毎日うろうろ 2021年2月17日

自由な学校じゃない。ここは、自由をつくる学校。

岩瀬 直樹
投稿者 | 岩瀬 直樹

2021年2月17日

半年前に、校内をうろうろしてユーマ、ユキたちにインタビューをした。

当時は通常登校が始まって1ヶ月あまりの頃。あれから半年たって、どんな変化が起きているんだろう。

校舎でユーマとすれ違った時に、ふとインタビューをしたことを思い出して、「ユーマ、久々にちょっとインタビューしていい?」と声をかけたら快諾してくれたので昼休みに時間とってもらった。

「楽しみながら自由をつくっていける」(ユーマ)

岩瀬

この10ヶ月振り返ってどんな感じ?

楽しいこともたくさんあったし友達もできてきたし。まだ、あんまりうまくできてない友達もいるし、友達っていえないような子もいるけど。好きなことで分かり合える子ができてきたし、本好きとか、プログラミングとか、友達のおかげで、体験できないようなこともできたし。好きな本の話はあまり最近はしなくなってきたんだけど、プログラミング一緒に行ったりとか他の事で一緒に遊んでたりもしてる。

岩瀬

そうなんだねー。風越きた時って、「自由な学校だって聞いてたのに。僕はずっと本を読んでいたい!」って言っていたよね。

自由な学校じゃない、ここは。自由をつくる学校。だって自由な学校だったら僕がやっていることに何か言ってきたりしない。自由な学校じゃないって思い知らされた(笑)。

岩瀬

自由な学校と自由をつくる学校、ユーマはどっちがいいの?

自由な学校体験したことないからかもしれないけど、自由をつくる学校がいい。自由な学校とかほかの普通な学校に比べて、社会のことを分かり合えたり、社会を詳しく勉強できたりする。実際、社会もこの学校みたいな感じだし。自由ではないけれど、やりたいことができるみたいな。

岩瀬

社会を学んでる感じ、どういうところで感じるの?

今のテーマプロジェクトの風越商店街とか。固定資産税とか消費税とか税金が入ったりとかして、15%とられている。

岩瀬

(笑)。そうなんだ。納得してるの?

お金が盗まれたりしている人のためとか、警察とかの給料に税は払われてるわけだし、それくらいは必要なんだろうなと思う。

岩瀬

6月ぐらいはさ、「自由にさせてくれー!」って感じだったじゃない。

あー・・はずかしい!

岩瀬

それが変わってきてるなーって見えてて。

僕もそうならないようにしてる。こころのなかで叫んでる時あるけど。

岩瀬

ハハハハ。自分が変わったな〜と思うことってる?

前より、怒りを感じなくなった。怒りの器が増えたというか、広くなったというか。ちょっとしたことでカッとならなくなった。なんか怒らない方が、みんな楽しいし。なんで今までぼく怒ってたんだろう。ぼくは、いつも通りな感じしかしてないんだけどね。変わったって感じがしてないかな。

岩瀬

そうなんだね。半年前のユーマがさ、タイムマシンに乗ってきて、今のユーマ見たらなんていうと思う?

「なにやってんだ、おれ」って。自分は自由な学校がよかったんじゃないのか。なんで楽しい顔してんだって(笑)。

岩瀬

ハハハ それに今のユーマはなんて答えるの?

「半年、生きてみな」って。「そうしないとこの楽しさはわからないよ。説明できないくらい楽しいんだよ。半年生きればわかるよ」って。

岩瀬

今一番楽しいことって何?

やっぱり商店街かなー。お店のみんながいい人たちだし、なんかぼくを頼りにしてる感がある。品物、ほとんどぼくが作ったものばかりだし。バックとかお財布とか。

岩瀬

これから風越に入る子に、「なんでも自由な学校なんでしょ?」って言われたら先輩としてなんてアドバイスする?

自由な学校ではない。自由をつくる学校。けど楽しいよ。自由な学校だとダメ人間になる(笑)。悪いこととかなんもわからなくなるでしょ。自由をつくるってあんまり難しく考えなくてよくって、どっちかというと、ほぼ自由に近いと言えば近いんだよ。だってなんでも自由じゃないけど、例えばクラブ活動も自由につくれたり。もちろん国語とか算数とかテーマとかもあるけど、セルフビルドでは自分でやりたいプロジェクトできるし。楽しみながら自由をつくっていける。テーマプロジェクトもなんのテーマかは決められているけど、商店街の中で、自由につくれる。その中で自由をつくってる。

岩瀬

つくるって大変?

聞いてるだけなら大変そうにきこえるかもだけど、この風越は楽しみながら自由をつくれる学校だから、別に大変じゃないよ。

最近、やたら楽しそうに活動しているユーマを見かける。ダンスやテーマプロジェクト、プログラミング。楽しいことに出会い、一緒に楽しむ仲間に出会い、没頭する中で、少しずつユーマの「自由観」が変化してきているのを感じる。

続いて、ユキにもきいてみた。

「さっき、ユーマに半年ぶりにインタビューしたんだ。その時にユキにもインタビューしたんだけど覚えてる?」『えー?全然覚えてないー! うそだよー。ソファーでやったやつでしょ?』とお茶目なユキ。

こちらも快諾してくれたので、半年前と同じくソファーできいてみた。

「やってみたら意外と楽しい、が増えた」(ユキ)

岩瀬

10ヶ月たったけど、いまユキはどんな感じ?

自分の好きなこと見つけられた気がする。今、クッションづくりとかポップアップ作りにハマってるんだよね。風越の友達にあげるためのチョコ作りも意外と楽しかった。ユキは、社会が大嫌いだったけど、ちょっと好きになった。食べ物から世界を知る「世界のキッチン」の授業、楽しかったー。科学者の時間も「梅干しから塩取り出す」をやっていてこれも楽しい。塩取り出すのって、できそうでできない。でももうちょっとでできそうなんだよ。あと、森に行くのも好きだなー。最初は嫌いだったんだけど、行くうちに楽しくなったんだ。作家の時間も好き。今はファンタジー書いているんだ。探究の算数も楽しい。

やってみたら楽しいみたいなことがあるんだよ。前は、いろんなこと「絶対楽しくないじゃん」って思って挑戦しなかったんだけど、今は、やってみたら意外と楽しくて。ゴーヤみんな嫌いだから、私も嫌いだろう」みたいなところがあったんだけど、やってみたら楽しかったが増えたなー。

岩瀬

楽しいが増えているんだね。ユキにとって風越ってどんな学校??

えーっとねー、自分で決められる学校だね。例えば、セルフビルドで何をするかとか、漢字テストどこまでやるかとかも自分で決めてるし。あとはユキはまだ5年だけど、6、7年生は自分で国語の時間も自分で決めたりとかしてるよね。あとはね「自然とかかわれる」学校。この自然はね2つあって、森の自然もあるし、人と自然にかかわる。

岩瀬

人と自然に?

風越って、カクカクした感じじゃないよね。わかる?普通に考えてさ、学校で寝っ転がって本読んでる人みたことある?(目の前でソファーで寝っ転がって本を読んでいた人がいた)ないでしょ?ここってさ、自然と落ち着く場所になってて、そこでいろんな人が本読んでたり、その横でプロジェクトしたり。それに敬語ってカクカクして緊張感ない?「おはようございます!」みたいなの。ここではそれがないなーと思って。友達同士もカクカクしてない。自然とかかわってる感じしない?>つながりがあるっていうか。「仲良くしなきゃー」とかないんだよね。

岩瀬

ないんだね。

仲良くしなきゃーじゃなくて、いつの間にか仲良くなっているっていうか。いつのまにか関係が深くなっている。スタッフとも自然とかかわれる感じ。普通、学校の校長って生徒と一緒にソファーでくつろいでインタビューしたりしないでしょ!(笑)今まで学校って「ただのつまらない勉強するところ」だったんだけど、今は「楽しくて、友達作るところ、個性を活かしてプロジェクトするところ」に変わったかな。ユキの個性は、壮大なことを考えて実現すること。例えば、お風呂にシャチが浮かんでたらどうなるか、とか!(笑)。プロジェクトを思いつくこともあって、シャチみたいに基本的に動物のことを考えることが好きで、「馬飼いたい!」って思いついたことがあって、そこから羊飼いたい!ってなって、セーターとかマフラーとか作れるかもって広がった。そうしたらスタッフのみっちゃんの心に火がついて、一緒に「羊飼いたい!」ってなったんだよね。そして、同じような関心を持つサラ、ユヅキ、ユキ、みっちゃんの「牧場プロジェクト」が始まったんだよ。この学校だったら、壮大なことも実現する気がする。

岩瀬

ユーマは「風越は自由な学校だと思ってた、って言ってたんだけど、ユキは自由ってどう考える?

ユキも自由な学校だと思ってた。だけど、どっちかっていうと、大人に用意されている自由な学校、つまり「さぁ自由にやってください!」というよりも、みんなで一緒につくる学校かな。前にホーム「く」で上田城に行ったんだけど、その時もスタッフがやってくれるんじゃなくて、みんなで分担して企画書をつくりますって感じだったじゃん。そうやってみんなで学校をつくるというか。最初はさー、学校に集中部屋なんてなかったけど、「集中部屋プロジェクト」の人が作ってくれたじゃん。「かぜのとおりみち」だって「ミニ水族館」だって最初はなくて、つくられていったじゃん。最初は何もないけど、色をみんなでぬっていくみたいな。そして風越はいろんな絵になっていくんだよ。

半年前と同じアングルで撮ってみました

自分の好きなこと、楽しいこと、自分らしくいられること、たくさんの試行錯誤と体験を通じて少しずつ見つけ始めているユキ。学ぶ意味も、自由の価値も、なりたい自分も、教えられることではなく、”じっくり たっぷり ゆったり まざって”経験する中で、出会っていくものなのだろうな。

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投稿者岩瀬 直樹

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幸せな子ども時代を過ごせる場とは?過去の経験や仕組みにとらわれず、新しいかたちを大胆に一緒につくっていきます。起きること、一緒につくることを「そうきたか!」おもしろがり、おもしろいと思う人たちとつながっていきたいです。

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