2024年8月25日
風越学園では、『アウトプット』をする機会がたくさんある。
自分たちがプロジェクトで取り組んできたことを紹介する「アウトプットデイ」や自分の成長を語る「わたしアウトプット」などの機会だ。そこでは、子どもたちそれぞれの、数えきれないほど多様なアウトプットが繰り広げられる。
昨年度、1年生として初めてアウトプットする側としてアウトプットディに参加してきた子どもたちが2年生になって、今年度初めてのアウトプットデイが7月11日に行われた。そこでの彼らの姿を紹介したいと思う。
①サクタロウ
1年生の時のサクタロウは、アウトプットをすることに大きなハードルがあったようだった。お客さんが来ても話し出すことができず、しばらく沈黙のまま時間が過ぎ、最後には涙目になっていたこともあった。
2年生になり、今年度のアウトプットデイでは、去年からは想像できないほどの、前のめりなサクタロウの姿があった。
お客さんが来ると、「聞く!?」と尋ねて、嬉しそうに自分の席へ連れて行き、「これは、こういうことをしたんだけどね…」と、次から次へと自分がやってきたことを伝えていく。去年の姿からは想像がつかないほど、自信をつけたサクタロウがそこにいた。
②アオト
1年生の最初のアウトプットデイを控えた時期に、アオトが言った言葉は、「絶対やらなきゃいけないの?」「おれ、やりたくない…。」だった。『発表をする』ということに対して、不安や恐怖感をもっているようだった。
そこから去年1年間、アウトプットの機会を重ねていったアオト。
最初は抵抗があったものの、アウトプットをする異年齢の仲間の姿を見たり、思い切って場に立ち、聞きに来てくれた人と会話をするような形で自分がやってきたことを紹介することを積み重ねていった。
その中で、『来てくれた人とやり取りする楽しさ』を感じていったアオト。アウトプットをした後には、「聞いてもらえて嬉しかった!」という言葉も出てきて、回を重ねるごとに、そんな経験や感情を重ねていったようだった。
今回のアウトプットデイでは、発表前に『こなきゃそんするよ』という貼り紙を作って帽子に貼り宣伝に行く、という去年からは考えられないほどの積極的なアオトの姿があった。
アウトプットの場面では、自分が伝えることだけでなく、同じグループの1年生のカンに話を振ったり、「カンくんのスケッチすごいよねー!」と来てくれた人に伝えたりと、また去年の終わりとも違う、仲間のアウトプットにも繋げるような姿まで。
最後には、たくさんもらったフィードバックの紙を眺めて、「こんなにフィードバックもらえた!」と嬉しそうなアオトだった。
③ハルタカ
毎回アウトプットデイのクロージングでは、その時間のデザインを担当する中学生が考えてくれた何かしらの形で、アウトプットデイのふりかえりをしている。ユニークな方法でふりかえりをすることも多く、低学年の人たちも自分の言葉でふりかえることができる場をデザインしてくれている。
今回のふりかえりは、七夕飾りにふりかえりを書いて、異年齢のグループでシェアし、それを笹に飾る、というものだった。
1年生の時、人前で発表をすることに消極的だったハルタカ。2年生になった今も、発表に積極的!というわけではないのだけれど、そんな彼の今日のふりかえりを見つけたら、彼が自分の大きな変化を自分自身で感じている、ということを知った。
今回、彼らがこれまでのアウトプットの積み重ねを経て変化していることを、しみじみと感じるアウトプットデイとなった。
去年一緒に過ごしていた人たちの変化をすぐ近くで感じられるのは、複数学年を一緒に見ている良さであり(私は今年度1〜4年担当)、私自身も幸せを味わった一日だった。
そんな彼らの変化に繋がった要素はなんだろう…と考えると、きっと何か一つ大きなものがあるというよりは、何より「アウトプットを積み重ねてきたこと」そして「どんな形の自分のアウトプットも受けとめてもらえたこと」が彼らの変化にとって大きかったのではないかと感じている。
風越学園では、本当に多様なアウトプットの方法が見られる。いわゆる「きちんとした発表」ではないことも多々あるが、「きちんとした」ということよりも、「その人自身から生まれるアウトプットである」ことが大事にされているように思う。そして、そんなアウトプットが溢れていることが、何より魅力的であったりする。
どんな形や内容のアウトプットであっても、聞いてもらえる、受け止めてもらえる、関心をもってもらえる、フィードバックをもらえる…そんな経験から生まれた喜びを、子どもたちは積み重ねているように見える。
そして、その中で自分のことをふりかえり、自分の変化を感じている。
そういったことを積み重ねていき、その経験でそれぞれが得た何かが、風越学園の文化になってきているのではないだろうか。