2024年11月27日
こんにちは、軽井沢風越学園です。
10月末から2週間、お試しで校舎にラッキーという馬がやってきました。循環農法で田畑もやっているスタッフの斉土(わこさん)が一緒に暮らしている馬です。
風越学園には、何かを新しく始める時の定型の意思決定フォーマットがありません。学校に馬を迎えたいと願ってきた子どもたちとスタッフは、行きつ戻りつしながらもなんとかトライアルに漕ぎつけ、その様子がさっそく記事になりました。
かぜのーと 第91号(2024年11月27日発行)
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【1】『学校に馬がいる』斉土 美和子
【2】『わたしプレゼンから見えたルリの姿ともらった自信』林 里紗
【3】『森 ◯ わたし ーその間で生まれるもの、育っていくことー』遠藤 綾
【4】 かぜシネマー実践を見つめ直すシリーズ 有料配信(レンタル)開始
【5】「親子で森あそび」申し込み受付中
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【1】# わたしをつくる
『学校に馬がいる』斉土 美和子
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学校に馬がいたらいいのに。
そう思い始めたのはいつの頃だっただろう。
子どもと馬が共に暮らすっていいだろうな、
そうずっと思ってきたことがかなう日が来た。
私の田畑には馬と羊が欠かせない。
馬と羊が田畑の草を食べてくれて、その糞は堆肥として田畑に戻す。
田んぼで採れた稲は人間のご飯のみならず、その藁は馬と羊の餌と敷料になる。
豆殻や野菜の残渣など人間がいらないものも餌となる。
全て循環していて無駄のないサイクル、いわゆる循環農法だ。
私の田んぼは軽井沢の西の端、追分にある。
追分宿の中ほどを下ると国道の先に開けて浅間山をどーんとのぞめる里山の景色、
田んぼが連なる昔ながらの農村地帯の一角に私が借りている田畑がある。
田んぼの地主の荒井猛さんは生まれも育ちも軽井沢、生粋の追分っ子。残念ながら3年前に90歳で亡くなられた。その猛おじいちゃんが最後に飼っていた馬がポニーのラッキーだ。
追分の田んぼは標高約千メートル、少し前までお米ができるギリギリの寒さ厳しい土地だった。浅間山の火山灰土で土質も良くはなく、作物の出来が悪くて苦労されてきたとのこと。馬や牛を使って馬耕や馬搬をしたり牛の乳を絞って売ったり、羊も毛刈りして1頭分の羊毛を紡績場へ出すとツイードの背広一着分の反物が返ってきて、動物たちが人々の暮らしを支えてくれていたそうだ。私が猛おじいちゃんの田んぼの一枚をお借りするようになってしばらくして「ずっと羊を飼ってみたかった。」と言うと、飼えばいいわ、昔の道具とか色々あるし飼い方教えてやるから飼ってみなー、と背中を押してもらったのだ。そんなおじいちゃんの傍らにはいつもラッキーがいた。
聞けば、安曇野のご友人が山で2頭の大きなサラブレッドとラッキーを放牧していたが、突然その方が亡くなり3頭の馬は馬肉屋に引き取られることになった。しかし2頭の大きな馬はすぐトラックに載せられたが、ラッキーだけは踏ん張ってどうしても乗らなかったそうだ。この子はきっと自分がどうなってしまうのかわかっているんだな、と不憫に思えて俺が引き取るよと連れて帰ってきてしまったと。「だから命拾いしてラッキーって名前になったのさあ。」とおじいちゃんは笑っていた。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/35007/
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【2】#子どもの世界を覗いてみると
『わたしプレゼンから見えたルリの姿ともらった自信』林 里紗
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10月、1年生にとって初めての「わたしプレゼン(自分プレゼンから名称変更)」の機会がやってきた。「わたしプレゼン」の主役は子どもたちであり、自分がやってきたことや頑張ったことを、保護者とスタッフに自分の言葉や表現で伝える。それをみんなで受け取り、お祝いするような、そんな場だ。
本番では、それぞれが準備したものを使って、自分がやってきたこと・頑張ってきたことを言葉にして紡いでいく。緊張してなかなか言葉にできないけれど、おしゃべりをしながらだんだんと言葉にしていく人。恥ずかしくて嫌がったり、すごい姿勢になったりしながらも、言葉を少しずつ置いていく人。準備してきた資料を使ってどんどん言葉が出てくる人。発表の仕方にも、それぞれの色が出てくる。どんな発表を見ていても、自分なりに一生懸命に表現をしたり、言葉を紡いだりしていく姿は本当に素敵だなあ、と思う。
今回は、印象に残ったルリのプレゼンを紹介しようと思う。
ルリは今年風越学園に入ってきた。4月当初は不安そうな様子も少しあったけれど、友だちとの関係を通して学校生活を楽しんできた。
普段は、スタッフに甘えてみたり、友だちと遊ぶことを楽しんだり…と、1年生として等身大の姿のルリを見てきた。
しかし、今回のプレゼンでは、今までの彼女からは想像ができなかったような姿を目にすることになった。
プレゼンが始まり、少しずつ話し始めるルリ。緊張もあるのか、ちょっと目元がウルウルしている様子も見える。「大丈夫かな…」と心配になりつつも、彼女が紡ぐ言葉をスタッフと保護者みんなで、ゆっくりと受け止めていく。
その後は、少し緊張が解けたのか、自分がこの半年間やってきたことをどんどん説明し始めるルリ。
驚いたのは、やってきたことの説明を「◯◯をした」という事実に留まらず、そこで自分がどんなことを感じていたのか、そんな自分をどう思ったのか、ということを以下のようにどんどん言葉にしていったルリの姿だった。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/35027/
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【3】#幼稚園
『森 ◯ わたし ーその間で生まれるもの、育っていくことー』遠藤 綾
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2024年度、幼稚園ではスタッフの研究テーマとして「森 ◯ わたし」(もり まる わたし)という言葉を置いています。2023年度の後半から森の案内人であり写真家の小西貴士さんに伴走いただきながら「自然の中で育っていることってなんだろう?」という問いからエピソード記述※を元に、日々の実践を振り返る機会をつくってきました。
その積み重ねで得られた気付きをもとに、次年度の方向性をめぐる議論の中で現れてきたのが「森 ◯ わたし」という言葉であり、それは同時に活動フィールドを校舎前の畑エリアから森へ移すという決定に繋がっていきました。
「森 ◯ わたし」
その間で生まれるもの、育っていくこと。
それを捉えようとし、共につくる保育者がいる。幼児期は、「わたし」の存在感が少しずつ確かになっていく、大切な時期です。
森に息づく多様ないのちに出会いながら、わたしのいのちを感じ、存在感を育んでいきます。森とわたし(子ども)のあいだには、さまざまないのちが響きあい、生命的な時間と空間が生まれるなかで、わたしの世界がふくらんでいきます。
保育者も、森とわたしのあいだにいる人(環境)として、そこで起きていることを捉えようとし、時に相互に影響を与えあいながら、共につくり、支える人でありたいと思います。
2024年4月からは「森 ◯ わたし」をテーマに、月1回エピソードを出し合い、振り返りを続けてきました。夏休み期間中には、小西貴士さんの拠点である八ヶ岳の森へ幼稚園スタッフみんなで出かけ、森とわたしの間にあるものを感じる1日をつくりました。五感をたっぷり使いながら冒険する時間を過ごすことで、自然の中で子どもが体験していることに私たち自身が近づいていく時間になり、多くの気づきを得たように思います。
これまで議論してきたエピソード数は、およそ30。短いものも長いものもありますが、それぞれに「森 ◯ わたし」へつながる大切な子どもの姿が描かれています。
エピソードを選び、語り、仲間の語りを聞く。経験年数に関係なく一人称で対話を重ねていくと、子どもの姿やそこに流れていた時間が一滴一滴ふりつもり、わたしが大切にしていることが、私たちが大切にしていることへと繋がっていく。そんな手応えのある時間になっていきました。何度かエピソードの時間を重ねた後に、さらにみんなで検討してみたいと思うエピソードを一人ひとり選んで、読み合ってみると、複数のエピソードが同じキーワードで整理できそうなことも見えてきました。みんなで検討してみたいエピソードとして選ばれたエピソードの内、ふたつのエピソードを紹介してみたいと思います。
続きはこちら >> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/35030/
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【4】# お知らせ
かぜシネマー実践を見つめ直すシリーズ 有料配信(レンタル)開始
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風越学園では開校前から映像カメラマンの丸尾隆一さんに関わっていただき、学校づくりのプロセスやカリキュラムを「かぜシネマ」として配信してきました。
「子どもたちの風越の感触 ー8年生映像インタビューで感じたこと(丸尾 隆一)」
>> https://kazakoshi.ed.jp/kazenote/now/22735/
今後の映像について検討を重ね、スタッフや子どものインタビューを通じて、映像では現れにくい背景の意図や願い、本当は子どもたちがどんなことを感じているのかを内包した映像を届けたいと考えました。
有料で配信することで真剣に観てくださる方に届けたい、観る人にとっても価値ある映像になるよう、インタビューに答える子ども・スタッフに安心して話してもらいたいと考えています。
第一弾は、マイプロジェクトに取り組む子どもたちと伴走するスタッフのインタビュー映像を配信します。60日間のレンタル形式です。
>> https://kazecinema.vhx.tv/
子どもの育ちに関わる人たちに観ていただき、問いやヒントを受け取ってもらえるといいなと願います。
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【5】# お知らせ
2024/11/25(月)〜「親子で森あそび」申し込み受付中
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12月から来年1月にかけて、2歳児親子を対象とした3日間通い型の森遊びの日をひらきます。
未就園児の子どもたちにも少しずつ風越学園をひらいていくための第一歩として企画しました。
冬に向かって、生き物たちの気配が少しずつ穏やかになって森の中を、親も子も共に、はじめての出会いを楽しみ、探険したり、丸太に座って一息ついたり。じっくりたっぷり森の中で過ごす3日間。どうぞご参加ください。
対象者:
・2歳児(2021年4月2日〜2022年4月1日生)の子どもと保護者8組
・3日間すべて親子で参加できる方
※1日屋外で過ごします。
※スノーウェアなど防寒具が必要です。
※お弁当については、持参でも食べずに帰るでも大丈夫です。
※兄弟児の参加はご遠慮ください。
詳細はお知らせページをご確認ください。
>> https://kazakoshi.ed.jp/news/event/34939/
(あとがき)
何かを新しく始める時の定型の意思決定フォーマットがないということは、何かが終わる時の決まりもありません。その方法の良し悪しはありつつ、フォーマットがないことで起きるやりとりを大事にしようと選んできました。まもなく開校6年目、そのやり方を続けるのか変えるのか。過渡期に入りつつあるんじゃないかと思ったりします。
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発行元 学校法人軽井沢風越学園
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