2024年1月25日
「『何もしない時間』が用意されていて、はじめて人は真に自分がやりたい何かをはじめるんじゃないかと思うんです。でもほんとは何もしなくてもいいんだと思います。」狭山市在住59歳男性
サバイバルとブッシュクラフト は似ているが目的は違う。サバイバルは「生還」が目的だが、ブッシュクラフト はそこで「時を過ごす」ことが目的だ。時を過ごすためにサバイバルスキルを使う。だから似ているのだが、そこに流れている時間の感覚がまったく違う。
森の中に入り、1人で時を過ごす。ブッシュクラフト のプログラムには、はじまりの時間と終わりの時間しか示されていない。野営地に着いたらシェルターをつくり、腹が減ったら火を起こし食事をつくって食べ、眠くなったら寝袋ひとつで寝る。生き残るための体温保持、水・火・食の確保はやらなければならないが、それ以外に何をやるかは決まっていない。「何もしない時間」がたっぷりある。
何もしない時間があってはじめて「何しようかな?」と考える。行く前から計画的にやりたいことを決めて道具とか準備してくる子もいる。そこに着いて周りの状況を見て何をやるか決める子もいる。友だちとおもしろいこと(たいていは危ないこと笑)を見つけて悪巧みを考える子もいる。一心不乱にナイフで木を削っている子もいる。なにやら怪しげなメニューを考えてきて1人で調理している子もいる。でも、ほんとに何もしないでボーッと焚火や景色などを眺めている子も多い。
時間はゆったりと流れている。いそがしくしているのは人間自身だ。何もしないでいることに罪悪感さえ感じてしまう。子どもたちの日常は、「課題達成」「成長」「習得」なんていう言葉に、何かしなければいけないと見えない何かに追われてはいないだろうか。
「時を過ごす」という目的は最高だ。何もしなくていいし、何かやるなら自分の好きなことだけゆるゆるやっていればいい。そういう時間は実はとっても濃密で、何にも変えがたい大切な時間なのだと思う。