「最近、どう?」 2020年10月10日

「幸せを感じられる余地を受け取る。私たちは受け取って、卒業する。」カノ

本城 慎之介
投稿者 | 本城 慎之介

2020年10月10日

インタビューが終わってから、この原稿がまとまるまでに1ヶ月ほどかかった。「しんさん、インタビューの記事、どうですか?」と進捗確認されること10回以上…。カノ、お待たせしました!

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不思議な子だなぁと思っていた。

「ボールに絵を描いたりシールを貼って、戻す場所にも同じ絵を描いたりシールを貼って。そしたらボールを戻す場所がちいさい子でもわかりやすくなると思うんですよ。」

通常登校が始まって間もない時、オフィスに来て、ゴリさんに熱弁を振るっていた。自分自身はそれほどボールで遊んだりしていないのに、なぜかボールが元に戻ることに燃えている。その姿を見ていると、どうやら義務感や正義感からくるものではなさそうで、「ボールがあるべきところにもどっている」ということに楽しさや喜びを感じていそうに見えた。それから夏休みを挟んだかざこしミーティングで、「ボール救出大作戦」のプロジェクトを仲間と立ち上げていた。ボールに関しては次々と課題が生まれ、絶賛継続中。

風越を卒業したカノが、ボール遊びをしている子どもたちを見て、このプロジェクトのことを思い出したりするのかな…。

後ろばかり振り返っていた自分が前を向き始めた

ー〔本城〕ホームページに、「最近どう?」っていうコーナーがあって。

〔カノ〕見てます、見てます。ゴリさんとかななみぃの読みました。

ー そう、そのインタビューなんだけど、カノが「最近どう?」って聞かれるとどう?

時間管理がしっかりできるようになりました。前よりも計画を持ってやることとかやりたいことを実行できるようになったかなと。

ー それは、前と今とどんなことが変わったのかな。自分で工夫をしたこととか教えてもらってもいい?

変わったところは、前よりも自分も周りも毎日を楽しめるようになった。工夫したことは、自分がどうやったら〇〇をできるようになるのか、そういうところをちゃんと考えて、仕組みをつくれるようになったこと。

ー 仕組みというのは、例えばどんなことをやったの?

「〇〇をやったら、⬜︎⬜︎ができるようになる」とか。前もって考えておいたご褒美的なものを頭の中にいれておくと、やらなくちゃいけないことやちょっとイヤだなと思っていることも楽しんでできるんだなって。

ー なるほど。その〇〇で印象に残っていることとかってある?

私、漢字練習が楽しい時は楽しいんですけど、別のことやりたいなって思う時はそのことに集中しちゃうんですね。だから、そういう時は「漢字をやったら大好きなお菓子が食べられる」とか、本が大好きなので「本を読める」とかそんな感じで。

あとは、今まで時間管理ができなくて母に叱られたり、家族の中がイヤな雰囲気になっちゃうこともあったんですけど、自分の考えを持ってやることでごたごたしちゃうこともなくなったし、家族3人でゆっくり過ごせる時間とか楽しめる時間が増えた感じがします。

ー 時間管理っていうのは、いつくらいから意識するようになったの?風越って一人ひとりの子どもたちに時間が委ねられている部分が大きいと思うんだけど、そういうところから時間管理というのがカノの中でテーマとしてあがってきたのかな?

風越は、当たり前だと思っていたチャイムもないし、自分で時計を見て考えるというのが必要とされるから、こっちにきてからより時間を意識するようになったと思います。昼休みとかも「何時になったら帰ろうかな」とか。

ー そういう変化って、最初はやっぱりちょっと困ったりしたのかな?

前の学校と違うところがたくさんあったので、最初はどうやるんだろうなということもあったんですけど、1学期の最後くらいから慣れてきたというか、時間を大切にしないとテーマプロジェクトの時間に間に合わなかったり、セルフビルドの時間を見過ごしてしまうことが起こるんだなと学習しました。

ー 学習して、時間の管理ができるようになって、楽しいことが増えたんだね。

軽井沢に引っ越してくる前は、習い事もたくさんあって。塾が火・木、バレエが水曜、そろばんが金曜、ギターが土曜日の午後、空いてるのが月曜日と日曜日みたいな感じだったんです。習い事も楽しいからいいんですけど、やっぱり遊ぶ時間だってほしかったし、この時間にこういうことをやらなきゃいけないという、ある定位置に固められているような、ギチギチとした穴に閉じ込められている感じがあった。

でも、こっちにきてから自由な時間がすごく増えたので、好きなことができる。そういうのもあって、後ろばっかり振り返っていた自分がやっと前を向きはじめた気がします。

ー 後ろばかり振り返っていた自分が前を向き始めた。それはカノにとってどういうことなんだろう?

前向きになることによって、いろいろとメリットがあって。たとえば、後ろ向きだとどうしても相手の言うことが気にいらないというか、相手のことも感じ取れないし、すぐ怒り出しちゃうって感じだったんですけど、前向きだとその人はそういうことを言いたかったからあんなことを言ったんだなとか、相手のことも自分のこともちゃんと意識することができるようになった。

いろんな教えてもらう・教えてあげるという方法がある

ー 引っ越してきて、学校が変わって、生活も変わって。そんなこと全部ひっくるめてカノに影響を及ぼしていると思うんだけど、そもそも風越はカノが来たかったんだっけ?

教えてくれたのは親だったんですけど、私が来たかった。最初、前の家で夕食を食べている時に「こんな学校があるんだけど行ってみない?自分でやることとか考えて、他学年の人と一緒になって勉強したり、軽井沢の自然のいい空気を吸いながら、遊んだり、その遊びから学びにするみたいだよ」と言われて、その言葉を聞いた瞬間から行ってみたいなと思って。

それで風越のホームページとかも見せてもらって面白そうだと思ったし、面接の試験からすっごい楽しかったので、受かったらどんな毎日が待っているんだろうなとそういう期待がたくさんありました。

ー いよいよ風越が始まる!と思っていたら、4月はオンラインからスタートすることになって。4、5月のオンライン時期は、カノは楽しみにしていたこととオンラインでやるという現実との間でどういう風にバランスとってたの?

楽しみにしていたことは溢れるくらいたくさんあったけど、この際しょうがないかなと思っていました。でも、友だちと会うことも楽しみにしていたのでショックももちろんあったし、今ふり返ってみたら、今より勉強とやりたいことの両立が難しかったなと思います。

ー そっか。そのあと6月から通常の登校がはじまったけど、そこからはどうだった?ホームの友だちに初めてあったりしたと思うけど。

今、あそこにいるココロが同い年というのもあったし、オンラインでも優しそうで活発な友だちだなと思っていて、学校にきてすぐに仲良しになった。

あと、学習の面とかだと私がわからないことがあった時に、年下の友だちに教えてもらったり、年上の友だちに教えてもらったり、スタッフの人たちに教えてもらったりして、いろんな教えてもらうとか教えてあげるという方法があるんだなと思いました。

問題意識を持って考えていかないと。

ー カノに聞いてみたいなと思うことがあるんだけど。ボールがなくなることとか、ボールが帰りの時間までに戻っていないこととかに、すごく問題意識を持ってるよね。この前もかざこしミーティングでテーマにして、「ボール救出プロジェクト」をつくってたけどなんでなんだろう?

学校の、公共のものなのに、どっかにいってなくなっているということが、私はちょっと引っかかるなって。

ー 何が引っかかる?

公共のものは元々人のものということなので、それがなくなるというのは人のものを大切に扱っていないということだから、問題意識を持って考えていかないといけないのかなと思います。

ー 大切に扱ってほしいんだね。大切に使っていない人のことを見ると、カノはどんな気持ちになるの?

あー、大切に使っていないんだなって。もっと大切に使ったほうがみんな楽しく過ごせるよとか、ボールだって雑に扱われるために生まれてきたわけじゃないのになって。さっきあそこにも1個ボール落ちてた。

ー 黄色いやつ結構なくなるよね。

この間全部パーフェクトに見つかったんですけど、またなくなってる。

ー ボール救出プロジェクトでは、今までどんなことをしてきたんだっけ?

落ちていたボールを拾う。学校の敷地内をなるべく探す。そのあとアンケートをしていたら、れいかさんから室内ボールもお願いしますって言われて。

ー なんかさ、そういうことに対して風越ってスタッフがあまり関わらないじゃない。学校のもののことなんだから、スタッフがもっと指導したり、見つかるまでみんな探せーとかするやり方もあると思うんだけど、それはしないよね。カノはそれはどう思う?

前の学校だと先生が「〇〇しなさい」って言ってやっていたけど、風越だからこそ、先生やスタッフが言ってからやるじゃなくて、自分から意識してやるほうがいいんじゃないかなって思うかな。

ー めんどくさくない?

私はそんなにめんどくさくないかな。

ー そっかそっか。じゃあれいかさんに頼まれて、これからは外ボールだけじゃなくて室内ボールのことも考えていくんだ。

はい。この前、室内ボールにパンクしたような内側の膜まで破れたものがあったので、さすがにあれはNGじゃないかなと思ったのもあったし。

ー あれ見つけた時、カノちょっと怒ってたもんね。

誰のせいとは言わないけど、みんなが使うものを雑に扱っちゃったんだろうなーというのを感じたし、ボール入れの一番下のほうにぺちゃんこにして置いてあったので、やっぱりそういうのはあんまりっていうか、よくないことじゃないなと。なので、まずは室内ボールの集計とかやっていくつもりです。

ー どれくらいの時期に、毎日ボールがちゃんと戻るようになるかなあと思ってる?

まだまだかかるかなと思っているんですけど、私たちができることもまだたくさんあると思うし、なるべく早めに「ボールは使ったら気持ちよく戻す」ということをみんなが意識してくれたら嬉しいなと思います。

のびのびと〇〇をやるって心地いい

ー かざこしミーティングがはじまって、何回かみんなで集まったり、ボール救出プロジェクトも含めて各プロジェクトで動いているけど、何か思ってることとがあれば聞かせてもらってもいい?

かざこしミーティングって最初はあまり興味を持っていなくて、参加していなかったんですけど、この間ボール救出をやってみるってなって、かざこしミーティングってこんなに楽しいんだ、最初から行ってみたらよかったって思いました。

ー 何が楽しかった?

いろんな人の意見を聞けるというのもあるし、今回はホームの人たちとだったけど、いろんな人と一緒に話し合うとか、そういう意味で友だちもたくさん増えるって感じています。

あとは、前の学校だと先生が中心となって〇〇を話し合うことが多かったし、子どもたちで話す時もいろんな人が中心になるというより、代表委員が中心になってやるって感じだったんですよね。でも、かざこしミーティングの場合はいろんな人が中心になって、いろんな人と話し合いができるから。それは大切だなって。

ー たしかにいろんな人が中心になれるようになっているかもしれないね。

風越は、何かをやる時にのびのびと学んで、のびのびと楽しむ。もちろん目標地点は決めるし、いつまでっていうのは決めるけど、その期限を自分で決められる。3学期の終わりとか1年後でもいいし、来週とかすぐでもいい。あとでずらすこともできるので、期限がいつでもというのは、やっぱりのびのびとの元の形になってるかなって思ってます。

期間が決められちゃうと、焦って〇〇をやるってなっちゃうので。のびのびと〇〇をやるほうが響きもいいし、心地いい。

幸せを感じられる余地を受け取る

ー 風越のホームページに【じっくりゆっくりたっぷりまざって、あそぶ、まなぶ、「   」になる】って書いてあるんだけど、5年後、9年生として卒業する時どんな風になっていたい?

風越にきてよかったなと思えるようになっていたい。

ー どんなふうになってると風越にきてよかったなと思っているだろうね。

自分の目標を持っていて、それを達成できるってなっていたら、風越にきて本当によかったなって後悔せずに卒業できると思います。

ー そっかそっか。ちなみに今の目標は?

毎日を楽しむこと。

ー できてそうだね。

ー 何か僕に聞いてみたいこととか質問ある?

んー、どうして風越学園を創立したいと思ったんですか?

シュウゴとウタロウもそれ質問してきたけど、みんなやっぱり結構興味あるんだね。それが知りたい背景をまず聞いてもいい?

チャイムがあったり、何時になったらこの時間とか、机に向かって学習するとか、そういう学校が日本中多いじゃないですか。でもその中でどうして他の学校と違う、新しい学校をつくったのか。風越にきてこんなに楽しく学習できる学校があるんだと思って、なんでこういう案を思いついたのかなって。

ー 自分の子どももそうだし、出会う子どもたち、遠くにいて出会えない子どもたちも、いろんな子どもたちに幸せになってほしいと思うし、その上で幸せな子ども時代を送ってほしいなって思っているんだよね。

でも、幸せの感じ方って人それぞれだと思うんだ。こういう自然があるところにいることを豊かで幸せだなと思う人もいれば、東京のいろんなものがたくさんある中で便利で楽しいなと思う人もいる。でも、その幸せの在り方とか、なり方とか、幸せの感じ方って、自分で考えて、自分で決めて、その通り行動できるということだと思うんだよね。

だから、行動して失敗するかもしれないけど、少なくてもチャレンジはできるっていう状態を子ども時代からつくれるといいなと思ったし、そのためになるべく一人ひとりの子どもが自分で決められる余地、決められる部分を残す学校をつくりたいなって。

もちろん風越でも最初から決まっていた部分もあると思う。たとえば今は、みんな毎日学校くるよね。それも本当は週3日は学校くるけど、残り2日は家や図書館で勉強するとかでも僕はいいんじゃないかなと思ってるんだ。それがその人にとっての幸せな過ごし方なのであれば、それを大人たちがサポートしていく。そういう余地をたくさん残す学校にしたいなというのは思っていたかな。それが少しずつ、まだ完全ではないけどできてきているんじゃないかなとは思っている。答えになってるかな?

はい。幸せを感じられる余地を受け取る。私たちは受け取って、卒業する。

ー そうだね。幸せの余地。私はこの学校のこの部分つくったなとか、この5年間でここ成長したとかすごくなったとかさ、それをカノは目標って言い方をしてたけど、したいなと思ったことにチャレンジして、実現できないかもしれないけど、少しでも近づくことができたというのを感じてもらえたらなって思っているよ。

 

(インタビュー:2020年9月1日)

本城 慎之介

投稿者本城 慎之介

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