2023年12月21日
(書き手・小石原 智宏/24年3月退職)
9月からスタートした、1・2年生が混ざった新しいコミュニティー「黄金グループ」。
最初から大人が枠組みを作り計画し、その活動の中で学びを手渡していくという方法はとらずに、子どもの興味・関心をベースにして、問いと活動の連続のプロセスによって学びの足跡をつくるというチャレンジをしながら、約3ヶ月探究活動を行ってきました。
先の活動の見通しがもてないというのは、自分にとっては忍耐が必要であり、こちらの意図で子どもを引っぱりたくなることを手放し続ける時間でもありましたが、そうする中で、思いもよらない素敵な瞬間や子どものたちの姿にたくさん出会えました。その断片を今回の記事では書き残していきたいと思います。
「うわあ、いい匂い!」
「お茶の匂いがする!」
「これ、ルイボスティーの匂いだよ!」
「のんでみたい!」
秋晴れのさわやかな陽の光がふりそそぐグラウンドで、子どもたちの驚きと喜びの声が響いた。
「ねえねえ、すごい色だね!」
「これで(布を)そめてみたいなあ!」とアオイ、チカ。
「やってみる?」
「やりたい!」
偶然の出来事に刺激され、興味、関心を広げていく。この世界の不思議や美しさに出会う子どもたち。
みずみずしい感性を働かせて、目一杯、この世界の素敵に出会ってほしい。
「うわあ、ピンクになったよ!」
「不思議!」
「なんでかな~?」
枯れ草色のススキを煮出すと予想外の薄ピンク色が出て、驚きの声が上がった。
「分かった!」
「ススキのここ(茎)見て!ほら、赤いでしょ?」
ハヅキがうれしそうに声をあげた。
「ほんとだ!赤いとこがある!」
「ああ、だからピンクになるのか」
ハヅキの周りに顔を寄せ合いススキの茎をじっと見つめた。
ススキ、セイタカアワダチソウ、タケニグサ、どんぐりなど、グラウンドにある身近な植物や、タマネギの皮、ブドウの皮をどんどん煮込み、子どもたちの実験はさらに進む。
「あ、布がそまったよ!」
「あれぇ、思ったより薄いなあ」
「もっと濃くしたいなあ」
「他の植物だとどんな色になるかなあ?」
小さくカットしたサラシ布で染めもの実験
布をそめる過程で、色の濃淡に注目し、色の感覚を鋭くしていく。微細な感覚が開いていくことで、自然や身の回りの世界に対する解像度がぐんとあがる。
「これが1分で、これが2分、これが5分…」
「同じ植物なのに、色がちがうねえ」
「(煮出した水に)つけている時間によって濃さが変わるんだねえ」
「そう、長くつけた方が布の色が濃くなるよ」
ハルト・タカネは布をつける時間に注目し、タイマーで時間をはかって布の色の濃さの変化を調べた。「見て!すっごく黄色くなった!」
本で調べて、焙煎剤の存在を知り、色々な種類の焙煎剤を試す中で、家から石灰を持って来たアオイ。石灰を使った焙煎液に布をつけた瞬間、鮮やかな黄色に布が染まり驚きの声が上がった。
煮出す熱や薬品によって色が変化する。これって、科学の時間みたいだねぇ。
「ねえねえ、ペットボトルに水を入れようよ!」
「きれい!」
「今度は何色を作ろうかなあ」
色の美しさにうっとりとして、目をキラキラさせながらペットボトルにお気に入りの色水を入れたハヅキとアカリ。その様子に刺激を受けて、他の1年生たちも次々にお気に入りの色水を作り、ペットボトルに入れていった。
豊かな色彩体験をする子どもたち。「布を染める」という目的をあざやかにこえていき、まっすぐ自分たちのやりたいことをやり、色を楽しんだ姿がとても面白かった。
午前中、屋外の豊かな自然環境の中で、身近な植物と関わり探究活動を行った黄金グループの子どもたち。その過程で、自ら問いをもち自然の素材に働きかける姿がありました。そういった体験から、熱によって何かが何かに「変化」するということを体感したり、色の微細な美しさを感じたりして、目一杯、感性を育んだ豊かな時間になったと思います。ゆっくり、たっぷり、時に回り道もしながら子どもが新しい世界に出会い、驚き、喜ぶ姿を側でみることが幸せを感じる瞬間でもありました。