だんだん風越 2020年7月13日

わさわさ

片岡 亜由美
投稿者 | 片岡 亜由美

2020年7月13日

開校から、早1ヶ月。あっという間に過ぎ去ったものの、確実に日々の生活が積み重なってきている。

ホーム「う」(年少から2年生)の子どもたちは開校して2週間は朝の集い、昼食、帰りの集いで集まる場所として「デッキ」を選んだ。デッキって外なの?というツッコミもあるが、デッキを選んだ理由はちゃんとある。まず、動線としても良かったこと。次に、囲まれた空間はホーム「う」の子どもたちにとって大切な安心感を与えていたこと。そして後期(3〜7年生)の人たちを感じられる場所であること。

最後の「後期の人たちを感じられる場所」は、開校直後の子どもたちに必要なものなのか疑問を持つ人や否定する人も(もちろんスタッフの中にも)いたが、私は初めにこの雰囲気を感じることがとても大切なことだと思っていた。だって、それこそが風越学園でしょ?

特に幼児にとっては、いくら「たてもののなかで、おにいさん・おねえさんがまなびをしているんだよ」と言っても、わからないだろうし、そんなこと言われたらもっと見に行きたくなっちゃう。混ぜるとか、混ざるとか、それは子どもたち自身に任せるものの、見て知らなければ、存在しないのと一緒なのだから。初めからお互いを認識し合うことは、風越学園という社会を実感し体感することで、この集団が普通になるのだから。

そんなことを考えていても、前期は基本的に外。「グラウンドで遊ぶよー」と声をかけると、ハクに「いままでずっとそと(分散登校時)だったから、なかにもはいりたい!」と言われ、そりゃそうだ!ということで、午後は度々室内で興味あるところで遊んでいた。

室内に入るとやはり大人だか子どもだかわからない人たちがたくさんいて、私自身も”風越学園ってこんな感じなんだ”というのを実感した。室内にいると、前期以外のスタッフとも顔見知りになれるチャンスがたくさんあることにも気づき、「ちょっとこまってるんだよ」「たすけてー」を言える関係性を築けることや、「こんなことしたんだ」「これ、みてー」と自慢できる人が増えることも大事になっていくので、リソースセンターでも後期のスタッフでも、些細なことで絡んでいった。

そんなこんな過ごしているある日のこと。登園してきて、「きょう、えほんもってきたよー」とシンジ。前期(幼児)は午後のライブラリーの時間に絵本を借りているが、朝持ってきた本がいつの間にかなくなったら大変なので、ホーム「う」は朝ライブラリーに返却する絵本を持っていき、みっちゃん(司書)に返していた。

借りた本を返却ボックスに入れ、「借りるのは午後にしよっか」と伝えると、「いま、かりたいよ」と。まぁ、返したら借りたくなるよねーと思い、借りる本を探す。

絵本やら図鑑やら色々見ながら一緒に選んでいると「あ!これがいい。これにする!」というので見ると、ももたろうの大型絵本。ドーンと桃太郎が表紙に描かれている。「え??これ借りるの?桃太郎借りたいなら、小さいのあるか、みっちゃんに相談しようよ。これ、大きいよ?」と、私はこれまた大人の考えの言葉を発す。「ううん、これがいい。」と、目をキラキラさせている。「わかったー。」と言いつつ、内心どうやって持って帰るんだ?と思いながら、シンジは両手でしっかり絵本を抱えて、みっちゃんのところへ持っていく。(子ども自身で貸し出し処理できる環境だが、ホーム「う」の幼児はみっちゃんから借りたいらしく、みっちゃんを捕まえてピッとバーコードを読み込んでもらっている。)

みっちゃんからも「どうやって、持って帰ろうか?絵本が入る袋探そうか」とシンジと一緒に袋探しの旅へ。先に外で遊んでいると、シンジが帰ってきて「ふくろあったよー。シンちゃんのクワガタ(自分の目印のロッカーのシール)のうえにおいたよー」と嬉しそう。

午後、つみきであそんでいると、れいかさんから「大型絵本のももたろうを3・4年生のお話作りプロジェクトで使いたいんですが、持ってませんか?」とスタッフ全体に連絡が入る。「あ!朝、シンジくんが借りてしまったー」と返事をし、靴をちょうど脱いでいるシンジのところへれいかさんと一緒に行く。

「シンジくんが借りた桃太郎の絵本、後期のお兄さんたちが勉強するのに貸してくれないかな?また返すから」とれいかさんから伝えられると、少し考えたあと「いいよ。あのね、みっちゃんとふくろさがしてしばってあるの。クワガタのロッカーのうえにある!」と最後はよくわからないポーズを決め、伝える。

朝自分で決めて借りた絵本を貸すことができるんだなーと関心しつつ、シンジとつみきのところへ行くと、つみきをしている子どもたちの中に、背が高い少年がいる。特に私も声をかけず、様子をみているとつみきで一緒に遊んでいる。しかも、カイシンやコナ(年少児)は、「ねえ、これ、どうやったらいいの?」と仲良くなって、相談している。

私がつみきの場所から離れて10分も経ってないのに。。。しかもこの少年、お世話な感じではなく、一緒に遊んでいる。嬉しー!!!と思いながら、私もひっそり遊んでいると、他の少年たちが歩いてきて「もう昼休み終わるぞ」と声をかける。「もう行かなきゃ。ばいばい」と少年が言うと、「バイバイ」とみんなも言い、ハイタッチをしている。(本当はコロナで止めるところだが、ステキ過ぎて止められなかった。)

そのまま行ってしまいそうだったので、これも大人のお節介だったが、「どちらのホームなの?」と聞くと、「ホーム「き」だよ。またねー」と颯爽と行ってしまった。私が風越学園で、素敵だなーと思った初めての前期と後期の混ざり合い。

少年が行ってしまい、それぞれつみきを完成させたので、片付けをして算数ルームへ。

算数ルームのところから、シンジくんが貸したももたろうの大型絵本があるルーム03が見え、「あ!シンちゃんのかしたやつだ」ということで、静かに覗きに行く。すると、れいかさんが気づいて、「さっきはありがとう。おかげさまでみんなでべんきょうできているんだよ」と言われると、嬉しそうに微笑む。

覗きがバレたので、堂々と様子を見ていると、どうやらももたろうの違う物語を考えていそうなことがわかった。

「すごいねー」と話しているとれいかさんから「このあと、劇の発表があるからお礼に見に来てね」ということで、これまたやったー!と、算数ルームにいるみんなに伝える。

「はじまるよー」とれいかさんから声をかけてもらい、慌てて片付け、観劇。題は「もしも、ももたろうが◯◯だったら。」という、幼児には難しいか??という感じだったが、内容よりも、動きで大笑いする幼児たち。発表が終わると、「わたしたち、見てもらってない」ともう1チームの劇を幼児のために発表してもらい、それぞれ違うももたろうの世界がとても面白く、帰りの集いでも思い出し笑いをしていた。

この日の保育を終えて、「いやー、今日良かったなー」というのが、第一印象。期待していた風越の姿を見れたから。

でも一日いろんなところで、「わさわさ」葛藤していた。「ほんとに室内で遊んでいいかな」「後期の邪魔になってないかな」「劇を楽しめないんじゃないか」「室内の使い方はこれでいいのか」など、そうだなこれは、葛藤ではなく不安や周りとの兼ね合いを意識している感じ。もう一つのわさわさは、子どもの言動や行動によって引き寄せる絶妙なタイミング。(これは、幼児だから引き起こせているのかな?)

この2つの「わさわさ」はネガティブさも出ているけれど、これってほんとうは風越学園でしか感じられない強みのはず。だから、こんな出来事は日常茶飯事に起こるように、今度は私がスタッフを「わさわさ」の世界に引き込んでやろう。ひひひひひひ。

#2020 #幼児 #異年齢

片岡 亜由美

投稿者片岡 亜由美

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今しかできないこと、今だからできること、当たり前ではない今日を、子どもたちと共に生きて学んで経験していきたいと思います。

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