
2026年3月21日
2年半前、かぜのーとでインタビューしたときは7年生だったサナ。今はもう9年生で、卒業を目前に控えている。この3年間、彼女は数学の時間をどんな風にみていたんだろう。そんな興味もあったけれど、それ以上に知りたかったのは、サナが風越の日々や数学の時間を通してどんなふうに「わたし」をつくっていたのかということだった。卒業するまであと4日というタイミングで、彼女に話を聞いた。
__ 卒業を前にして、今どんな気持ち?
小学校6年生のとき、他の学校に転出するかどうか悩んだときがあって。 もし、そのとき行っていたら、今とは全然違う自分になっていたんだろうなと思ってる。 4〜6年生の3年間は、自分にとってマイナスからフラットに戻していく、回復していく時間だった。 それが中学校に入って、ようやくプラスに伸びてきた。この3年間を風越で過ごしたことは、自分にとってとても意味があって、やっぱり残ってよかったなと感じています。
__ 当時は、なんで悩んでいたの?
正直、記憶がないんだけど…(笑)。わたしの代は転出する人が多くて「このままでいいのかな」という気持ちや公立校への憧れもあったかな。 「宿題ほしい」みたいなときもあったし(笑)。でも、うまっち(当時のパートナースタッフ)に「サナは風越が合っているよ」と言われていた。 今は、本当に風越でよかったと思っています。
__ どんなところが「よかった」と思う?
経験の幅が広がったことかな。風越には他の人と関わってなにかをつくる経験があったり、ただ授業を聞いているだけじゃ考えないようなことを考えられたりする時間があった。 あとは、アドベンチャーが楽しかったな。 当時は「参加したくない」と思っていたけれど、今こうしてみるとアドベンチャーが終わって寂しい。「ファシトレ」*とかも、風越だったから経験できたこと。 こうした経験の幅や深さには、他には変えられないものがあると感じている。
*校長のゴリさんとスタッフのてつが開いた「ファシリテータートレーニング」のプロジェクト。
__ 勉強についてはどう考えていたの?
心配していた勉強面も、自分の理想をとらえられるようになりました。 外側の目標のためではなく、自分の内側に価値を持ってる感じで勉強をしたいという思いがあって、 その先に「ここの学校に入りたい」という目的があるのが理想だった。 だから、英検の合格を目指した勉強をしたときは、全然おもしろくなくて捗らなくて。母に相談したら「やめてみたら」と言われて、自分がしたい勉強に戻したら、受かったんですよ。外の目標じゃなくて、自分の中でこうしたいっていうので進んでこれたのがよかったんだなと思います。
__ 数学は、サナにとってどんな存在だった?
もともと、自分と違う考えをもつ人と意見を共有するのは得意じゃなかったんです。 「なんで自分が正解じゃないのか」って納得できなくて。だから、数学というフィルターを通すと、白黒はっきりついてしまうことに、ずっとひっかかっていた。でも、ファシトレで「リスナーシップ」や「俯瞰の仕方」を学んで、いろんな考えを受け入れられるようになってきて、 だんだんと、「あ、数学ってこういう考え方なんだ」というのがわかってきた。「なるほどね」と腑に落ちた時に理解できて、 だんだん勉強や教科と馴染めるようになってきました。
__ 今年はグループで話し合う時間を設けたけれど、どんな時間だった?
いろんな考え方が飛び交って、考え方を共有していく時間だった。 私は今まで、常に「教えてもらう側」の人間だったんだけど、今年初めて「教える立場」のような、今までと違う立場になったんです。 数学でその立場になるとは思っていなかった けど、それはいろんな立場の人の考え方を経験する時間だった。その中で、 他の人の考えも「なるほどね〜」と思えるようになったのが、一番大きな変化かな。
__ その中で気になっていることはあった?
毎回自分が話を進めていったり、自分の考えがメインに進んでいったりすることがままあって、それが少ししんどかったです。 私が発言することで、他の人の考えを抑え込んでいないかなと。 一人で考えたいとは思っていないから私の考えを共有したいんだけど、共有しすぎてしまっているんじゃないかって部分で悩みました。一人でやってみたいっていう時間もあったんだけど、それは今思い返すと、私がまた問題を解決してしまって、他の人が見るだけになることを恐れて一人でやってたっていう感じだったな。
__ なるほどね〜。ちょっとここで、2年前の「かぜのーと」を読んでみようかな。
(それぞれ、2年前の「かぜのーと」を読む)
__ 読み返してみて、どう?
記述についての関心はずっとあったんだなと思いました。 今でも「目に見えるように言語化する」のはすごくやっていて、自分の一つの武器になってる。「記述が好き」というところから、だんだん外部に発信できるようになった。 元々「書いて考える」ことが好きだし得意だったけど、それが「書く」だけじゃなくて、「話している」ときのコミュニケーションの言語化にも繋がっていったと思う。 7年生のときは一人で書くことが多かったけれど、だんだん意識が外部に向いていった気がする。
__ それはなんでなんだろう?
自分の考えと向き合いながら問題を解くことはずっと得意だったとは思ってるけど、だんだんと霧が晴れてきたのかな。当時はどれだけ自分のことを認知できているか分からなかったけれど、自分を俯瞰して見ることで余裕ができてきた。 7年生のときは明らかに他の人の干渉が少なかったし、外部とつながることもなかった。一人の世界に塞ぎ込んだり集中したりしていたところから、自分ではない何かを許容することができるようになってきた。数学を「やらなきゃいけない教科」から「考え方を面白がる教科なんだ」と認識するようになってから、自分自身に変化もあって、だんだん数学も変わっていった感じがしています。
__ これからはどうなっていきたい?
正直、そんなに明確な「理想」はないかな。今までも振り返ってみたときに「理想だったな」と思えることが多かった。 風越から出るということで、何かの「型」にはまる機会が増えそうだけど、そういう中でも自分を持ち続けたい。新しい環境で気づいていくこともたくさんあるはずだから、 そんな中で、ただ楽しめたらいいんじゃないかなと思っている。 そこに良い悪いはないから。 他者からの評価を気にせず 「プロセスに注視する」ことは風越の数学で学んだこと。今後、成績で評価されることがあったとしても、プロセスを注視することは大切にしていきたいな。
3年前は、一人の世界で考えることに深く浸っていたサナ。この3年間で、彼女の世界はだんだんと開かれていったように見える。これからも彼女が、どんな「わたし」をつくっていくのか楽しみだ。卒業おめでとう。いってらっしゃい。
