2021年8月22日
暑い暑い夏休み。
田んぼの隣で暮らす5頭の羊たちは、暑さが苦手なため日陰でじっとしている。
ポニーのラッキーをはじめとする馬たちは小さなアブにチクっと刺されないよう、身体を震わせて追い払うことに全力を傾けている。
ポニーのラッキーは、田んぼの地主のタケシおじいちゃんの馬。
90歳のタケシさんは入退院をくり返されているので、私がエサやりや世話を手伝っている。足が弱ってきたおじいちゃんも退院されれば毎日つえをついて歩いて馬に会いに来る。それがきっと活力源。
風越学園の子どもたちも、田んぼに歩いて行く途中でラッキーに会う。
学校の草、食べるかな?持って行ってみよう。「おいしい?」
この草が好きみたい。
あれ?背中のこの辺、撫でると気持ちよさそう。
「ここ?こっちがいいの?」
「あーそこそこ、気持ちいいって言ってるみたい。」
もの言わぬ馬の表情を見て考える。
羊たちは、子どもたちが草をあげると寄ってくる。
ただ警戒心が強いので、ひとたび柵の中へ誰か入ればとたんに逃げる。
「おいしい草があるよーこっちにおいで。」「逃げなくても大丈夫だよ。」
なかなか戻ってこない。どうしたら来てくれるんだろ?
草の箱を置いておいたら来るかな。ヨモギよりクローバーの方が好きなのかも、
両方の箱を置いてみよう。どっちが好きかな。
羊たちの様子を見ながら来てくれるのをじっと待つ。
風越学園からほど近い発地エリアにチャレンジドジャパンが運営するホースパークがあり2頭の馬たちがいる。
私は馬たちの世話をしながら、馬と人との関わりについて勉強させていただいている。風越学園の子どもたちも何人かお世話をしに通っている。
3歳の仔馬のリオは、トレーニングの真っ最中。
普通はある程度訓練が入った馬をホースセラピーに使うが、ここではまっさらな仔馬を訓練する様子をつぶさに観察できる。しかも日本ではまだ主流のビシビシと馬に威圧感をもって教え込むやり方ではなく、馬が自発的に動きたくなるようなトレーニングのやり方を模索していて、馬も人間も心地よく過ごすための調教とは・・?と試行錯誤することが許されている。
いまリオはリードをつけて引き馬の練習をしたり、丸馬場で人の指示を聞いて走るグラウンドワークをしたり、鞍やハミをつけて乗馬が出来るようにステップアップを図っているさなか。
こちらの意図をわかりやすく伝えるにはどうやったらいいのだろう。お互いが心地よくいられるような指示の出し方は?馬の表情や目の動き、息遣いも感じながらささいな仕草も見逃さないように関わる。
言うこと聞いてくれるかな、やってくれるかな?と少しでも不安感をもって関わると、馬はとたんに動かなくなる。関わる人の心拍数や息遣いからその不安を感じとってしまうらしい。日々の関わりの積み重ねの中から生まれる信頼関係。
それは人間同士にも通じるものかもしれない。
動物のいる暮らし。
言葉をもたない生き物たちと日々関わる。
感覚を研ぎ澄ませて。
浅間山の麓に来て20年。たくさんの命に出会ってきました。淡々と生きる命、躍動する命、そして必ず限りある命。生きるって大変だけど面白い。そんな命が輝く瞬間を傍らで見ていたい。一緒に味わいたいです。
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