーション企画」を始めてみることにしました。

保護者、子ども、スタッフ、地域の方々…その人ならではの視点で切り取ったかぜのーとをお届けしていきます。第二回目は、保護者の坂口 惣一さんです。


「風越学園に通って、子どもはどう変わった?」

最年少の3歳で娘が入園して、1年半が経った。晴れの日も、雨の日も、野外でたっぷりあそびにひたる。そんな娘の姿をうらやましく見つつも、冒頭の質問を受けるたびに、答えに窮する自分がいる。たしかに、自然の中で目一杯遊んで、のびのびと育っている。けれど、積極的になった? 感情表現が豊かになった…? そう問いかけられると、わかりやすい変化は少ない。そもそも、子どもの変化って、そんな単純なものではないと思うし。

その一方で、大きく変わったな、と断言できることがある。
それは、子どもをみる「保護者」の視点だ。

子どもをみる視点、声かけ、かかわる距離感……スタッフがいかに子どもとかかわろうとしているかから得られる気づきは多い。そして、その気づきがあふれているのが、かぜのーと、だと私は思う。すべての記事を読み切るのはたいへんかもしれないけれど、独自のタグをもって読めば、かぜノートの記事はもっとおもしろく読める。

たとえば、「子どもを真ん中に置くために、どんなかかわりをする?」。

そんな視点(タグ)を立ててみる。そして、かぜのーとを横断的に、キュレーション的に、読みつなげてみる。すると、子どもへのかかわりのヒントがたくさん見つかる。

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スタッフは、どのような距離感で子どもを観察しているのか。たとえばそれは、日常のなんでもないあそびの風景にも現れる。


「おもちつき」の手遊び。2人一組になる場面。ユーミンの声かけは「2人一組になって」だけ。「近くの人と」とか「隣の人と」という声かけがない。これがあるかないかってけっこう大きな違いを生む。

「自分で決める、自分たちで決める」というのは歌の場面でも。北風小僧の寒太郎を歌うのだけど、歌い出しのタイミングは子どもたちが決める。「せーの」とか「さんはい」とかで大人が主導しない。

手遊びや歌。あそびの場面で、いかに声かけを省くか。早く早く、と追い立てて、先回りして手を出してしまう自分には、耳の痛い話。何をするか、ではなく「何をしないか」の気づきは大きい。家でのかかわりでも、あと3秒待ってみよう、と意識できたりする。

このように、かぜのーとでは、実践の様子を知ることができる。だけど、経験を積んだスタッフだからこそ、無意識で動いていることもある。とくに幼児とのかかわりはその傾向が強いのかもしれない。やり方が先にあるのではなく、あくまで目の前の子どもがいる。その子一人ひとりとのやりとりで、とるべき態度も変わる。では、家庭でどう接すればいいか。方法論に陥るつもりはないけど、考え方を知りたい。そんなときにおすすめの読み方が、外部の目線で書かれた記事を読むことだ。

神戸大学の赤木和重さんの連載もそのアプローチのひとつ。


一番,印象に残ったことは,子どもに話しかけるときに,「評価語」を使わないことです。例えば,私は子どもと話しているとき,「ほぉ,おもしろいの作ってるね,めっちゃすごいやん!」とすぐほめて肯定的に評価します。しかし,岩瀬さんは,私が知る限りオンライン参観のなかで「ほめる」「しかる」など子どもを評価することはありませんでした。

その最大の理由は,「評価語を使うと,そのあとのコミュニケーションが止まっちゃう」「そのあと『(先生)見て見て』と言うようになってしまう」とのこと。

ここで、何気ないゴリさんの生徒へのかかわりを、細かく「中継」してくれる。その理由の解説も含めて、おもしろい。自分は、そこまで考えて、子どもと接しているだろうか。良かれと思ってかけた言葉で、子どものコミュニケーションを止めてしまっていないか。会話で使う言葉を、少し意識したりする。

他にも、風越学園に赴任してきた、フレッシュな目線を借りることも有効だと思う。たとえば、あおのりさん。彼がスタッフと交わした何気ない会話。


で、ある時、「いやー、子ども同士をつなげるのって難しいですよね」って、あいこさん(坂巻)に聞いたら「あなたはその時に、その子とその子をつなげたいって思ったんだね。なんでつなげたいって思ったの?」と聞かれて「えっ?」ってなった。つなげたいと思う理由なんて、考えたことなかったって。

読者である私も、書き手のあおのりさんと同じ視点だ。不意を突かれる。

その背景に何を考えていたか? がたいせつなのだ、とつくづく痛感する。

家庭での子どもとの接し方をメタ認知できる機会はなかなかない。だからこそ、日々の「振り返り」になるのもかぜのーとの良さだと思う。

子どもの変化に目を向ける前に、子どもをみる大人の側の変化に意識的になる。逆説的なようだけど、それが子どもの「変態」を呼び込むかもしれない。そのためのヒントが、かぜのーとにはあふれている。

#2021 #キュレーション #保護者

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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