2020年9月25日
「したい」と思ったら、まずは一人で動き始めているように見える。登校してすぐ、森と川プロジェクトの掲示板に一人でアナウンスを書いている。セルフビルドの時間に、その掲示板を一人で修正している。「これ、typhoonで告知してもらえますか。」と弁当を食べている僕の前に、原稿を書いたChromebookを持ってくる、これまた一人で。そうしたコウタロウの動きに、巻き込まれている人たちがいる。本人は淡々とやりたいことをやっているだけのようだが、その熱は確実に誰かを巻き込んでいく。そして、いつのまにか僕も巻き込まれている気がする…。
ー〔本城〕コウタロウ、最近どう?
〔コウタロウ〕んー、最近…どうだろう。結構、森と川プロジェクト(以下、森川)を熱心にやってます。
ー 森川、かざこしミーティングから始まったんだよね。
今日も、午後もし雨が止んだら森川の森に行こうかなと思っていて。国際交流プロジェクトが水曜日からまた始まるんですけど、それまでは森川メインでやろうかなと。
ー コウタロウは、1学期と2学期で時間の使い方って結構変わったのかな?一週間の計画をより自分でつくるようになったと思うけど。
はい。大学みたいな自分で決める時間割になって、1時間目をセルフビルドとかにして集中してやっちゃうとか。風越入った時から、もうちょっとセルフビルドを長くして、そこに教科とかも入れられるいいなと考えていたので。
ー あ、そう思ってたんだ。
だからそれがあって、今は良い感じ。
ー 1年生〜5年生まで過ごした学校では、大体1週間の時間割が決まっていたり、教えてもらう という時間が多かったり、風越と学びかたが違うところがあると思うだけど、コウタロウのなかでは何が一番変わったなと感じてる?
セルフビルドの時間があること。前の学校だと休み時間が自由な時間だったので、そこでやりたいことをやっていたけど、道具とかもないし。で、結局家でちょっとやってるみたいな。だから、セルフビルドがあると不思議な感じ。
ー 何が不思議?
学校にきて、教科とはつながっているけど自分のやりたいことをやれること。不思議というか、いいなって。
ー 教科とつながっている感じがする。
はい。
ー 学びかたが変わったことで、コウタロウ自身の内面とか行動とか、そういうところで変わったこともあるのかな?
どうだろう。でも、国際交流とか初めてプロジェクトを立ち上げる経験をして、それがすごくいい経験になりました。あとは、人と一緒にやっていくとか。
ー プロジェクト立ち上げる経験や人とやっていく経験がいいと。でも本当、オンラインの時からずっとリーダーシップとりながら、みんなとやっているよね。コウタロウが立ち上げた国際交流プロジェクトについて、もし知らない人に説明するとしたらどんな風に説明する?
えっと、国際交流プロジェクトは、世界のいろんな国々の人と一緒に遊んだり、交流したりしているプロジェクトです。2学期からやろうと思っているのが、世界の困っている国とまずは遊んだりして仲良くなって、それでちょっと助ける…っていうより、やりとりをしながらその国を一緒につくること。
ー 今、助けるって言いかけて、一緒につくるという言葉に言い換えてたけど、「助ける」と「一緒につくる」って、やっぱり何か違う?
僕、最初は「助ける」とか「贈る」とか「支援する」とか、そういうことを考えてたんですけど、サンダー(山田)がやまちゃん(山田貴子さん・WAKU WORK English)っていうフィリピンで活動している人を呼んでくれて、やまちゃんが「助けるとか支援とかそういうのはこっちが一方的にやっているという感じだよね」って。それで、まずは友だちになって、一緒にやっていくというか一緒に楽しんでいく。そのなかで困っているだよということがあるなら、一緒に話し合う。なんか、そうやって友だちみたいになれるといいなって、そういう風に変化しました。
ー なるほどね。進めてきて、手応えとかはどう?
国際交流を初めた時から考え方とか結構変わって、自分としては進歩したかなって。みんなもいろんなアイデアを出してくれるし、僕としても楽しい。
ー 国際交流プロジェクトはさ、コウタロウにとっては勉強の一貫なの?
いや、僕としては楽しくやっていて。みんなと協力したり、フィリピンとzoomをつないだり、そういうつくっていく時間が楽しいです。
ー 英語を勉強しようとか、そういう気持ちとは違うんだ?
それとは全く別で。
ー 全く別なんだね。結果的に英語の力はつくものなのかな、プロジェクトを続けていくと。どうなんだろう?
でもなんか、仲良くはなれるから。その交流するなかで、交流する手段のひとつが英語みたいな。
ー そういう捉え方なんだね。たしかに、zoomでフィリピンの人とつないだ時、一生懸命英語で自己紹介したりしてたよね。それが終わったあと、コウタロウ単語帳もつくっていなかったっけ?
あー、つくりました。
ー それはどんな思いだった?
フィリピンの人と話すのに苦戦しちゃって。基礎的なことは前の学校でやっていたけど、実際に話してみると語彙力みたいなものが必要だったから、よく使う言葉だけ集中して書いて、単語帳にしようと思って。その次の日から全然やってないんですけど(笑)。
ー (笑)。でも一回つくってみたんだね。
ー 国際交流とはまた別のプロジェクトとして、コウタロウが結構力いれてるな、時間割いているなと僕から見て感じているのが、森川(森と川を守ろうプロジェクト)なんだけど。
森川は、最初7月3日に掃除のイベントをやって。
ー 模造紙でポスターをつくって貼ったり、typhoonでも呼びかけたりして、保護者の人も50人くらいきてくれて、子どもたちも50人くらい集まったよね。
はい。でも、森と川を守ることは掃除だけじゃなくて、森や川をもっと身近に感じたり、いいところだなと感じてもらえるところからはじめられると思っているから、今は掃除もやっているけど、他にどんなことができるか、森川の掲示板で考えていこうと思ってて。
もうやっているのが、ツチノコ見たよとか、おもしろい足跡があったよとか。そういうことを呟いて、それで探しに行って、森でお弁当をみんなで食べたりして。なんとなく誘われた人も森っていいところだなって感じてもらえたら。
ー みんながもっと森とか川に親しみを持てるように、取り組みを変えていってるということだけど、イベントじゃない形にしたいなと思ったのはどうしてなの?
イベントは人もいっぱい集まってくれるし好きなんですけど、イベントをするだけじゃ日常的にならない。あと、イベントだと時間が合わない人が来れないけど、掲示板だといつでも見れるから。
掲示板では、ミッションというのを出しているんです。ツチノコ探そう!とか。それで、見つけたとか見つからないとかやって。それだと、自由に森に行けるじゃないですか。セルフビルドの時間を使ってもいいし、家のそばの森で見つけてきたとかでもいいし。で、盛り上がってきたら、みんなでツチノコ探しにいくっていう探検もいきたいなと。
ー ツチノコは、コウタロウはどれくらい信じてる?1が信じてない、10がすごく信じているだと、コウタロウはどの辺り?
僕はそんなに信じてなくて。。。
ー 信じてない(笑)。
ツチノコってアイデアはお父さんが教えてくれたんです。僕はそんなに信じてないけど、でも人々のなかで中間くらいじゃないですか。いるかもしれないし、いないかもしれない。カブトムシを見つけようだと、いるってわかってるものを探しにいくことになるから、そうじゃないものの方がおもしろいかなって。
ー なるほどね。あの辺りにはいるとかこの季節はいないとかね。
巣を見つけようとかはいいかもしれない。
ー プロジェクトを動かしていく、進める。しかも一人じゃなくて仲間と一緒にって、苦労もあったり、楽しさがあったりすると思うけど、コウタロウにとってプロジェクトってどんなもの?
困ったことを解決するためにみんなで集まったり、楽しみたいことをみんなで楽しんだり、みんなで集まる場所。
ー みんなで集まる場所。なるほど。集まる場所として、かざこしミーティングもあるじゃない。かざこしミーティングも積極的に出ているなと思うんだけど、かざこしミーティングはどう思う?
かざこしミーティングは、結構いい場所。
ー いい場所。
持ち寄るのにいい場所。でも、出れてない人もいるみたいで、それがもったいない。
ー どういうところがもったいないなと思うの?
風越をつくる、決まりとか決められたり、楽しいことをやったりするのに、参加しないとちょっと損。
ー せっかくの機会だもんね。
ー コウタロウはさ、風越くることは自分で選んだの?
風越って場所があるよというのは、お父さんとお母さんが教えてくれて。自由な時間、好きな時間に好きな教科ができるというのが最初いいなと思って、それでホームページでスタッフ紹介見てみたら、作るのが好きな人がいたり、技術がある人がいて、僕木工が好きだったのでいいかなと思って入りました。
ー 実際入ってみてどう?
好きな時間に好きな教科ができるのはいいなと思っていて、あとはテーマプロジェクトが楽しい。
ー テーマプロジェクトは何やってるんだっけ?
森の家。ラボとかもあるからいろんな道具も揃っているし、やりたいことが出てきた時にすぐできる。
ー やりたい時にすぐできる。いろいろやりたいことありそうだもんね。それが充分できてるなという感じなのかな。
あと、いちからつくるってことは、面白い。帰りとか結構疲れてるけど。
ー たっぷりやってるもんね。家に帰ってからの過ごし方も変わった?
宿題とかないので、のんびりしている感じかな。お城の鳥瞰図書いたり。でも本当に疲れた時は、ずっと椅子に座ってごはん待ってる。
ー (笑)。風越で不安に思うこととかはない?
んー、そんなないです。
ー この間さ、来年度入園・入学希望する人たち、特に保護者に向けて、風越の様子を説明していたんだけど、その時にホームグループ「こ」の人たちがたいちとミーティングしている動画があって、そのテーマが「宿題ってなに?宿題っている?」っていうものだったのね。それでそのあと保護者の人にもそのテーマで話をしてもらったんだけど、宿題がほとんどないこととか、もしかしたら他の学校よりいわゆる教えてもらう授業みたいなものは少ないことに不安を感じる人もいたんだよね。そのことについてコウタロウは不安はないの?
ないです。でも僕の場合は、一斉授業が好きで、みんなの考えが聞けるというか、問題を解く解き方とかが聞けるから。あとブッククラブみたいな国語の授業、読んでどう思ったとか聞けるのが、前の学校では楽しかったかな。
ー そっかそっか、一斉授業だと他の人の意見が聞ける。それが楽しかったんだね。今は一斉授業ほとんどないけど、どうしてる?
そういう機会はちょっとはほしいけど、ミニレッスンってありますよね。それがあるから。
ー 今コウタロウは6年生で、中学も風越で過ごすのかな?
たぶん、はい。
ー そうするとあと3年半くらいあるけど、何かチャレンジしたいことはある?
アウトドア系にちょっと興味があるから、森とか入ってなにかやりたい。僕、歴史が好きだから、軽井沢のお城を研究したりとかもしていきたいし、あとは自分の立ち上げたプロジェクトを卒業まではやりたい。あと、木工もやりたい。
ー やりたいこといっぱいあるんだなあ。逆にさ、いま学校で過ごしていてもっとこういう風になったらいいなとか、こうしてほしいとかある?
んー、ないかな。
ー でてきたら教えてもらえたら。またみんなで話したりとかいろいろしよう。
はい。
ー 風越って、今どんな風に見えてる?どんな場所だなあって思ってる?
風越の校舎のなかでいろいろ面白いことが起きてるから、なんて言うんだろう…ネタの集まっているところ。いろんなプロジェクトが起こってて、いろんなことやって、一人の子がぽろっと言ったことでも実際やったりして。結構知らないところで、いろんなことが動いてる。
ー そうだな、動いてるな。コウタロウからはそんな風に風越が見えてるんだね。 最後に一言ありますか?
森と川を守ろうプロジェクトとか国際交流とかみんなで頑張っていくので、興味とかあればぜひきてくれたりしたら嬉しいです。
ー OK!ありがとう。
(インタビュー:2020年9月8日)
何をしているのか、何が起こっているのか、ぱっと見てもわからないような状況がどんどん生まれるといいなと思っています。いつもゆらいでいて、その上で地に足着いている。そんな軽井沢風越学園になっていけますように…。
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