だんだん風越 2020年9月19日

安心できる居心地の良さと、その子の学びを両立したい

岩瀬 さやか
投稿者 | 岩瀬 さやか

2020年9月19日

思いがけないスタート

今年度は、全員が新入生。初めての場所で初めての人と過ごすことは、ワクワクするけれど誰だってドキドキするものです。新しい学校、新しい友だちとの集団生活などに、不安でしかたのない子もいたことでしょう。さまざまな場所から集まった子どもたちが、安心して学校生活をスタートできるようにしたいと、ウェルネス(養護教諭を含めた子どもたちの心と身体をサポートするスタッフ)で準備をしてきました。

ところが、まさかのオンラインスタート。新型コロナウイルス感染予防対策もあり、新しい環境に慣れる場を作ることもできない。「分散登校がはじまったら、泣く子がたくさんいるんだろうな。学園に入れない子もいるかもしれない」と思いながら、登校初日の準備をしていたのですが、蓋をあけてびっくり。泣く子は数人、それも5分後には一緒に遊び始めるではありませんか。

新しい環境になれる場を作れていなかったと思っていましたが、オンラインでつながりを作ってきた1ヶ月が大きな意味を持っていたのです。

初めて会うスタッフと仲間たち。最初はどきどきしていたはずです。でも、自分の家という安心の場、そして隣には保護者もいるという状況から、新しい出会いを画面ごしでも始められていたこと、そして、分散登校という少人数の場をまず持ったことで、出会いのハードルが下がった子が多かったのではないかと想像します。その様子をみて、安心の場から始めることって本当に大切なんだなーと改めて感じました。


安心できる居心地の良さの先にあるもの

そんな安心の場からスタートし、7月。2ヶ月の間で、風越学園が子どもたちの居場所になってきたなと感じるようになってきました。ホームであったり、プロジェクトであったり、好きなスタッフであったり、好きな場所であったり。。。ケンカができるような人間関係も見えてきます。

しかし、子どもたちが安心して過ごせるようになってきて見えてきたのは、学びに入っていけない子どもたちの姿でした。「いやだ、めんどうくさい、やりたくない・・・」そんな言葉の背景を予想する毎日です。

気持ちがのらない子、全体の説明ではわかりにくい子、参加しないことで不安から身を守る子、集中が難しい子、読み書きが困難な子、寝不足の子と理由はさまざまで、怒ればすむことでも、強引にやらせればすむことでも、そのままの状態を続ければ解決することでもなさそうです。

障害のあるなしに関わらず、「わたしでいられる」安心できる居場所があることはとても大事なこと。「その場に安心していることができる」その上に、「その子の凸凹にあった学びや生活を一緒につくる」ことを考える段階になったなーと感じました。

一人ひとりの学びをつくるということ

今は、子どもたちの様子を観察し、どんな場面で困っているのか、そのときどんな行動が見えるか、生き生きしているのはどんな場面か等記録しています。そして、一緒に好きな活動に取り組んだり、お弁当を食べたりしながら話す時間を大事にしています。「この場所が好きなんだ」「こんな風に言われて嫌だった」そんなおしゃべりの中にヒントが隠されているからです。

また、その子の好きなこと、得意なことを出発点として、3ヶ月後、半年後どんな姿になっていたいかを共有しながら一緒に方策を考えようと、少しずつ保護者のみなさんとおしゃべりの時間を持ち始めました。(これもオンラインでしかできないのが、残念なのですが。。。)

そして、「こんな風にやってみると学びやすいかもしれない」と思った作戦を子どもたちと試しています。「そんなのやらない!」と拒否されることもしばしばですが、そんなときはまた次の作戦を相談するまでです。

風越学園では障害児にどんな支援をしてもらえますか?と、問い合わせをいただくことがあります。そのとき「障害の有無に関わらず、その子に必要なことを保護者と一緒に考えていきます。」と答えています。何もないところから、一緒につくるのはちょっと心もとないし手間がかかるかもしれませんね。

だれもが特別な自分

わたしは風越に来る前、公立小学校で26年間教員をしてきました。最後の5年間は、通級指導教室の担当と特別支援教育コーディネーターをしていました。多様な子どもや保護者のみなさんと一緒に過ごす中で、子どもたちが「わたしもなかなかいいぞ」と思えること、子どもに関わる人が1人で抱え込まず一緒に考える人がいることが大事であることを実感してきました。だからこそ、一方的な関係ではなく一緒に考えるパートナーでいたい。

いままで特別支援教育の中で、わたしは子どもと一緒に小さな作戦(具体的な方策をたてることを、作戦と呼んでいました)をたててきました。例えば、怒りですぐ手が出てしまう子に対して、うまく書字ができない子に対して、大勢の人の前では話せない子に対して。一緒に状況整理をして、できそうな作戦を出し合って、通級の部屋(小さな場)で試してみて、うまくいかないときは別の作戦を考えて、日常の中で試してみようというエネルギーが貯まるのを待って、日常の中(大きな場)で試してみて、うまくいったことを一緒に喜び、うまくいかなかった部分は作戦が合わなかっただけだからまた別の作戦を一緒に考える。

やっているうちに、これって障害のある子にだけ行う特別な支援じゃないなと思うようになりました。人は、本当にみんな違っていて、子どもも大人もみんな凸凹がある。だから、風越では「特別支援教育」ではなく「個別支援教育」だと考えています。いや、一方的な「支援」でもなく、一緒にやりとりしながら作戦を考えるパートナーと思うと「個別伴走教育?」と言えるかもしれません。



ちょうど後期で子ども一人ひとりにパートナーとなるスタッフがついて学びの計画を立てたり、ふりかえりに伴走する
取り組みが始まりました。その場の困り感だけに焦点をあてるのではなく、半年後、1年後、前期のおわり、卒業のとき、それから先のことを一緒に話して想像して、「こんなわたしになりたい」というその姿にむかって、一緒に作戦を考える。わたしが通級指導教室でやってきたことって、パートナーの役割だったのかもと思ったりしています。

風越に来れば何でも解決するわけではもちろんなくて・・・例えば、オープンなスペースがほとんどで周りからの刺激が多いこと、変態しつづけているため見通しがもちづらいこと、活動の単位がいろいろで決まった場所やメンバーではないこと、前期は野外の活動がほとんどであること、自分の学びを自己選択すること等、風越の特徴に苦しさを感じる子もいると思います。

また、日常的に個別の介助をつける体制はとっていないこと、専門の療育スタッフや道具はないこと等、風越にないものもあります。その中で、安心できる居心地の良さと、その子の学びを両立するのはどうしたらいいか。きっと、たくさん対話し、手間をかけ一緒に作っていくしかないんだろうなー。

「わたしらしいわたしになる」ためにできることってなんだろうと日々悩みながら、今日も作戦を考えています。

 

岩瀬 さやか

投稿者岩瀬 さやか

投稿者岩瀬 さやか

これまでは通級指導教室で、小さな成長を子どもたちや保護者のみなさんと一緒に喜びあってきました。軽井沢風越学園の様々なフィールドの中で、「自分もなかなかいいぞ!」を一緒にたくさんみつけられたらいいなあと思っています。

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