だんだん風越 2020年12月21日

自分でやってみる文化をつくる

岡部 哲
投稿者 | 岡部 哲

2020年12月21日

 軽井沢風越学園ではカリキュラムに「つくる・描く」という造形活動を設定しています。ここでは、年齢やプロジェクトによって集まった子どもたちが絵や立体に表したり、工作や造形遊びしたりする活動を行っています。この活動は、技能やアートのセンスを身につけること、または作品作りを目的とした活動ではありません。子どもたちが自由に生きるための力を身につけるための一つの手立てです。
 人の発達を考えたとき、身体感覚を通したイメージによる理解、すなわち絵的思考は、赤ちゃんのうちから行っている知的行動と見ることができます。
たとえば赤ちゃんが指をしゃぶり、暖かい指や口の感触を感じ、そしてまた指を見返します。
子どもが積み木を積み上げ、自分の手の平で、それをがらがらと壊します。
その、音、振動、視覚、匂い。
自分の行動が自分の周りの世界に確実に変化を起こすことができる存在であることを、五感が教えてくれる。それはなんという驚き、喜びでしょう。このような自己の身体感覚を通した学び方は、人類の歴史上、言語や数学を使った学問の発達する遥か前から行われてきた、やり方を獲得する営みです。そして、このような学び方は、分析的思考に移行しながら盛んに続いていきます。
 実際の「つくる・描く」の様子を見てみましょう。こちらは、普段からスポーツに親しみ、運動会の計画などをしている、1・2年生「スポーツ・運動会プロジェクト」の子どもたちが、「あったらいいな、できたらいいな、こんなスポーツ・うんどうかい」という投げかけで始めた油粘土で立体に表す活動です。

 まずはスタッフが粘土で遊ぶ様子を見て楽しんでいますが、ここで子どもたちは「自分もやってみたい!」と感じます。続いて、「自分ならどんなスポーツがいいかな?」という投げかけで、くっきりと、ぼんやりと、それぞれが様々に自分なりのイメージを持ちながら粘土で遊び始めます。身体感覚を生かして材料や道具と対話することは、なんらイメージや目的がなくても、その人なりの個性が自然に現れてくるもので、それこそが尊い表現でもあります。そのため初めにゴールや目的を設定し過ぎないことが重要であると考えます。
 さあ、いよいよ子どもたちの楽しさは相乗効果のうちに広がり、爆発を始めます。

この子はドッジボール。粘土のひもでラインが描けることに気がついたのですね。

この子は玉入れ的ななにか。高い位置に玉やカゴを表すために、粘土の中に竹串を埋めているようです。おや、友だちが粘土の自分を持ってやってきました。

こちらはリレー。人が沢山必要なので、お花の型を人にすることを思いつきました。1チーム5人、バトンだって渡すんです。

そして、こちらでは、「スシ食い競走」が始まりました。大好きなお寿司を上から吊り、そこを自分が駆け抜けます。

障害物競走では化石の発掘もできるし、

この子は、なんとうごめくヘビの群れを棒高跳びで悠々と飛び越えます。

日頃からスポーツに親しんでいる子どもたちではありますが、子どもの発想や表現が、実際の日常や現実とリンクしているとは限りません。しかし、その境界がないのが子どもの世界であり、それは子どもにとってのリアルな感覚です。

 さて、つくる・描くでは、自分の思い描くものを実現できるという感覚を養うことが目的の一つです。「やってみたい!」というワクワクや楽しさから、一人ひとりが夢中になれるテーマが発想され、それがイメージや身体感覚とともに形として実現することで、子どもたちには「自分がつくることができる」という感覚が身につきます。そのため、思い描いたものを実現できるという体験こそが重要です。それゆえ、大人は子どもが思い描き実現するための手立てを徹底的に講じるとともに、作品の外見上の見映えではなく、そこで何が実現されているのかを慎重に見とる必要があります。
 もう一つの目的として、自他の良さを認識しながら自己肯定感を養うことが挙げられます。導入の「あったらいいな、できたらいいな、こんなスポーツ・うんどうかい」という投げかけは一つの例ではありますが、そこで思いつくテーマは一人ひとりが夢中になれるものであり、正解がない活動により個はゆるやかに繋がります。つまり、自分以外の人のよさも味わいながら、自分のよさや満足感を味わうことができるのです。
 このように、つくること・描くことは、ただ目の前のものをつくっているだけではなく、いまだ見たことのない新しいビジョンを描く身体的な行為です。これは、自己の内面との対話が「いいこと考えた!」と新しい発想を紡ぎ出すことであり、このような子どもたちの熱中を言い換えるなら、新しい自分をつくっているということに他なりません。そのため、軽井沢風越学園における「つくる・描く」の活動は、教科の一つではなく、一人ひとりがつくり手になるための学びの土台であり、さらにはこれが子ども発のセルフビルドの活動へとつながります。そして、「自分でやってみる」というマインドを持った子どもたちが、あらゆる分野・領域で、新しい世界のつくり手となっていくことを信じています。

岡部 哲

投稿者岡部 哲

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ラボを担当しています。
音楽が好き、岩が好き、つくる描くもまた然り。
カオスの縁が好きなのです。

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