風越のいま 2023年4月22日

ゆっくり ゆっくり 育まれてきた “なにか”

橋場 美穂
投稿者 | 橋場 美穂

2023年4月22日

2022年度、年長児を中心とした生活グループとして共に過ごしてきた「動物探検チーム」。担当をした、あいこ・みほがそれぞれの視点で、最後の数週間の子どもたちの姿や、そこから感じたことを書き残してみました。


一年の終わり頃、ヒカリさんから感じたこの雰囲気はなんだろう」

2022年度、ヒカリさんの過ごすコミュニティは大きく変わった。

所属する学年での生活が本当にヒカリさんにとって豊かなものになるのだろうか。という問いがうまれたからだ。そして年長児の集団の中で過ごす時間が増えることになった。

時々4年生の学びやアドベンチャーなどの行事には4年生として参加する。その中で幼稚園で過ごす私たちはどうヒカリさんを迎えたらいいのだろうということと同時に、ヒカリさん自身もどうやってこのコミュニティに混ざっていけるのだろうという思いをもっていたことだろう。

こうしてたくさんの人たちが色んな思いを抱きながら2022年度がスタートした。

春先から秋ごろまでヒカリさんはこの距離感で動物探検チームの中にいた。集いの輪の中にいるよりも一歩うしろにいる方が心地よさそう。

はじめの頃は、ままごとのエリアで砂や土を混ぜながら自分の遊び「カレー作り」に没頭していた。土が混ざっていく感触、水を加えるとまた変わる感触をスプーンや枝などの棒で感じながら過ごすヒカリさんの姿を見て私は「今はこの時間が必要」と感じていた。

そこから友だちの声や遊びに惹かれていくヒカリさんに出会う。友だちとまじわる時のヒカリさんは楽しげでよく笑う。表情が豊かになる。口数も増える。人と関わることが好き。面白いことが好き。ユーモアがあるということが次第にわかっていった。そしてヒカリさんが苦手だと感じていることも知っていった。

春先、年少さんがお家の人と離れがたくて泣いている声がするとその場所から逃げていく。友だちがけんかして泣いていると不安な表情になる。人の悲しみの感情に出会った時、ヒカリさんはいたたまれなくなるようだった。そうして私たちがヒカリさんを知っていくのと同じように、動物探検の子どもたちも少しずつヒカリさんを知っていった。

動物探検の担当スタッフはあいこさんと私の二人。一人がヒカリさんとやりとりをしているとき、もう一人は動物探検の人たちへヒカリさんのことを伝えたり、一緒に考える事を投げかけていた。

そして動物探検チームは、今年度は色んな所に「お出掛け」することをメインに考えた。いつもとは違う場所に行くことで友だちの好きなことや得意なことを知っていく時間。そして共通の体験を味わうことで日常の遊びや関わりが広がっていくのではないかという願いをもった。

秋のキャンプを終えたくらいから集いの輪の中に自然に入っていくヒカリさんの姿が見られるようになった。そしてじゃんけん列車などの集団遊びや友だちの遊びも見ているだけでもなく待っているだけでもない、自分もそこに参加しているんだという意識が生まれてきた。

出掛けた先では、苦手なことに友だちが気がつき助けてくれた。自分から「手伝ってー!」と言うようにもなり、「わたしも〜(やってみたい!)」と挑戦しようという気持ちも芽生えてきた。動物探検チームの人が泣いていると「どうしたの〜?」と心配する。「だいじょうぶだよ〜」と励ましの声をかける。ここに自分の居場所を見つけていったのだろう。

今思い返すと、動物探検チームがはじまった春先、一つの遊びに没頭することが多かったヒカリさんの姿は、彼女の気持ちの揺れを表していたのかもしれない。一つの遊びに没頭することで気持ちを整えていたように思えてきた。

一年間通して、散歩、田んぼ遠足、キャンプ、山登り、電車の旅、鳥井原週間というたくさんのお出掛けと日々の暮らしを共に過ごしてきたことでこの集団への信頼がヒカリさんにとっての「安心」に繋がってきたのだと考えた。

「ゆっくりゆっくり時間をかけて築いてきたもの、育まれてきたものが確かにあるということ」

それがこの卒園間近に控えた頃のヒカリさんから溢れてくる“なにか”なのだろうなと感じた。

子どもたちと過ごしているとこの目に見えない“なにか”。
簡単に言葉にできない“なにか”に出会うことがたくさんある。

その子どもたちから湧いてくる“なにか”を受け取りながら、2022年度はあいこさんと共に喜び、笑い、泣き・・・歩んでこれたことに感謝したい。

あいこさんの記事はこちらから:

 

#2022 #幼児

橋場 美穂

投稿者橋場 美穂

投稿者橋場 美穂

森で過ごす子どもたちとの時間は心地よく面白い。子どもと一緒にいろんなことを見つけてわくわくしたい、感じていきたい私です。

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