2023年7月4日
(書き手・中川 綾/23年12月 退職)
6月5日(月)から1週間、長野県からの派遣教員のほりけん(堀内)とおかつさん(竹内)が幼稚園で過ごしていました。「言語に寄らない関わり」や「子どもの探究のタネはどんなところにあるのか」「みんなでひとりの子どもを見とるとは」「幼小の接続」などについて学ぶ機会として、どっぷり園児たちと関わってもらうことになりました。
幼稚園担当のスタッフとの事前打ち合わせでは、2人ともちょっと緊張しているようにも見えましたが、彼らが毎日書いている「振り返り」には「まずはスタッフの子どもたちへの関わり方を観察から」と書かれており、「観察者」から焦らずスタートしようとしていることが伝わってきました。
「『どうしたい?』『何ができるかな?』と幼稚園スタッフが何度も子どもたちに投げかけている」ということに気づき、その投げかけから子どもたちの中に生まれることを考え始めたり、「子どもたちが”しっとり”している」と感じ、「しっとりの出どころを考えていきたい。」と思いを綴っていました。
水曜日の午後には、幼稚園スタッフの振り返りに参加。幼稚園では,付箋を使ったドキュメンテーション(記録)を続けています。スタッフは、付箋に8つの視点(興味関心・熱中・チャレンジ・葛藤・表現・役割貢献・自然との関わり・ひらめき)で、見たことや気がついたことを共有しつつおしゃべりをしていました。幼稚園スタッフの、一人ひとりの成長をじっくりと見つめた、驚くほど細かい気づきの数々に、彼らは驚いたようです。
「今回の振り返りは、今まで書いてきたドキュメンテーションと通ずるところがあったなぁ」と振り返りを終えたあとにほりけんが一言。これまで小・中学生のテーマプロジェクトのドキュメンテーションを書いてきた彼らにとって、幼稚園でのドキュメンテーションとの違いについて、「日常の姿をとことん追うのと、少なからず大人が環境設定をする授業を追うのとでは、見とり方が変わってくるし、難しさがそれぞれ違うよね」などと盛り上がっていました。
情報共有だけでなく、子どもの成長について色々な視点から聞いたり話したりすると、次の日に子どもたちへの関わり方が変化していくのが、おかつさんの振り返りから見えてきます。
おかつさんの振り返り【スタッフの立ち位置】より:
全体に目配りをしている。あやさん(遠藤)もみほさん(橋場)も、よく全体を見渡して、一人ひとりの子どもの活動の様子を把握している。その上で、どこに、どう関わるかを判断していると思う。
子どもたちは、大人を頼りにすることがよくある。私のようなぽっと出の大人には、簡単に甘えてくる。「おじさん、おたま、持ってきて」「おじさん、水、運んできて」といった具合だ。「ゆうくんなら、きっと探せるよ」「ゆうくんは力持ちだから、お水運べるよ」なんて答えているのだが、こうなることぐらいなら、関わりが起きない距離にいようかな、とも思う。自分がいなくても、子どもたちには遊びが生まれているからだ。
でも、自分がいることがじゃましないこともあるし、いたことで自力での活動を促すこともある。
ゆうくんが「おかつ、手伝って」と呼んでいる。手押し車を坂の上に運びたいのだが、うまくいかない。一緒に遊んでいるはるくんは、別の坂(斜度がゆるやか)から運び上げていた。はるくんに「はるくんは、どの坂からあげたの?」と聞くと、「あっちだよ」と言いながら「ゆうくん、こっちだよ」と案内する。ゆうくんは、「手伝って」というのだが、自分もはるくんを追いかけて別の坂へ移動する。するとゆうくんは、(しぶしぶ)私達のいる坂へ向かう。ぐいっと押してみると、すんなり坂を登ってしまった。笑顔。はるくんが走って小屋の方へ向かうと、車を押しながら追いかけていった。
保育園スタッフと話をした昨日の経験が大きい。スタッフが、なぜその関わり方を判断しているのか、価値観のすり合わせをしたことがつながっている。観察しつつも、場に与える影響を考慮しながら、実践者として関わっていく。
ここは、どんな関わりをするのか迷った。あやさんは、何をみて、どう判断していたのか。そんなことをもっと聞いてみたくなる。
ほりけんは7,8年生のテーマプロジェクトの予定もあり、木曜日で幼稚園での活動を終えました。
ほりけんの振り返りより:
幼稚園、最終日。子どもたちも朝から「ほりけん、おはよう。」「たけし、おはよう。」と自然に声をかけてくるようになった。3日一緒に過ごすと、私自身も顔と名前が一致し始め、声がかけやすくなっていた。女の子たちも近づいてきて、手を繋いだり、いろんなものを見せてくれるようになり、きっと警戒心が解けてきたのだと思う。今日で直接関わることは終わりだが、きっとこれからも気にしながら見ていくことになるだろう。
一度関わると、これからも絶対に幼稚園の子どもたちのことも気になる。ただ名前と顔が一致するだけではない関係性ができ、子どものことをじっくりと観察した濃い時間を過ごしたのだろうということが伝わってきます。
幼小連携とひとことで言っても、何をどのように「連携」するのか。それをスクールベースで子どもたちを目の前にしてじっくり学ぶことができる環境が、風越学園にはあるのだなと実感しています。