2020年6月15日
うーん…と頭を抱えてうなる声。
おっ!と驚く声。
あ、そうか!とひらめく声。
そして時々、歓喜の声が響く。風越の理科室もようやく動き始めました。
理科室は、自分なりの方法であれこれやってみるところ。なかなかうまくいかない、小さな手がかりが逃げていく、のらりくらり思考する時間が続きます。僕はそれを見て、一緒に悩んだり、面白がったり、驚いたりします。
理科室に子どもたちの熱気を一気に吹き込んだのは「マッチ棒ロケット」でした。このマッチ棒ロケットは前もって計画されていたわけではなく、子どもたちのやり取りの中で即興的に始まった小さなプロジェクトです。
子どもも、大人も、「学びをつくる」ということのチャレンジが本格的に始まったわけですが、これがなかなか難しい!ちなみに後期の子どもたちの1日はこんな感じ。
8:30〜9:00 | 朝のつどい |
9:00〜10:30 | 土台の学び(読むこと・書くこと・算数) |
10:30〜12:00 | セルフデザイン(自分で決めて過ごす時間) |
12:00〜13:30 | お昼休み |
13:30〜15:00 | プロジェクト(スタッフがテーマを提案) |
15:00〜15:30 | 帰りのつどい |
土台の学びとプロジェクトの間に余白のように置かれたセルフデザインの時間をどう過ごすかというところが大きなチャレンジ。自分の「〜したい」を早速実現していく子がいる一方で、自分で決めていいと言われても、どこで何をしたらいいか分からない、という子もちらほら…。
朝のつどいでは「何かを始める、自分で選ぶって難しいよね」という話題に。今日はどうやって過す?という投げかけには、「何をするかは思いつかないけど科学はしたい。」という声。ライブラリー、ラボ、森、仲間、豊かな環境があっても、そこに行って何かをしようという気持ちになるには、その世界に出会うきっかけが必要なのかもしれません。「何をするかは思いつかないけど…」という言葉は、本当にそうなんだろうなぁと僕も共感していました。
早速、その日は理科室で作戦会議をすることに。
「ロケット飛ばしたいよね!」
「ダイヤモンドって作れるらしいよ?」
「きれいな結晶を作るのもいいな!」
アイディアが次々と出てきます。(暇を持て余していたのが嘘のよう…。)
たくさんのアイディアの中から優先順位を付けてみると「うーん、ダイヤモンドもいいけど、やっぱロケット。ロケットだね!」という声で一気にロケットモードに。
子どもたちはロケットに関する情報を集めようとパソコンに手を伸ばそうとします。…そこには、待った!この時間の約束として「ウェブでの検索禁止。自分で考えること。ただし、誰かにインタビューをしたり、オンラインで人と繋がって直接やり取りすることはOK。」ということをお願いしました。この時の反応は意外なもので「調べちゃいけないっていいね。ワクワクする!」という声も。
すぐにネットで調べない。自分で考える。というのは理科室での文化になるといいなぁ。
そこで、昨年度スタッフ研修でお世話になった京都教育大学・村上忠幸先生発案の「マッチ棒ロケット」のチャレンジに挑戦しようと提案しました。
僕たちが分かっていることは、マッチ棒がロケットになって飛ぶらしい…という情報だけ。材料もわからない。ストローや割り箸を発射台に見立てたり、マッチをいろいろな方向から点火してみたり、何十回とトライしてもマッチ棒はただの燃え殻にしかなりませんでした。
「ウーン…、飛ばない。」
「ただ燃えてるだけじゃん!」
「ちょっとこうしてみようよ。」
子ども達は口々に思いついたことを言いながら、試行を続けます。
子どもとの距離、やりとり、そうそうこんな感じ…!僕は自分の居心地を確かめるように理科室で過ごす時間を楽しみました。
しかし、二日経って、一ミリも飛ばない状況に困った様子。調べるのはダメだけど、直接聞くのはOKなら、村上先生に連絡してみようとメールを送ってみることに。すると、なんと大学生もマッチ棒ロケットに取り組んでいる最中とのこと。翌日、ZOOMで中継することになりました。それでは、風越学園の理科室と大学の研究室がマッチ棒ロケットについて中継しあった瞬間をどうぞお楽しみください!
試行錯誤の末、たどり着いた材料はいい線を行っていることを聞き、嬉しい様子。
仕組みを尋ねたら、「それを自分で考えるの!」とピシャリ(笑)。
このあと、大学生が飛ばす様子を遠くから見せてもらえました。
一週間をかけて、子どもたちは納得のいくマッチ棒ロケットの完成に至り、もう一度村上先生に相談と報告をしました。ここまで考えられているならと、コツを伝授してもらいました。一週間、自分たちのやり方をたくさん試してきたからこそ価値ある瞬間。試行錯誤のプロセスが大事ということを実感した瞬間でした。
そして次は「水素の爆発をみたい」と新たな実験が始まっています。
こちらはおまけ。(音量にご注意ください)
たまたま撮れた歓喜の瞬間です。この科学チーム、火薬の実験では火災報知機を鳴らしたり、校舎中にマッチの煙の匂いを届けたりと何かとお騒がせをしていますが、この日もライブラリーまで響く声で周りを驚かせておりました。ちなみに、マッチ棒ロケットの隣では、たまちゃんと数名の子どもたちが登校中に拾った蛇をせっせと解剖しています。こんな風に、風越には小さな「研究室」みたいなものがたくさん生まれるといいなぁ思っています。
子どもも、保護者も、スタッフも科学者として交流しあえる場になりますように。
理科室の文化づくりもスタートしています!
さて、あなたの研究テーマは何でしょう?
理科室でお待ちしています!