2024年11月26日
10月、1年生にとって初めての「わたしプレゼン(自分プレゼンから名称変更)」の機会がやってきた。「わたしプレゼン」の主役は子どもたちであり、自分がやってきたことや頑張ったことを、保護者とスタッフに自分の言葉や表現で伝える。それをみんなで受け取り、お祝いするような、そんな場だ。
本番では、それぞれが準備したものを使って、自分がやってきたこと・頑張ってきたことを言葉にして紡いでいく。緊張してなかなか言葉にできないけれど、おしゃべりをしながらだんだんと言葉にしていく人。恥ずかしくて嫌がったり、すごい姿勢になったりしながらも、言葉を少しずつ置いていく人。準備してきた資料を使ってどんどん言葉が出てくる人。発表の仕方にも、それぞれの色が出てくる。どんな発表を見ていても、自分なりに一生懸命に表現をしたり、言葉を紡いだりしていく姿は本当に素敵だなあ、と思う。
今回は、印象に残ったルリのプレゼンを紹介しようと思う。
ルリは今年風越学園に入ってきた。4月当初は不安そうな様子も少しあったけれど、友だちとの関係を通して学校生活を楽しんできた。普段は、スタッフに甘えてみたり、友だちと遊ぶことを楽しんだり…と、1年生として等身大の姿のルリを見てきた。
しかし、今回のプレゼンでは、今までの彼女からは想像ができなかったような姿を目にすることになった。
プレゼンが始まり、少しずつ話し始めるルリ。緊張もあるのか、ちょっと目元がウルウルしている様子も見える。「大丈夫かな…」と心配になりつつも、彼女が紡ぐ言葉をスタッフと保護者みんなで、ゆっくりと受け止めていく。
その後は、少し緊張が解けたのか、自分がこの半年間やってきたことをどんどん説明し始めるルリ。
驚いたのは、やってきたことの説明を「◯◯をした」という事実に留まらず、そこで自分がどんなことを感じていたのか、そんな自分をどう思ったのか、ということを以下のようにどんどん言葉にしていったルリの姿だった。
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「最初にやっていた石プロジェクトの時は、クイズしかやらなかったんだけど、見る系だけだと見てる人がつまらないから、次にやったプロジェクトの時には、アウトプットをレベルアップさせようと思った。」
「それで、石を削れる体験を入れたのね。そうしたら、『それいいね〜!』って2年生に言ってもらって、それも思い出になって、自分の心に残ってたりする。」
「漢字のテストで100点を取れると、自分がどんどん成長した〜って思う。」
「まだ喋ったことない1年生もいっぱいいるんだけど、作家(の時間。おもに書く国語)で書いたお話を『面白いね』、と言ってもらえて嬉しくて。それで、最近遊んでない人とも遊ぶようになったりして、『自分が成長してるな〜』って心で思ってて、それが結構自分でいいな〜って思ってる。」
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最初のウルウルしていた瞳が嘘のように、真っ直ぐ真剣な眼差しで、自分の経験や感じたことを言葉にしていくルリ。
「思い出になって、心に残ってる」「成長したって思う」「結構、自分でいいなって思っている」など、の言葉がたくさん出てきて、ルリはこんなに自分の中で自分自身について内省できていたのか…と心底驚いてしまった30分間だった。
もし、わたしプレゼンという機会がなかったら、ルリがこんなに自分自身の経験を内省していること、自分自身への気付きに溢れていることを、私は知ることはできなかったと思う。
こうやって子ども自身が自分がやってきたことを振り返ったり、アウトプットする機会を置くことの意義をルリに感じさせてもらった。
また、ルリが言った言葉の中で、
「自分らしさがなくて探しているんだけど、自分らしさがちょっと見えてきたのは、読書家が好きになったこと。マイプロとか読書家の時間(おもに読む国語)が楽しくて、こういうのが自分らしさなのかな、自分らしさが見つかった気がした。」
というものがあり、すごく驚いた。
決められた時間割で過ごしたり、言われたことだけをやったり…という時間ではなかった風越での半年間。マイプロなど、自分で選んで考える時間がある生活を過ごすことで、「彼女の中に『自分について考える機会』がたくさんあったんだな…。」「一日中机に座って授業を受けているだけでは、感じなかったようなことを経験できたんだな…。」と、彼女の言葉からしみじみ感じてしまった。
風越でつくっているカリキュラムは、「子どもたちにとってより良いものを…」と思ってスタッフみんなで考えながらつくりつつも、すぐに結果が見えるものでもないために、常に「これでいいんだろうか…」と迷う気持ちと隣り合わせなのが正直なところだ。
でも、今回のルリの言葉を聞いて、みんなで悩みながら考えてきているカリキュラムは、間違っていないのかもしれない…と、自信をもらったような気持ちになった。