2021年7月9日
リソースセンター(事務局)スタッフの松澤雛子。ウェディングプランナーやカフェ店長から転職してきた当初は、「アジェンダ?エビデンス?指導要録??」など、ビジネス用語と学校用語の2つのカルチャーショックに一人悶々としていたそう。1年が過ぎ、のびのびと動き始めているように見え、インタビューしてみました。(編集部・辰巳)
ー風越学園で働いてみようと思ったきっかけは?
自分が育ってきた学校がちょっと変な学校で、おもしろい経験ができたんです。風越に母校と近しい印象を受けて、自分もそれをつくっていくプロセスに関われるって、絶対楽しいな、どんなことが一緒にできるかなって思ったんです。
ウエディングの仕事は、お客様に合わせて毎回新しいプランを組みます。ゼロから生まれる瞬間って、もちろん苦しみもあるけど、それ以上に楽しみも大きい。その瞬間が、すごい好きで。それを風越学園でも一緒にやりたいな、できたら嬉しいなって思いました。
ーでもしばらくは、わからない言葉が多すぎて、もやもやしてた。
まだ校舎の引渡しが終わっていない2019年の12月頃に入職したけれど、話されていることが何を言ってるかわかんない、誰に聞いたらいいかもわかんない、誰も知り合いがいない!という感じでした。
校舎に引っ越して、いろんなモノを大量に買うのが最初の仕事。いろんなことがわからないうちに、新型コロナウイルスでしばらくリモート勤務になって。やらなきゃいけないタスクはあるんだけど、その進め方がわからない。すごい困ってた気がします。6月から通常登校が始まって、みんなに会えた時は嬉しかったなぁ。子どもたちとの掃除プロジェクトもその頃から始まって。
ー1回目のかざこしミーティングで話題が出て、始まったね。伴走しながら、どんなふうに見ていますか?
子どもと一緒に新しくつくっていくって、どういう感じかもわからないまま始まって。まず、1学期末の大掃除やろうと、スタッフや子どもに声をかけたり、必要なものをつくったりして。今もそうなんですけど、風越では、いろんなアイデアを多数決で決めるわけじゃない。どう決める?を話し合うところからのスタートでした。
誰が決定権を持っているか、何をもって決めるかみたいなところで、子どもも私も今も悩んでいるし、ずっと悩んできた。「これでよろしく」って、大人で決めて子どもに伝えるのは簡単だけど、そうじゃないほうがいい。じゃあ、どうしていこうか?って、子どもたちとはその都度話しています。
ー「これでよろしく」じゃないほうがいいと思っていることについて、もう少し聞かせてください。
それは、掃除プロジェクトチームの思いかな。特に8年生のシュウゴとコウキの二人のベースにあるのは「楽しく掃除したい」。綺麗にしたい、じゃないんですよね。結果よりもプロセスを大事にしたいんだろうなと感じていて、そういう彼らの気持ちに応えていきたいなと思っています。何より本人たちが楽しくないと、続けていくことが難しいし。
掃除は誰かがやってくれるものだ、じゃなくて、一緒にやろうと思ってもらえるにはどうしたらいいんだろう、それを伝えるにはどうしたらいいんだろうってコウキたちは考えているみたいで。掃除という機会を使って、子どもたち同士のコミュニケーションをどのようにつくれるか、どんなふうに伝えられるか、伴走しながら一緒に考え続けた1年でした。
ーそんなふうに子どもたちと一緒につくっていく仕事と、日常の中で担当している仕事って、どんなふうに自分の中で整理していますか。
備品の流れを見て管理することって、その備品の使い方や空間のデザイン、そこにいる人の気持ちにつながっているなと思っていて。どんな活動で誰が何を使っているのか、全然知らないなあと気がついて、子どもたちの活動や流行ってることに対してのアンテナを貼る必要があるなと思っています。子どもたちと一緒にやっている掃除も、そのアプローチの中で同じこととして捉えているし、プログラム調整・備品チームとして関わっているアウトプットデーや、例えば5月に実施した放課後の校舎見学もつながっているように感じていて。
突発的に起こるイベントも、これまで積み重ねてきたことと関わってくるから、日常の子どもたちとの暮らしとイベントもつながって面白いなと思って。ちょっとした非日常のイベントの仕事は、お祭りみたいな感じもあって楽しいです。それだけやっていたい(笑)。
ー参画して1年が過ぎ、誰かから担当業務として任される仕事以外に、まっちゃんが自分で思いついてやってみようっていう仕事が増えてきたように見えています。今年度新しく入職してきた人たちと一緒にランチ食べようよ、という呼びかけとか。自分の中で、何か気持ちの切り替わりがありましたか?
あんまり意識はしてなかったですね。でも、すごく不安そうだったり、所在なさげな感じを見ると、つい声をかけてしまう自分がいます。大人にも子どもにも、自分の居場所を見つけるまでのヘルプは、したいなって思う。たとえば風越ミーティングで、どこのグループに入って話し合いしようか迷ってふらふらしてる子を見ると、あそことかどう?って提案しちゃう。全体を少し離れたところから見て、ここが漏れているかも、というところを私がフォローできていると嬉しいな。
ーそうやって子どもや大人に関わる時に、ケアや保護というよりは一時的な休息のつもりなのかな、と感じることがあります。
私の好みとして、べったりはできないんだと思います(笑)。人はそれぞれ違うからいいと思うし、ずーっと固定的な関係で一緒にいることが自然だと思わない。可能性がなくなっちゃう気がするから、巣立っていってほしい。
私自身は、自分のやりたいこととかがなかったんですよ。大学生くらいまで、一本軸が通っている人に憧れていて。自分の軸を貫いていく人を見て、サポートしていく動きは自然にできるけど、自分がそういう軸を持った人になるっていう感覚が小さい頃から本当になくって。だからこそ、何かにならねばならぬと思って苦しんでいる人がいたら、別にならなくてもいいんじゃんっていうのは、言えるし、言いたくなる。人は、巡り合わせというか、必要な時に必要な人や挑戦する機会に出会うのかなと思うので、そんな時に傍にいる存在で居られるといいなと思っています。何かが変化するタイミングに焦ったりしている人がいたら、ちょっとお茶でもどう?と声をかけられるような余裕があれるようにいたいなあ。とか言っている私が一番バタバタもがいているんですが(笑)。
ーそんな自分でいられるようになったきっかけは?
去年の年末くらいにリソースセンターのメンバーみんなで話したりする中で、チームの一員になれた感じがすごいしていて。今のチームが好きだなって。それぞれの仕事で何が忙しいのかわからなくなってた時期なんですけど、何やってるの?ってやっと声をかけられるようになって。なんか忙しそうだけど、何してて忙しいの?、今これだったらできるよとか、今これやばいんだよねって言い合えるようになったのかな。そういうコミュニティの中にいられていることに、安心したんだと思う。今なら助けられるよって、他の人にも関われるようになったり、その時に感じた気持ちをすなおに伝えられるようになりました。
ー今、一番興味あることって?
ちょっと迷子中だけど…人に興味があるのかもしれないです。
リソースセンターのメンバーだけなら、必要な時にグッと集まって団結することが、なんとなくできる。でも学校全体になると舵の切り方が変わるなと思っていて。何かをやるぞっていう時に、先頭を走ってる人だけが頑張ってる。それにもちろん誰かがフォロー入れることもあるんだけど、それはあなたの責任でしょ、みたいなコミュニケーションになっちゃう時がある。そうじゃない方向というか、なんでそういう構造になるんだろう?、どういう組織になっていきたいんだろう、っていうことがちょっと気になっています。業務と別の方向で気になることが、1年過ぎてやっと生まれてきました。
実は、人と話すのすごい苦手なんですよ。だから人事的な仕事を避けてきた私が、人に興味を持つことに一歩近づいてきた、というのが我ながらおもしろいなって。
前職のウェディングやカフェの仕事は、通り過ぎていく人との関わりをつくっていて。今は毎日一緒にいる暮らしの中で何かをつくっていくのってすごいことだなぁって。
先生を目指すとかって、自分には全然なかった発想だし、異星人と一緒にいるんだよなと思ってたけど、実は教員スタッフは私のことを異星人だと思っていたと最近知りました(笑)。それで、ちょっと吹っ切れたのはあるかもしれない。違う星の人だから、そりゃ言語通じないことあるよなぁって。
ーやりとりをあきらめるというよりは、それとして理解できる感じ?
そうです、やっと腑に落ちた。だから、わからないから教えて、とか、それはなんで?って聞けるような関係性が、1年経ってようやく始まったのかもしれません。子どもにとっても大人にとっても、ちょうどいい壁打ち相手とか、間を繋げるとか、そういう人になれるといいなぁって思っています。
(2021/5/17 インタビュー実施)
小さいころから親しんだ軽井沢に大人になってから移住。四季を通した自然に少しずつ学んでいる真っ最中。都会と自然、人間と人間、動物と人工物、それぞれの世界が穏やかな繋がりを持てるといいな、と感じています。
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