開校までの風越のいま 2018年6月14日

校舎と私たちの願い

本城 慎之介
投稿者 | 本城 慎之介

2018年6月14日

2018年5月から、学校建設予定地の造成工事が始まりました。中軽井沢駅から南に行ったところに軽井沢風越公園という総合スポーツ施設があります。そこから東に5分ほど歩いたところが予定地です。2.2万坪ある敷地の半分以上を森として残し、平屋建てを中心とした一部2階建ての校舎となります。

(テラスの先に浅間山が見える設計)

(校舎1階の図面。赤い矢印が玄関)

赤い矢印のところが玄関で、校舎に入るとライブラリーエリアが広がります。

朝、学校に来た子ども達はここで好きな本をたっぷり読むことができます。ライブラリーの隣にあるホームベースという空間は、子ども達一人ずつのロッカーとベンチがあり、様々なグループサイズで話し合いができる場所です。ここで友だちやスタッフとおしゃべりすることから一日を迎える子ども達もいるかもしれません。

玄関の近くには、幼児のスペースがあり、園児は屋外と屋内を行き来します。その横には家庭科室を兼ねたコミュニティスペースがあります。キッチンを授業で使用しない時間は、地域の方たちに開放して、たとえばお茶を飲んでおしゃべりしたり、隣接する畳スペースで赤ちゃんを連れた人や地域の人たちも集えるようなスペースになればと思っています。

比較的広い空間を占めているラボは、理科、美術、技術、図画工作などの授業を通じて、何かを創ったり、試したりすることのできる場所です。野外から色んな素材を持ち込んで、音を出したり埃を出したりしながら、いろんなものを創ることができます。その他に体育館や保健室、スタッフルームがあるのが1階です。1階から2階に延びるゆるやかなスロープは壁面が本棚になっています。2階は教室エリアです。オープンスペースにはグループ学習用のテーブルが並びます。

校舎2階の図面

このような校舎に約300名の子ども達とスタッフが集まって、開校後は色々と混乱があると思います。そんな時、混乱を無理に落ち着けたり、慌てて鎮めたりするのではなく、地域の方たちや保護者の方たちに、助けてください、人手が足りませんというようなSOSを出しながら、子ども達と一緒に混乱のプロセスを味わい、楽しみたいと思っています。物事が滞りなく進むスマートな学校というよりは、たとえば粘土細工のような日々変化していく、さわればさわるほどに体温が伝わって、ぬくもりのあるような学校にしていきたいです。

中庭からライブラリースペースと2階を眺めた様子

このような学校で育つ子ども達に向ける私たちの願いは、シンプルなものです。”幸せになってほしい。そして、共に生きる人も幸せになってほしい”。言い換えると、”生きたいように生きてほしい。そして、他の人の「生きたいように生きる」ことも尊重してほしい”。たとえば英語やプログラミングができるように、などといった具体的な力をつけてほしいというよりは、単純に幸せになってほしい。そうした願いから学校づくりをスタートしています。

僕自身は、この8年くらい森のようちえんという幼児教育の現場での仕事を通じて、自然の中でたっぷり遊ぶ子ども達と関わりながら、遊びと学びをどうにかつなげられないだろうかと思ってきました。森の中で子ども達がすごい集中力で遊びに没頭する姿、困った時にお互いが助け合ったりしながら、関係を深めたり拡げたりする姿が、小学校や中学校の授業の中でもできないものだろうかと考えています。

ブロックの有名なメーカーであるレゴの会社があるデンマークでは、”遊び”という意味の言葉が2つあるそうです。ひとつは、”あらかじめ決められた規定のルールを使うタイプの遊び”の意味を持つ「spille」。これも子ども達が育つには、大事な遊びです。そしてもう一つが、”明確なゴールのない想像力豊かで自由な遊び”のことを指す「lege」。私たちは、子ども達が集中したり没頭したり、関係を深めたり広げたりできるような遊びと学びをつなぐ、そんな学校をつくりたいと思っています。そのために、”<自由>と<自由の相互承認の感度を育む>”、また”<自由>に生きるための力を育む”という、そもそもの学校の原理に何度も立ち戻って、開校までの準備を進めていきます。

(2018年5月26日 本城慎之介談)

参考ページ:<自由>と<自由の相互承認>について

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本城 慎之介

投稿者本城 慎之介

投稿者本城 慎之介

何をしているのか、何が起こっているのか、ぱっと見てもわからないような状況がどんどん生まれるといいなと思っています。いつもゆらいでいて、その上で地に足着いている。そんな軽井沢風越学園になっていけますように…。

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