2020年9月14日
7月下旬、スタッフ一人ひとりが責任を持つ領域を改めて明確にしました。私は「セルフビルド」の担当として、「どんなセルフビルドの姿があるとよいか」、「セルフビルドを促進するため、どんな仕組みがあるとよいか」を考えに考え、一旦これだと決めて、試しているところです。
6,7月の後期(3年〜7年)の子どもたちは、毎日10時半から12時までの90分間を「セルフビルドの時間」として過ごしていました。でも「セルフビルドの時間」が、何のための時間なのか、子どもとスタッフ、またスタッフ間でもきちんと共有できてなかったので、「セルフビルドの時間」=自由時間、あるいはなんでもやっていい時間、と捉えている子もいて。やりたいことで忙しい子どもたちがいる一方で、手持ち無沙汰でフラフラしたり、chromebookでゲームしたりする子どもたちも見られました。子どもたちに任せても、カリキュラムページにあるような、「自分でつくる時間」にはなっていなかったのです。
また「セルフビルドの時間」の子どもの過ごし方は、ホームの担当スタッフが相談に乗ることにしていましたが、その関わり方がスタッフによって全然違って。スタッフみんなで統一的な関わりをしたいわけではないけれど、せめてもう少し共通の認識を持てるんじゃないか、と仕組みと時間割の検討を重ねました。
「セルフビルド」とは、「子どもたちが自分の”〜したい”を見つけて取り組む探究の学びの一つ(セルフビルドの時間)」と、「自分で自分のあそびや学びの時間を見通しを持って計画し、実際にやったことをふりかえる風越学園での過ごし方のサイクル」の両方の意味を持っています。風越学園で過ごす時間を通して、自分で自分の学びをつくるんだという実感を子どもたちが持てるといいなと願っています。
「子どもたちが自分のやりたいことを見つけて没頭できるようになるには、どんな働きかけが必要?」
「将来の夢や職業に囚われずに、でも短期的・刹那的ではなく中長期的に意味を持って何かに取り組むには、どうすれば良いか?」
「子どもたち一人ひとりのつくるを支えるため、ホームを越えて、スタッフみんなで子どもたちみんなを見ていく状態をつくるにはどうすれば良いか?」
そんな問いから出発して、セルフビルドのパートナーとしてのスタッフの存在を再定義することにしました。
最初は思い切って、ホームを担当するスタッフは、ホーム以外の子のパートナーになるというアイデアを出したりもしたけれど、それは子どもの立場からどう映るだろう、ホームのスタッフと子どもとの関係性によっては、ホームのスタッフが継続して関わるほうが気持ちがついてくる子どもたちもいる、それをわざわざリセットするのは嫌だな、子ども一人ひとりとちゃんと話したいなって思いました。
ホームによって、パートナーについて子どもたちに説明する方法は、少しずつ違ったけれど、私のホームでは、子どもたち一人ひとりと話すことにしました。
「セルフビルドの時間」を中心に、一週間の計画を立てたり振り返ったりするパートナーとして、スタッフが、一人ひとりにつくことを話し、不安に思うことなどはないか聞きました。また、これは9月30日までの実験であること、1ヶ月やってみてどうだったか子どもたちに聞いたうえで、また形を考え直す予定であることも伝えました。
始めてみて2週間、仕組みを変えてよかったなと思うことの一番は、ホームを越えてスタッフ間で子どもたちの話をする機会がものすごく増えたこと。つくりたかったスタッフみんなで子どもみんなを見るっていう状況が、できつつあるなと感じています。
また、私たちスタッフがパートナーとして成長していくために、子どもとスタッフの関わりをドキュメントにまとめて共有することにしました。なぜこういうやりとりにしたかを意図開きしたり、迷った・困った点を共有したりする時間を持ち始めています。
BIOTOPEの佐宗邦威さん・宮尾園子さんにご協力いただいてつくっている「学びの畑(プロトタイプ版)」も子どもの様子に合わせて徐々に提案して使っています。
「〜したい」から生まれる問いを”タネ”とし、いくつかのプロセスを経て”作物”になっていく様子を子どもが記録するものです。
子どもたちが取り組むいろんなことを、その子の経験としてちゃんと残したいなという気持ちがずっとあって。いずれは、子どもがやりたいことをやっていく中で、結果的に学ばなきゃいけないことを学べちゃってるっていう状態を目指したい。子ども本人が自分はいったい何を学んだり疑問に思ったのかを自覚するために、この「学びの畑」を使っています。
子どもと実際にやりとりする中で、これから必要だなと思うこともいっぱいあります。特に高学年の子どもたちは、今までの学校で一斉授業を受けてきているので、チャイムが鳴って席に座っていれば、社会や理科が始まるのが当たり前。教科書は持っていても、自分がこれから何を学ぶかは、当然わかっていません。
子どもたちが自分で自分の学びを計画するためには、義務教育学校卒業までに何を学ぶのか、すでに自分が学んだこととまだ学んでいないことを自覚するツールは必要そう。でも、それがやるべきことのチェックリストみたいになると違うな、嫌だなとも思っていて。そうならないような学びの時間を子どもと一緒につくるのもパートナーの仕事なんだろうなと思っています。
カリキュラムページには、前期(年少から2年生)は「自分をつくる時期」、後期は「自分でつくる時期」って書いてあるけれど、今の後期の子どもたちを見ていると「自分をつくる時期」でもあるなと感じるのです。
また、パートナーをはっきりさせたことによって、その子の学びが”孤”になってしまう懸念もあります。子ども同士がつながったり、影響しあったりする仕組みも必要そうだな、と思っています。自分の「〜したい」ことに仲間を募ったり、誰かの「〜したい」に一緒に混ぜてと言えたり。せっかく壁の少ない校舎だから、そういう動きが起きるための見える化をしたら、もっとおもしろいことが起きるんじゃないかな。
やりたいことがすぐには見つからず、どう過ごしていいか分からなくて困っている子に対しては、一緒にそれを見つけていくだけでなく、積極的に提案してもいいんじゃないかって思ったりもします。提案した結果、子どもが受け取らないこともいっぱいあるんだけど、それでもいっぱい提案していけばいいんじゃないかなって。
理想的なのは、こんなことやりたいんだけど、相談に乗ってくれる?って子どもたちが言ってくれる状態。自分の知ってる世界の中で楽しむだけでなく、新しいことをちょっとやってみようかなと、前向きに試してみようという気持ちが出てきたらいいなと思います。
学ぶって楽しい、知らないことを知っていくこと、自分でやりたいことを実現していくことって楽しいってことを感じとってもらいたい。
でもそれってやっぱり時間がかかることで、目の前で起きていることに一喜一憂してしまう、解決するにはどうしようって思っちゃうことなく、私たちスタッフの時間軸を捉え直さないとな、と考えているところです。