2020年12月16日
6月に通常登校が始まってから、6年生のハルカさんはとにかく忙しそうだった。やりたいことにあふれていて、校舎のあちこちで姿を見かける。ライブラリーの一角でchromebookを操作するさまはスタッフさながら。いわゆる裏方仕事を楽しそうに進める姿に、なんとなく親和性を感じてもいた。そんなハルカさんが最近のカリキュラムについて、岩瀬やホーム担当の依田と相談していると小耳に挟み、私(編集部・辰巳)も最近、どう?と聞いてみました。
〔辰巳〕最近、どう?
〔ハルカ〕最近困っているっていうか感じてることを書き出して、ひっきー(依田)やゴリさん(岩瀬)とかに伝えてみました。
〔辰巳〕なんで伝えようと思ったの?
〔ハルカ〕スタッフは子どもたちのことを信じてるって思ってるかもしれないけど、私はそう実感してなくて。今はスタッフが決めた狭い範囲の中で、本当にちょっとだけしか選べてない感じがあって、それが本当に窮屈だなぁって。スタッフがカリキュラムの枠をどんどん決めるんじゃなくて、私たちに託して、私たちをもっと信じてほしい。 たとえば、1ヶ月の間にこの基礎は学ばないといけないっていうことだけが提示されていて、その中で自分で時間割を決めて、困ったときだけスタッフに手助けしてもらう感じが良くて。わからない時に、スタッフに聞きにいきたい。 土台の学びとセルフビルドの時間(以下、セルフ)を分けずに、ほとんどセルフにして、テーマプロジェクト(以下、テーマ)もセルフにしてほしいんですよね。
〔辰巳〕テーマプロジェクトはスタッフから提案されるけど、それを選ぶか選ばないか、どのテーマを選ぶかは子どもに託してほしいってこと?
〔ハルカ〕うん、あとは、テーマプロジェクト自体もいらないかなって。
〔辰巳〕なんでそう思うの?
〔ハルカ〕今のテーマプロジェクトって、スタッフが取り組むテーマもアウトプットすることも時期も決めている。その期間が本当に短くて、今回は2ヶ月しかないんです。やるなら、もっとインプットしたい。本当はインプットが7で、アウトプットが3くらいでいいんですよね。今はその反対で、インプットが3で、アウトプットが7くらい。やるなら、アウトプットのタイミングは自分たちで決めて、必要だったらアウトプットしたいから来てくださいって、他のスタッフや地域の人たちにお知らせして見てもらうのがいいなって思うんですよね。 スタッフがテーマを決めるのは、学年で学ばなきゃいけない単元があるからしょうがないって思うんですけど、風越は、”「 」になる”って言ってるから、自分なりの”「 」になりたい”を見つけて、それをどんどん突き進めていく時間がないと、意味ないじゃないですか。 一週間の時間割の3分の1がテーマプロジェクトだから、ものすごくもったいないなって。セルフが全部でも、いいと思うんですけどね。
〔辰巳〕協同で学ぶ、ということについては意味とか価値は感じる?
〔ハルカ〕まぁ、大切かもしれないけど、自分でやっている出版社とかのプロジェクトは3〜7年までメンバーがごちゃ混ぜだから、異年齢で一緒にやるってことはそっちで学べてる気がする。決められてるテーマプロジェクトよりは、自分で進めている方が自分には合ってるなって思う。出版社とか文化祭実行委員会みたいに、やりたいって思ってる人たちが集まるプロジェクトだから、団結力があって。 これ苦手だなとかやりたくないな、そこまでは好きじゃないなっていうことを克服するのも必要だと思うけど、自分にとって本当に必要だなって思うタイミングに学べた方がいいし。
〔辰巳〕開校してから、時間割が色々変わってきていると思うけど、変わり続けていることについてハルカはどう認識している?
〔ハルカ〕開校して1年目で、スタッフも私たちもみんな手探りだから。これがダメだなとか、もうちょっと強制しなきゃってスタッフが思って、こうしてるのかなって思う。あと、学ばなきゃいけない範囲があるから、そのためには枠を決めらなきゃいけないのかな、それでどんどん狭まっていくのかなって。でもどんどん窮屈になっていって、できれば全部自由にしていきたいのにっていうスタッフもいて。あんまり他の学校に事例がないから、つくっていくのが大変というのはあると思うから、少しずつ解放されていくしかないのかなぁって。でも、私はどんどん一人で進めていきたいタイプだから。ひっきーに相談した時は、テーマプロジェクトのスタッフに思いを伝えて相談したらいいんじゃないの?って言われて、次回からそうしてみようかなぁと思っています。 好きなときにやりたいって思ったことをやるのが、一番意欲が出て吸収できる。たとえば土台の学びで算数をやっていて、いいところまで問題解いているのに終わりの時間だからやめるしかないっていうのが本当に嫌で。私は6年生の算数はもうやり終わったから、ひっきーと相談して、土台の時間に必修になってる算数の一部を、セルフの時間に振り替えたんです。
〔辰巳〕もっとハルカのペースで風越で過ごせるようになれば、どんなことをやってみたい?
〔ハルカ〕風越にはせっかくたくさんの本があるから、もっと本を読みたい。ここではずっと机に座って授業するわけじゃない。社会とか理科とか英語も、自分で本を参考にしながら勉強するような時間を過ごしたい。 社会に出たら人とどうしても協力しないとダメだから、プロジェクトの経験も大切だなって思う。でも、例えば出版社プロジェクトのメンバーは学年がバラバラだから時間割が違って、ほとんど集まれないし、決めた原稿の締め切りが守れなくて。時間割のほとんどセルフになったら、みんなの合うタイミングがきっと増えてくるんじゃないかなぁ。
〔辰巳〕ハルカみたいに自分で自分の学びを進めたいっていう子もいれば、枠を決めてほしいっていう子もいるじゃない。そういう意見にはどう思う?
〔ハルカ〕そういう場合も、セルフの時間がいっぱいあって、選択できる時間と選択肢をたくさん置けば困らないんじゃないかな。わからなくなったら、パートナー(セルフビルドのパートナーとなるスタッフ)に相談すればいいんだし。 自由にって言われても最初はできない子がいるから、枠を決めてできるようになってから少しずつ枠を増やしていくのもわかるんですけど、私はどんどん進めていきたいタイプだから枠があると苦しくなっちゃう。その子にあった時間割でいいと思う。
〔辰巳〕ハルカは、どうやって自分で自分の学びを進められるようになったの?
〔ハルカ〕今もできるようになったかはわからないけど、小さい頃から本を読んだり絵を描くのが好きで。やらなきゃいけないことは、ぱぱっと終わらせて、その後でやりたいことをやるっていう思考になっていった。 やりたいことを先にやると、やらなきゃいけないことで時間がかかっちゃうってことが、結構あって。やらなきゃいけないことっていうのは、だいたい大切なことだから、それは理解してて。締め切りとか課題とかは、ちゃんとやるようにしてます。それも力になるから。 高学年になるとちゃんと宿題を出すことによって力がつくと思うって、あすこまさん(澤田)が言ってて、それは本当そうだなぁって。やりたいことをやるには、そのためにやらなきゃいけないこともある、やらないといけないことができないとやりたいこともうまくできないかなぁって思うから、そこはうまく両立させたいんですよ。
(2020/12/8 インタビュー実施)
ハルカ以外にも「窮屈だ」と感じている子どももいるようで、12月16日(水)のかざこしミーティングでは、3〜7年生の子どもたちを中心に「セルフビルド」をテーマに話しあいをしていました。
すべてが子どもたちに任せられていたセルフビルドの時間から、セルフビルドの中で選択肢が増えることによって、動きやすくなった子どもももちろんいます。夏休み以降、セルフビルドのことを考え続けてきている依田にも聞いてみたところ、全員にとってちょうどいい枠組みを共通で持つのはどうやら難しそう。スタッフからの提案をそのまま受け取って、やりたいことができないとあきらめずに、こうしてみたい、こういうことをやるにはどうしたらいいか考えたい、と相談してほしいとのこと。当然、スタッフ間にもいろんな思いがあります。異なる意見を一つの大きな何かにまとめようとすると、途端に難しく動きが鈍くなる、ということを去年の設立準備から何度も繰り返している気がします。