だんだん風越 2020年10月20日

まぜるから分ける 分けるからまぜる

井手 祐子
投稿者 | 井手 祐子

2020年10月20日

「ホーム」から「惑星」へ、「遊ぶ」から「遊び込む」へ。

オンラインでの出会いを経て、6月・7月はホームを中心に過ごしてきた子どもたち。
ホームが子どもたちの安心の場になるのは早かったけれど、ホームを超えた繋がりはなかなか生まれてこなかった。「あの子とあの子が繋がったら、世界が広がるだろうな」「あの子には、もっとチャレンジできる場があるといいな」「一人の子を他のスタッフと多角的に見れるといいな」と感じて、他のホームとつどいや遊びを一緒にしてみたけれど、気がつけばホームに逆戻り・・・。

そんな状況で迎えた夏休み。私たちスタッフは、“より良い”を探して議論を重ねた。一旦出した答えを何日か寝かせて、また練り直しての繰り返し。そして、5つのホームを3つに組み替え、年齢や発達段階の近い子どもたちで新たなグループ(惑星)を作り、スタッフ2人で各惑星を担当することにした。

異年齢を大切にしている風越学園において、敢えて年齢の近いで分ける。矛盾しているように感じるかもしれないが、これは私たちなりに考え抜いた答え。風越学園に出会い、スタッフや友達と安心の場を築き始めた子どもたちには、次の段階として、「友達と深く関わり合いながら、遊び込む経験」が大切だと考えた。

広いフィールドに散らばって浅く遊んでいた状態から、思いを伝え合い、刺激し合い、葛藤や心の動きを伴いながら遊びに没頭できるように、「遊ぶ」から「遊び込む」に移行すべく、15人前後の同年齢のグループに組み替えたのだ。

夏休み中は、惑星の子どもたちが過ごす場所を開拓したり、ホームの子どもの成長を引き継いだり。子どもたちと出会い直すことを楽しみに思う一方で、考え抜いたとは言え、これが最善の方法なのかと考え続けた気がする。

「みんなも、わたしのことを思ってくれているのがわかった。」

そして迎えた夏休み明け初日。「それぞれの惑星に旅立とう!」と、惑星へのチケットを一人一人に手渡し、翌日からは惑星で集まることを発表した。突然のことに子どもたちの反応は様々。「なんだかたのしそう!」という表情の子もいれば、「よく分からないチケットはうけとれない」と表情が強張っている子も。

その翌日、「からまつばやしのわくわくせい」に14人の子どもたちが集まった。早速、新しい仲間と散歩に行こうと準備を始めたところで、マルが言った。

「わたしはいきたくない。」
「わたしはホームのともだちとあそぶの!ホームがいいの!」

なるほど。それはそうだ。突然のことに戸惑いがあるだろう。その気持ちを受け止めながら、わこさんがマルを誘ってみるが、マルの心は動かない。わこさんは他の子どもたちに、「マルちゃん、いきたくないっていってるけど、どうしよう?」と聞いた。

すると、
「マルちゃん、ぼくがプレゼントあげるよ」とシンジ。
「わたしもホームがいいって思ったよ。マルちゃん、わたし、おさんぽからかえったらおてがみかくね。」とカナメ。
「ぼくもかくよ」「わたしもおうちでかいてくるね」「いっしょにいこうよ」と、それぞれの言葉で、マルに思いを届けた。

すると、わくわく星の仲間からの言葉を聞いて、マルが動き出した。

お散歩の帰り道、「わくわくせいのみんなも、わたしのことを思ってくれているのがわかった。お散歩にきてよかった!」と、明るい声でマルが言ったのが忘れられない。

慣れ親しんだホームを離れる不安。そして、突然始まった惑星での活動への戸惑い。それは、言葉には出さないけれど、他の子どもたちも同じように抱えていた不安だったのかもしれない。一歩踏み出して出会えた新しい世界。新しい仲間と時間を忘れてたっぷり遊んだ帰り道、子どもたちの表情は晴れやかだった。

空間と時間を共有する「探検」が運んできたもの。

”からまつばやしのわくわく星”での活動が始まって2ヶ月弱。
わくわく星は、週に一度は学園の外に出かけている。普段は朝のつどいが終わると、それぞれの遊びに見事に散ってしまう子どもたち。そんな好奇心旺盛な子どもたちの共通の楽しみが探検なのかもしれない。

探検になると必ず先頭に来るのは、カオル。先頭を歩きながら、持ち前の観察眼で生き物を見つけては、みんなに見せてくれる。木登りをすれば、みんなが憧れるほど高くまで軽々と登っていく。朝から帰りまで虫捕りに興じて他の子と交わることが少なかったカオルだが、自分の好きな世界を友達と共有できたことで、柔軟で朗らかな新たな一面を見せるようになってきた。

ある日、少し遠くまでチャレンジな探検をした時、足下に転がるドングリを見て、「どんぐりころころどんぶりこ〜♪」と鼻歌を歌い出した時には、目を見開いてびっくりしてしまった。カオルのウキウキした気持ちが、思わず溢れ出した感じだったから。

強がらなくたっていい。さらけ出したっていい。ありのままの自分でいられる場所をようやく見つけたのかもしれない。カオルだけでなく、この2ヶ月、子どもたち一人一人の変化に驚かされっぱなしだ。

子ども同士の深い関わりが生まれるには、空間と時間を共有することが欠かせない。
移り変わる季節を肌で感じ、思いがけない生き物との出会いに驚いたり感動したり。また、偶然的に起こるハプニングに子ども同士のぶつかりや協同も生まれる。同じ景色を見ながら、それぞれが感じたことを伝え合う。探検は、同じ窯の飯を食べるのと同じような体験なのかも。

トンボが飛んでいた夏の終わりから、木の実が落ち、葉っぱが色付き始めたこの頃まで、協同と個別の遊びを積み重ねながら過ごしてきた。

「遊び」も「関係」もつづいていく。

10月に入り、探検で拾ってきた木の実を使ってケーキ屋さんごっこが始まった日、その近くでカエデが宝石屋さんを、アオイがおしゃれやさんを開いていた。お客さんが店をはしごして楽しんでいる様子を見て、ケーキ屋さんをしていたユイが、「いろんなお店がならんだらおもしろいね!」と言った。その言葉を聞いて、マーケットのようにそれぞれが好きなお店を出して、個別の遊びが他の人とつながる場を作ってみたらどうかな?と考えた。

早速子どもたちに、「ちょっと噂を耳にしたんだけど・・・・。風越マーケットが開かれるらしいの。そこでお店を出してくれる人を探しているらしいんだけど、みんなどう思う?」と相談してみた。すると、「やるー!」と概ね賛成の声。カエデも「ぼく宝石屋さんするよ」と即答した。

カエデはこの2ヶ月、カラフルなタイルがついた石を見つけてはお店に並べ、一人で宝石屋さんを深めてきた。お客さんがなかなか来てくれなくて、「きょうはぜんぜんうれなかったな。」としょんぼりしていた日も。最初はきれいな石を集めていた個別の遊びが、お店の場所を移動させたり、大きな声で呼び込みをしたり、周りの人とつながることで形を変え、どうしたら宝石を買ってもらえるか考え続けた日々だった。

マーケット当日、慣れた手つきで一人で準備を終え、いち早くお店を開いたカエデの姿には、試行錯誤を通して得た自信が見えた。

また別の日の探検で見つけた、鮮やかな色のヨウシュヤマゴボウと石鹸のように泡立つエゴノキの実からは、カオル、ハジメ、シンジの手によってブドウサイダー&ビールが生まれ、お店屋さんの扉にはマルとルカのアイデアで自動扉が取り付けられた。子どもたちから出てくるアイデアは、いつも大人の予想を超えていた。大人の手が必要なこともあるけれど、大人が場を設定しすぎて、「ぜーんぜんおもしろくない」と子どもたちから酷評もらった日も。あくまでも子どもたちの遊び。大人の関わり方、関わる塩梅について、私自身も学ぶことが多かった。

ぶっつけ本番の「からまつばやしのまーけっとやさん」。お店がオープンしていたのは、正味30分くらいだったかな。たくさんのお客さんを迎え、いつもと違う雰囲気に緊張して場を離れた子もいたけれど、一人一人の「したい」が詰め込まれ、それぞれの関わり方ができたように思う。大切なのはこの場に至るプロセスであり、そこに子どもたちの成長が詰まっているから。

お店が繁盛しておしまいではなく、探検を始まりとする遊びは形を変えて続いている。
「シャボン玉の木が学園にあったらいいなー」「この種を植えたら生えてくるかな?!」と夢がふくらみ、残った木の実を植えて森に返す「どんぐり返し」につながって。子どもたちの興味関心の旅はどこへ向かうのでしょうか。仲間と共にたっぷり遊び込む経験はその子の核になり、そこで得た自信はその子の世界を広げてくれることでしょう。

わくわく星の子どもたちが深めている遊びに、他の惑星の子どもたちや小学生が混ざる様子も見られるようになってきた。これからまた異年齢で混ざっていくんだろうな。「まぜるから分ける。分けるからまぜる」惑星グループに組み替えて2ヶ月たった今、そう感じている。

井手 祐子

投稿者井手 祐子

投稿者井手 祐子

生き物たちのドラマに魅せられて、軽井沢で森のガイドを15年。子どもたちと自然を見続けたくて軽井沢風越学園へ。学園の森の保全しながら、子どもたちと自然の不思議や面白さを見つけていきたい。幼少期は、近所で評判のお転婆娘。実は、冒険や探険に誰よりも心躍らせている。

詳しいプロフィールをみる