風越のいま 2023年4月21日

みどりグループの「ふりかえり」

林 里紗
投稿者 | 林 里紗

2023年4月21日

昨年度、1・2年生のラーニンググループでは、秋から15人ずつのグループを作って、活動をしてきた。私が一緒に過ごしてきたみどりグループでは、「森の中に広場を作りたい」という思いを持った子のアイデアから、森の中で遊んだり、自分で小さな椅子を作って好きな場所に置いてみたり、みんなで森の中でサンドイッチパーティーをしたりして、4ヶ月を過ごしてきた。

2月6日は、そんなみどりグループの最後の日。ラーニンググループのスタッフで相談して、最後の日はそれぞれのグループで振り返りをしよう、ということになった。私は、「どうやって振り返りをしようかなあ…」と悩みに悩んだ。「1・2年生に振り返りって必要かな?」という思いもよぎる。でも、楽しいことも大変なことも上手くいかないことも…たくさんのことがあったこの4ヶ月の日々を、このままゆるっと終わらせてしまうのは、あまりにも勿体無い、ともすごく感じる。これまでの日々をみんなと振り返って、噛み締めて終わりにしたい、と思う。でも、「じゃあ振り返りをしよう!」と1人ずつ感想を言ったり、紙に書くのもなんかしっくりこない。とってつけたような不自然な感じ。不自然じゃない振り返りの仕方って、なんだろう。

どんな振り返りがいいのかの答えはでないまま、とりあえず、みどりグループが話し合いをしていた時によく集まっていた机の場所に集まろうか、と声をかける。パラパラと何人かが集まり始めるけれど、ソファーのところがいい!とこっちに来ない人たちもいる。机の場所でやろうよ、と声をかけるけれど、「いつもその机のところだったから、飽きたよ〜。今日は最後なんだから、ソファーでやりたい!」とハルカ。でも、ソファーだとトランポリンのように跳ねるのが楽しくなってしまうのは風越でよく見る光景だから、ちょっと嫌だな…と思う私。

そんなこんなで、「どうやってやろうか迷っているんだよね〜…」とナナホに相談してみる。「『みどりグループでこんなことしたよね』って振り返ったり、『楽しかったね!またね!』って次に向けて進めるような感じの時間にしたいんだよね。」とイメージを伝える。すると、「みどりグループは森で活動してきたから、森で最後のつどいをするのはどう?」とナナホ。なるほどな〜と思い、みんなに伝えてもらう。ハルカも「それならいいね。」と、あっさりと森でやることに。私は「振り返り」という行為だけに目が行ってしまっていたけれど、子どもたちの中ではちゃんとこの4ヶ月やってきたことのストーリーや思いが根底に流れているんだな…と、子どもたちの素敵なところや、凄さを感じる。

森に集まるけれど、すぐにみんなで丸くなって集合するわけではないみなさん。思い思いに、森の中で木に登ったり、遊んだりして過ごしている。ここまででも、想定以上にだいぶ時間がかかっているので、今すぐにでもみんなで丸くなって振り返りを始めたいところだったのだけれど、その様子を見ていたら、「無理やり集めるのも違うな〜」と、しばらくそのままでいた。今思えば、久しぶりの森だったし、森で遊びたいと思うのは、当たり前の流れだったな…と思う。それだけ森が子どもたちにとって身近で、自然と遊びたいと思うような場所になっていたことも感じた。

残り15分になったところで、「さすがにそろそろ振り返りをしないとな…。」「せっかくここまで4ヶ月やってきたから、振り返りをしないで終わってしまうのは勿体無い!」という気持ちがあって、そろそろ集まろうか、と声をかけてみる。しかし、すぐは集まらない。もう少し待ってみて、残り10分になったところでもう一度声をかけると、満足したのか、みんな自然と集まってきた。そんな中でも、イツク・ユウスケ・アキトの3人は近くまで来たけれど、みんなが集まる円には入らずに近くの木で遊んでいる。3人の様子は気になったけれど、とりあえず始めてみるか、と思い、「みどりグループで活動してきて、楽しかったことを1人ずつ言ってみようか。」と提案してみる。

トトはスケートのこと。みんなでスケートに行きたい、というのはトトの強い思いだった。最後のみどりグループの思い出として行けたのが嬉しかったし、みんなにとってもいい時間だった。

ナナホは森の広場を作って遊べたこと。遊べる広場を作りたい、というのはナナホの思いから始まった活動だった。色々なことをしたけれど、ナナホにとってはやはりその思いが大きいものだったんだな、と思う。

次は離れていたイツクの番。離れているけど、自分の番がくるのは気にしていたようで「えっとねー、えっとねー」と話し出す。散々迷ったけれど最後は「考え中」。それもいいよね、とみんなでそのまま続ける。

ワカナはソリ作り。「ナナホと一緒に作れたことが、最高だった!ナナホと一緒に作れたことが、だからね!」と強調するワカナ。ワカナにとって友だちと一緒に何かできた、ということはすごく大事な経験だったんだな、と感じる。

ユニは「作るのが楽しかった」。椅子もソリも、あんなにおしゃべり好きなユニが、黙々とすごく集中しながら作っていたもんなあ、とユニの姿を思い出す。

ルイスはスケート。話し合いでこれまではあまり自分の意見を言わなかったルイスが、最後のスケートについての話し合いでは、仲間の声によく耳を傾けて「どうしてそう思うの?」など、相手の気持ちを理解しようとしていた姿を思い出す。スケート場に「自分たちで作った椅子を持ち込んでもいいですか?」とすごく緊張しながら電話した経験も、彼にとって大きいものだったんじゃないかなーと思う。

エマはシャボン玉。「納豆シャボン玉、臭かったよねー!」と嬉しそう。今は当たり前のようにグループの活動にいるエマも、最初はグループの活動に来ないことも多かった。そんなエマは、そういえば、大きなシャボン玉を作ろう!という活動でだんだんとグループにくるようになったことを思い出す。「みんなでこんなことを成功させたい!」という思いが彼女を変えていったのかもしれない。

イクミはみんなでサンドイッチを作って食べたこと。みんなで話した何気ない話や、笑い合ったこともよく覚えていたイクミ。そう思うと、イクミはみんなの様子をよく見ていたなあ、と思い出す。話し合いでも、他の人の意見に耳を傾けて、寄り添おうとしていたなあと。

次は、ユウスケ。イツクと同じく近くにはいなかったけれど、自分の番が来るのは気にしていたようで、「ここから大きな声で言うねー!」と嬉しそうに伝えてくれる。ちゃんと丸くなって欲しいなあ、という思いがそれまでの私の中にあったのだけれど、そのユウスケの様子を見て、その形式はそんなに大事じゃないかも…と思い直す。このあたりの思いは、私の中でまだ正直行ったり来たり。

ユウスケが選んだのは、椅子作り。何か作りたい!という思いが強くて、作ることを楽しみにしていたユウスケ。でも、椅子作りでそんな彼が作りたいと言ったのは、「みどりグループがみんな座れる椅子」だった。グループやその仲間への思いが出てきたことに、すごく驚いたし嬉しかったことを思い出した。

ハルカもみんなでサンドイッチを食べたこと。「みんなで料理を作りたい」と言っていたハルカ。料理はできなかったけれど、その分サンドイッチパーティーが、みんなが楽しいものになるように準備をしてくれたし、ハルカの明るさと平等さでみどりグループを明るくしてくれることがたくさんあった。

アキトは、椅子作り。1人でたくさんの椅子を作り上げたアキト。あの経験が自信になっていたら嬉しい。後半は違うグループの仲良しの友だちと一緒にいる時間を優先してなかなかグループの時間に来ない様子があったけれど、真面目で心配性な性格の彼が、自分を出せてきた証拠だったのかもしれない。

最後は私の番。みんなで森の中で食べたサンドイッチパーティーが、やはり私も思い出に残っていることを伝える。そして、「あとは、意外かもしれないけど、私はみどりグループの話し合いも、楽しかったんだよね。」と伝えると、「えー!」と声があがる。「これまでたくさん話し合いをして、なかなか決まらなかったし、喧嘩もあったし、すごく大変だった。でも、みんなは『多数決は、嫌な気持ちになる人がいるからしない』ってこだわってきたじゃない?多数決をしない話し合いは、大変だったけど……でも、楽しかったんだよね。」と伝える。

すると、「ねえ、それは「楽しかった」んじゃなくて…「嬉しかった」んでしょ?」とニコニコしながら伝えてくるマユとナナホ。あ、そうそう。私は、そんなみんなの姿を見て「嬉しかった」んだ、と2人の言葉で気付く。

全員が楽しかったことを伝え終え、「どうやって終わりにしようか?」と問いかける。みんなで手をつなぐ?お互いにバイバイ、って言う?と何個か提案してみるけど、私自身どれもしっくり来ない。すると、「森に、『遊ばせてくれて、ありがとうございました。』ってみんなで伝えようよ!」と声があがる。それを聞いて、「いいねー!」と、思い思いに森の外にかけていく子どもたち。

みんなで森の外に出て、森の方を向いて自然と手を繋いでいる。「じゃあ僕、『いっせーの』っていうね!」とユウスケ。オッケ〜と言う空気になったところで、トトがニコニコしながら「いっせーの!」とふざけて言う。「トト、ユウスケが言うって言ってるじゃん〜!」と笑いが起きる。

気を取り直して、ユウスケの「いっせーの!」の合図で、
『森さん、たくさん遊ばせてくれて、ありがとうございましたー!』
そして、それぞれ走り出すみなさん。

終わってみて、ふと思う。これって、いい振り返りだったのだろうか。

きっと、もっといわゆるきちんとした、ちゃんと言語化する振り返りの仕方もあったと思う。そのようにやっていたら、もっと子どもたちの深い思いや次の活動への展望までたどり着けたのかもしれない。でも、子どもたちと考えながら進めた今回の振り返りは、もともと私が考えてやろうとしていた振り返りよりも、どこも「不自然」ではなかったなあ…としみじみ感じる。

少なくとも、終わった後の私の心は、ほかほかしていた。

 

#1・2年 #2022

林 里紗

投稿者林 里紗

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お散歩すること、甘いものを食べること、そもそもを考えること、人の考えを聞くこと、子どもたちとおしゃべりすることが大好きです。

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