2023年11月21日
第2タームに7・8年生が行った、「繊維」を中心に置いたテーマプロジェクト。10/5のアウトプットデイで一旦区切りを迎えた今、設計をしてきた私自身の目線から1ヶ月半のテーマプロジェクトを振り返ってみようと思う。振り返ると、書き留めておきたいことが溢れ、前編・後編に分けることにした。前編であるこの記事では、テーマプロジェクトの中核を担う「本質的な問い」を話題にしてみようと思う。
風越学園のテーマプロジェクトを設計する時に、考えるべき項目の1つに「本質的な問い」がある。風越学園では、この本質的な問いを「プロジェクトを通じて子どもたちとスタッフが共に考え続けられる問い」と定義している。
「プロジェクトを通じて子どもたちとスタッフが共に考え続けられる問い」って何だろう。スタッフから手渡し、子どもたちそれぞれの興味関心と重ねながら進んでいくテーマプロジェクトにおいて、「共に考え続けられる問い」はどうあるべきか、どんな問いであると学習の中で機能していくのだろうか。第1タームの実践を終え、本質的な問いをどうテーマプロジェクトで扱っていくかが課題に残っただけに、第2タームの構想を練り始めた時に共同設計者のようへい(佐々木)と一番に話題に挙がったのも、この部分だった。
そんな時、夏休みのスタッフ研修日の一コマを使って、ほりけん(堀内)とおかつ(竹内)による「本質的な問いに関する研修会」が開かれた。(参考:かぜのーと「実践者として、初めて研修を経験した」)そこでは、改めて「何が本質的な問いといえるのか」を学ぶと同時に、夏休み後に実践を控えている各ラーニンググループのテーマプロジェクトの構想を持ちよりながら、考えられる問いを書き出し、どういったものが「本質的な問い」になり得るかを吟味した。
そこでもらったアイデアをもとに、第1タームの振り返りを踏まえつつ、ようへいと本質的な問いを決めるところから、テーマプロジェクト全体の設計を進めていった。
本質的な問いを考えていく上で材料にしたものの一つに、設計者である私たちスタッフの願い(ねらい)がある。第2タームで行った「繊維のある暮らし」に、私たちスタッフは「繊維という素材の特性が暮らしの中の随所に活かされ、私たちの暮らしをよりよくすることに貢献していることを実感してほしい。普段意識を向けないものに目を向けるきっかけにしてほしい。」という願いを込めていた。その願いを材料にしながら、本質的な問いの候補をいくつか挙げ、最終的に「繊維を使って、私たちはどのように暮らしをより良くできるのだろうか?」に決定した。
本質的な問いが決定した後、ちょうどこのテーマプロジェクトの共同設計者になることが決まったほりけんから、子どもたちにこの問いを手渡すタイミングについて相談を受けた。
「どのタイミングで、子どもたちに手渡していくといいのかな。いきなり本質的な問いを伝えるのか、ある程度進めていく中で手渡すのか。」
まだ考えられていなかった視点だったので、改めてスタッフで話し合い、本質的な問いは「テーマプロジェクトを通して、みんな(子どもたち)と一緒に考え続けたい問い」と言い換えて子どもたちに伝えること、初回の授業で子どもたちと共有しようということが決まった。あくまでも本質的な問いという言葉は出さずに、スタッフがこのテーマプロジェクトに込めた願いと共に、子どもたちへのメッセージとして伝えようということになった。それが活動を通して、徐々に子どもたちが子どもたちなりに答えを見出していく問いに変わっていけばいいと感じていた。
本質的な問いとそれを子どもたちに伝えるタイミングがそうと決まると、前半は暮らしをよりよくしている(してきた)繊維について知ったり、考えたりできる活動を行うこと、後半は子どもたちがそれぞれの興味関心と重ねながら「繊維を使って、暮らしをよりよくできるアイデア」を探究する活動を行うことが、思いの外すんなりと決まった。本質的な問いが明確に設定してあることで、様々な角度から子どもたちが繊維に出会っていく前半の活動に繋がりが見えるようになったと感じた。
具体的には、「暮らしをよりよくしている繊維」に出会う技術・家庭科(家庭分野)の衣服選択の学習、「暮らしをよりよくしてきた繊維」の変遷(歴史)をチームごとに調査する学習、「暮らしをよりよくしていく」ために取り扱う繊維にこだわられているパタゴニアのゲスト授業などを前半に行った。
後半は3〜4人ずつ、7つのチームに分かれてチーム探究の時間とした。全7チームがそれぞれの視点から繊維を見つめ、自分たちの興味関心と重ねながら探究をスタートしたので、内容は以下のように多岐に渡った。
後半・チーム探究のスタートでは、改めて「テーマプロジェクトを通して、みんなと一緒に考え続けたい問い(本質的な問い)」を子どもたちと共有することにした。後半のチーム探究はチームごとにバラバラの活動を進めていくことになるが、この問いが7つのチーム探究を繋ぎ、様々な角度から繊維の可能性について探究していくきっかけになればと考えた。
実際にチーム探究を進めながら、何度も何度も子どもたちと一緒にこの問いに立ち返った。10/5のアウトプットデイでは、チーム探究の内容についての発表と共に、チームそれぞれが本質的な問い「繊維を使って、私たちはどのように暮らしをより良くできるのだろうか?」に対する「今出せる解」をまとめ、発表した。
今回のテーマプロジェクトにおいて、「本質的な問い」は長丁場のテーマプロジェクトの方向性を貫く軸となり、子どもたちの興味関心と重ねながら探究が広がっていった時にそれをつなぐ存在になるということが見えてきた。同時に、「本質的な問い」に対する新たな疑問や課題も残った。
その中の一つが、本質的な問いのサイズ感だ。藤原さとさんの著書『協働する探究のデザイン』(平凡社)には、「そのプロジェクトの大きさによって、問いの深さや広さ(スコープ)を柔軟に設定すればいい」と書かれている。その視点で第2タームに置いた本質的な問いを振り返ると、1ヶ月半・全26コマのテーマプロジェクトにおいて、適切なサイズ感だったのかには反省が残る。アウトプットデイでは正直苦し紛れに「今出せる解」として言葉にしたものの、プロジェクト全体(特に後半のチーム探究)の時間がもっと長かったら、どんな解が導き出せたのだろうか。
まだまだ、「本質的な問い」の試行錯誤を続く。いろんな角度からこの「本質的な問い」を捉え、テーマプロジェクトをさらに駆動するものにしていきたい。
埼玉・秩父から山を超えてやってきました。美味しいものに何度も試しながら出会っていくことと、それを美味しく食べてくれるひとを眺めることがすきな時間。風越での時間もそんな場面に沢山出会いたいな〜
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