風越のいま 2020年12月10日

わたし自身もとことん楽しむ探究者でありたい(酒井 朝羽)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2020年12月10日

(書き手・酒井 朝羽/2023年3月 退職)

9月から風越学園でインターンをしている、あさはです。風越に来て、3ヶ月が経とうとしています。今までのことをひと言で表すならば、「ワクワクがとまらない!」そんな気持ちです。

「学校をつくる」ということに私も一スタッフとして関わることができて、自分が想像していた以上に難しいことも多いですが、とにかく面白くて仕方がない毎日です。そんな中で感じていることについて、この機会に書き綴ってみようと思います。

探究との向き合い方への気づき

「活動と探究は違うよね」ー 10月中旬ごろ、後期ミーティング(3年〜7年生を主に担当するスタッフで行っている定例ミーティング)でゴリさんが投げかけた、この言葉。

これを聞いて、わたしはハッとさせられました。子どもたちの様子を見ていると、確かにやりたいことはやっているけど、今の子どもたちの姿は“探究している状態”と言えるのだろうか・・・このときから私は、「子どもたちが探究するためにはどうしたらいいのか」を考えるようになりました。

その中で、「なんで?」「どうして?」と湧き上がってきた問いをとことん探究することを、私自身は面白いと感じていることに気がつきました。最高に楽しい時間だとも思っています。なぜそう思えているのか。改めて自分のことをふりかえってみると、小学校時代の経験が大きく影響しているのではないかと思いました。

わたしの育った小学校は「総合的な学習の時間」がとても盛んに行われていました。

例えば、「用水路にある大きな穴はなにか?」という問いから用水路探究をしたことがありました。「用水路のゴミを集める穴ではないか」「用水路の水をどこかに流しているのではないか」と、グループのメンバーとそれぞれの考えを出し合い、でもやっぱりわからない、じゃあ知っていそうな近所の農家さんにインタビューしてみようと、農家の方にインタビューをさせてもらったり。そのインタビューで、大きな穴は用水路が洪水になったときに水が溢れないようにするための排水路であることや、この地域が昭和40年代から洪水の被害に苦しんでいたということを知りました。

学校を飛び出し、問いを解決する。自分が「なんで?」と思ったことをみんなで一生懸命に考えたり、人に聞きに行ったりしていると、知らなかったことにどんどん出会える。私はこういう学び方が大好きだったし、とにかくワクワクしたのを今でも覚えています。

このときに一緒に探究してくれていたのが担任のT先生。思い出してみると、T先生はいつも一緒に問いと向き合ってくれ、いつも楽しそうでした。

あとから知ったことですが、T先生は用水路の洪水について自分でも色々調べていたようで、クラスの子どもたちの知らないところで取材もしていたといいます。

その話を聞き、T先生は、私たちの付き添いとして用水路に向き合ってくれていたのではなく、一緒に探究を面白がってくれていたことに気づきました。用水路への問いをみんなで議論していたとき、分からないことを農家さんにインタビューして聞いてみるとき、いつもT先生が一緒になって考えてくれていました。

わたしが探究を面白がれたのは、私たちと同じ姿勢で探究に伴走してくれたT先生の存在があったのも大きかった。子どもたちが探究するためには、そもそも探究をとことん楽しむ伴走者の存在が大事であることに改めて気づかされました。

わたし自身の探究の始まり

「子どもたちが探究するためにはどうしたらいいのか」という問いに戻ると、わたし自身がまずとことん楽しく探究することが大事なのかもしれない。そこで、できることからはじめようと思い、「光」をテーマにかなめん、はたちゃんとともに担当しているテーマプロジェクトに全力で取り組むことにしました。

たとえば、授業設計を考える中で、「鏡に反射した光に色を付けられるのか?」という疑問が生まれたので、自分たちでも探究してみることにしました。

鏡にカラーセロファンをつければできそう?と、さっそく外に出て試してみました。すると・・・

思った以上にきれいな赤で光という文字が浮かび上がった!一緒に試していたはたちゃんとともに「わあすごい!」と、思わず歓声をあげました。

自分自身も探究してみることで、「光」の不思議さや面白さをどんどん発見していく。最近の授業設計では頭で考えるだけでなく、まずはやってみて自分自身も探究しながら、面白いと思ったことを授業に取り入れていくようになりました。

子どもの探究がわたしへと伝播する

セルフビルドの時間、3年生のアカリが「バニーハーベストマンについてもっと調べたいんだけど、前読んだクモの図鑑に載ってなかったし、どうしたらいいかわからない」と相談にやってきました。

よくよく話を聞くと、「どうして耳が長いのか」「なんでエクアドルに生息しているのか」という問いが浮かんできているが、ネットに載っている情報が漢字ばかりで読めないとのこと。

そこで、「私も一緒に読んでみるから、もう一度ネットで調べてみない?」と提案し、一緒に調べてみることにしました。すると、バニーハーベストマンはクモに似ているが、クモの親戚であるザトウムシの仲間であることがわかりました。どおりで、クモの図鑑には載っていないわけです。

そこからライブラリースタッフのさいちゃんに改めてザトウムシに関する本がないかを聞き、調べてみることに。見つけた本には、バニーハーベストマンは載っていませんでしたが、ザトウムシの見た目はクモに似ていること、足は8本あることがわかりました。

ここで、アカリが「なんでエクアドルに生息しているのか」と最初に言っていたことを思い出し、「そもそも、バニーハーベストマンがいるエクアドルってどんな国なんだろうね。そこにバニーハーベストマンのこととか書いてないかなあ」と声をかけてみると、「たしかに!エクアドルについて調べてみる!」と、エクアドルに関する本を見つけに行きました。

「日本からエクアドルってどれくらい時間がかかるんだろう」「そもそもアメリカってどこにあるんだろう」と、そこから世界に関しての疑問がどんどん湧いてくるアカリ。

ライブラリーを歩き回って、一緒に調べてみる。アカリの探究によって、わたしはバニーハーベストマンという生き物に初めて出会わせてもらい、詳しくなかったエクアドルという国についても知ることができた。気づいたらアカリの探究がわたしへと伝播し、わたしも一緒に探究を楽しんでいました。

わたし自身が探究をとことん楽しんでいこうと行動し始めてから、そのワクワクは子どもたちにも確実に伝わっている気がします。そして、わたし自身も子どもたちの探究に影響されて、ワクワクがさらに広がっています。

子どもも大人も関係なく、みんなが探究を面白がる。そんな風越学園をつくっていくために、まずはわたし自身もとことん楽しむ探究者でい続けよう。そんなことを思って、風越学園での生活を送っています。

#2020 #後期 #探究の学び

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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