風越のいま 2023年7月25日

「そつたん」報告 その1

甲斐 利恵子
投稿者 | 甲斐 利恵子

2023年7月25日

2023年度第一回目の「そつたん(卒業探究)」キックオフは5月18日(木)。4月からずっと考えてきたはずなのに気持ちが定まらない。「そつたん」って一体何だ。「そつたん」にとって大事なことは何だ。「そつたん」を阻むものは何だ。「そつたん」の落とし穴は何だ。次から次へと湧いてくる問いをうっとうしく思いながらも、いや、そこでしょ!という声、そこを考え抜いてから始まるでしょ!という声が自分の中から聞こえてくる。

子どもたちの大切な一年間をどうしたら豊かで幸せな時間にできるのか。そんなに身構えることもあるまいという気もする。いや、身構えているのではない。ほんとにそういう時間が持てたらいいねという穏やかな気持ちのようでもある。スタッフ一人が動いたところで大きく貢献できるとも思われない。だけどね、一所懸命やりなよ、やれることをさ。

こんなにも揺れているのに5月18日は近づいてくる。そのために準備したこと。それは、昨年度第一期生が書いた「そつたんの振り返り」を真剣に読むこと。どんな言葉で子どもたちは「そつたん」を語っているかということ。

昨年度、一人一人がそつたんの時間を取れたのは実質3ヶ月ほどだった。にもかかわらず、第一期生たちは心を込めて強い言葉で語っていた。読み直しながら子どもたちの率直な思いから今年度の「そつたん」を始めようと思った。目の前にいない卒業生たちとの対話が子どもたちの心を動かすに違いないと思った。本気になり始めている9年生の思いを後押ししてくれるのは、あの素晴らしい卒業式を創り上げた卒業生たちの言葉。そう思うと、いっぺんに定まらぬ気持ちが消えていった。子どもたちの振り返りのダイジェスト版を作って、今年度のキックオフに臨むことにした。

【フウダイ】

■「自分らしく生きるための時間」だと考えている。
■「無駄な時間」は自分にとって必要なことであった。
■何もしない時間は無駄ではなく、そこで何を考え、後にそれをどう思うかが大切。
■探究において「良くないこと」とは探究が進まないことではなく、自分がやりたくなかったり、納得出来ていないテーマで進めようとすることだと思う。
■ やりたいことを見つけるのに時間がかかった。それでもいいと思う。
■今までの僕はやりたいことが転がってくるまで待っていた。
■自分から探しに行かないのはあまりよくない。
■興味があることを片っ端からやってみろと、自分から広い世界に飛び込んでみろと助言をしたい。

【ユヅキ】

■一つのテーマからどんどん知りたいことや問いが広がっていった。
■課題解決に必要な情報収集力・外部の人とつながる力・学内だけでなく、学外にも飛び出して学びを広げる・情報を整理分類して答えを作る力。
■弱気になってしまってはダメだ。
■立ち止まってしまうときは、どうしてこれをやろうと思ったのかを思い出すことで、また、気持ちが前向きになる。
■そつたんで自分が手に入れたものは、「つながり」「課題を解決する力」。
■諦めないで学ぶ姿勢と対話の時間を増やすこと。

【オカショー】

■木のシャーペンがほしい。そこからそつたんが始まった。
■そつたんは一人でプロジェクトを進めるので、自由度が高まり、アイデアをすぐに形にしやすかった。その反面、何をやればいいのか悩んだり、他者からの目線で考えることがむずかしかった。

5月18日、子どもたちは卒業生の言葉に真剣に向き合っていた。読んだ後、「そつたんとは・・」を考えてみようと、読む前に投げかけてみた。先輩たちの言葉に線を引いたりしながら、読み進めている子どもたち。異学年で混ざって、一緒に時間を過ごした仲間だったからこそ、言葉がストレートに届く。文章を読んでいるのに、声が聞こえているのではないかと思った。子どもたちは先輩の振り返りを読んだ後、どんなことを思ったかを少し交流してから、「そつたんとは・・」に取り組み始めた。

このときのちょっとしたヒントとしてみんなに示したのは次のようなこと。

・「そつたんとは、〇〇である」の他に、
・「そつたんとは、〇〇ではない」もあり。
・「そつたんとは~のようなもの」とかどうかしら。
・「そつたんでは、」「そつたんは」「そつたんの」とか。

子どもたちは早くやらせてください!という表情。はい、どうぞと言ってA4の白い紙を配った。思い思いの言葉がカラフルなペンで書かれていく。書いたものをホワイトボードに貼っていく。一人一人の思いがこんなにも豊かに言葉になって出てくるなんて!と、驚かされる。


子どもたちの「そつたん」への思いは次のようなものだった。

■そつたんはTikTokである。そつたんは木である。(キヨ)

問いから発展し、問いでないことに結び付く。対話をすることで、進歩することもある。挑戦する、繋がる、広げる、分類する力が大切。自分の可能性を並べ、自分に問うとよい。問いに縛られないこと。外に出ることが必要。そつたんは、学びの種類を持つとよい。自分だけで進めるのではない。欲求と理想の問いの種類があるかも?(ハルカ)

■人と話し、自分自身を発見する時間。自由度の高い環境の中で、自分の可能性と学びの種類を得る時間。広げるより深める時間。自分と他者と関心を理解する時間。常に問いを進歩させる。楽しさを見つけ、知る。理解するために様々な手段を使っていく時間。何もしないことを無駄にさせない時間。一人で進める時間ではない。恥ずい感じを乗り越える。学ぶ姿勢がすごい的な・・進化し続けていく。(セツ)

■そつたんではじぶんのやりたいことや好きなことを、どのように深めるかどのように進めるかを考える必要がある。(イイナ)

■そつたんは自由である。無駄があり、それを大事にする時間である。(コウナガ)

■そつたんは小難しい本に似ている。興味がなければ読めなく、読み終わるまでに何度も読み直す。(チヒロ)

■そつたんでは「恥ずかしい」を捨てるべきである。そつたんを自分のものにするべし。そつたんではナルシストになるべし。そつたんとはトマトである。ハハ。(コハク)

■卒探は風越で過ごした日々の集大成である。(リンタロウ)

■他人の決めたルール程度に左右されるべきではない。(カズアキ)

■そつたんとは湧き上がってくる小さな?、常に思い想い、感じ考え続ける、小さなものを、スラーと滝のように刻んだ、一冊の本である。卒探の中で、人生の中で、自分にとって最高とは何か満足とは何か、自分自身に聞く。何をする時も島﨑晃太朗は寝る間を惜しんで、やりたい!と強く思う(手の平、肌で感じる)ものを選ぶ。(コウタロウ)

■そつたんは「学びから決める」じゃなくて「やりたいことから学びをつくる」ものである。わたしをつくる(わたつく)である。(アオコ)

■卒探とは何をしてもいいが、それをどんなカタチでも自分の糧にする時間。(ノイ)

■そつたんはYou tubeである。何をしてても無駄な時間ではない。やってみること。〇〇を試す時間。失敗する時間。歩く(歩む)。今。自分探し。悩む・絶望⇒経験。(ハルマキ)

■そつたんは卵のように偉大である。どんな行動をしても無駄にしなければ損はない。(ミヤッチ)

■そつたんは無駄な時間を消費することで、未知なる自分に出会うこと。極限まで探究することで、理想の自分に出会うことが出来る。(オガレイ)

紙に書いたこの言葉をもとに、一人一人がスピーチをした。最初のキヨのスピーチは、TikTokとそつたんの関係から。

「TikTokは自分の”好き”がいっぱいつまっているでしょ?選ぼうと思えば選べるよね。広い広い世界なんだよ。」ここで、みんなの「おお~っ!」という声。拍手も起きる。きよは続ける。「広い広い世界なんだけど、やっていくうちに木みたいに、きちんとまとまっていく。だから、木。」大きな拍手。「すご~い」「なるほど~」の声。9年生たちの仲の良さが際立ってくる。そのあと、次々とそつたんへの思いを語ってくれる子どもたち。みんなの中のそつたんに対する不安は少し薄れただろうか。やる気になってくれただろうか。

全員のスピーチが終わらないうちに、終了時間となる。振り返りを全員が共有できるスプレッドシートに記入してキックオフの時間は終了した。次回はまだスピーチしていない人から始めようということにした。

この日の振り返りには、そつたんに対する率直な思いが綴られている。みんなのそつたんに対する思いが聞けて嬉しかったこと、じぶんなりに頑張ろうという気持ちになれたこと、ますます不安になったこと、などなど。キックオフの時間が終わっただけで、まさに途についたばかりということを自覚させられる。

2回目は、まだスピーチしていなかった人のスピーチから。そして、キックオフのときの振り返りの共有。みんなよく話し合えている。

だが、振り返りを読み合うのもいいが、もう決まっているから早くやらせてほしいという声、漠然としか思いつかないからもっといろいろなことをみんなと話したいという声、決めなきゃという思いが苦しくてそつたんが苦痛と言っていた卒業生たちの声を思い出したという声。一筋縄ではいかないことが事実として迫ってくる。一人一人が違うのだから、同じことをしようとすると必ずその反発もある。さて、どうするりんちゃん!

3回目からは自分の中にあるテーマと向き合うことにした。そつたんノートを配って自分とじっくり向き合うことにする。早く動きたいという声もあったが、まずは自分の中にあるいろいろな思い、考えをじっくり考えて可視化してみようと呼びかけた。

ノートにぎっしりとマッピングしている者、箇条書きにしてそれを色ペンで分類する者、絵を描いてイメージしているものがどんなものかを表している者、基本的な情報を調べてまとめている者、考えるより動きたくて集中できない者、話をしたくて相手を連れてきてこの人と話したいんだという者、いろいろ。

もう、しっかり動き出している。自分の中にある思いや考えにじっくり向き合ったら、それを言葉にしてみる。誰かに伝えてみる。すぐにさっとできる。

このときのそつたんの振り返りには、充実した話し合いが出来たのを喜ぶものが多かった。やはり思い切って、ひとりにつき10分という長さがよかったかもしれない。漠然としたイメージだからこそ、迷いも多く、相談しやすかったのかもしれない。

この後、9年生たちはセルフディスカバリーに挑戦する。しばらくはそつたんから遠ざかることになる。しかし、セルフディスカバリーは子どもたちの成長をぐんと伸ばすものであることは、卒業生たちが実証してくれている。また大きく成長して、そつたんにもパワフルに取り組むことだろう。本当に楽しみである。そつたん報告その2もお楽しみに!!

保護者が紹介してくれた『ゼロからトースターを作ってみた結果』(トーマス・トウェイツ / 新潮社)という本の一節を子どもたちに朗読した。この本を紹介したとき、子どもたちの気持ちがぐんと前に進んだように思います。

#2023 #9年 #探究の学び

甲斐 利恵子

投稿者甲斐 利恵子

投稿者甲斐 利恵子

九州生まれの九州育ち。お気に入りの九州弁は「よか、よか、気にせんでよか」。いつまでも子どもたちのそばにいられる幸せを感じています。

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