2020年10月1日
むかし、三びきのやぎがいました。なまえは、どれも がらがらどん といいました。あるとき、やまの くさばで ふとろうと、やまへ のぼっていきました。
この三びきのやぎたちが山に行くためには、たにがわの橋を渡らなければならない。その橋には怖いトロルが住んでいる。ちいさいやぎから順番に橋を渡るが「すこしまてば 二ばん目のやぎの がらがらどんが きます。ぼくより ずっと おおきいですよ。」とトロルの横を通り抜けていく。そして・・・最後にやって来た おおきいやぎが 強かった。トロルはこっぱみじんになって たにがわに つきおとされる。
絵本「三びきのやぎの がらがらどん」はこんなお話。
トロルが「だれだ、おれの はしをがたごとさせるのは」とどなるとき、子どもたちの表情で そのドキドキがいつも伝わってくる。
私はよく この絵本で子どもたちと劇遊びをする。トロル役を私が演じ、子どもたちにこっぱみじんにされる時もあれば、絵本を読んで進行するナレーションをする時もある。
夏休みの前、ホーム「え」の朝の集いで「三びきのやぎの がらがらどん」の絵本を読んだあとも、子どもたちと劇あそびをした。
ナレーションは私。トロル役をやったのがリン。ちいさいやぎからおおきいやぎまで並んでリンの前にある橋を渡る。
「だれだ、おれの はしを がたごとさせるのは!」トロル役になりきったリンの声が響く。「私はちいさいやぎです。」と小さな声で役になりきるのはマハル、ミキ、ハナ。二ばんめやぎをサラとルカ、おおきいやぎは、ジン、ガク、ケイゾウ。こちらもそれぞれがはりきって、役になりきっていく。絵本通りにお話は進み、最後はおおきいやぎがトロルをこっぱみじんにし、やぎたちはめでたく山に太りにいった。
一度、通してやってみると今度は子どもたちだけでさっきとは違う配役でやってみよう!と始まる。演じることを楽しむ姿がそこにはあった。
夏休み明けの惑星(夏休み明けからはじめた、3惑星体制。5つあるホームをまぜて年齢の近い3グループ(月のうさぎ、からまつ林のわくわく星、かぜの通り道)にし、意図的に生活や遊びのきっかけをつくっていく。グループ構成のよさを活かして活動を広げている)での活動になったある日。
「月のうさぎ」でも絵本の世界を演じることを楽しむようになってきて「三びきのやぎの がらがらどん」をやってみた。
配役は決めず、まずは橋を用意。愛子さんがトロルになりきり、物語はスタート。するとレイも「だれだ、おれの はしを がたごとさせるのは!」とトロルになる。
エマ「小さいヤギです」
トロル「そんなら とっとと いってしまえ!」
また次の人が来る。
トロル「だれだ、おれの はしを がたごとさせるのは」
アイラ「ちいさいうさぎです」
トロル「そんなら とっとと いってしまえ!」
ミチもチカもりすやうさぎになっている。一度橋を渡った人もまたやってくる。まだまだ続くちいさな動物たち・・・。
劇ごっこが始まって、次々にやってくる ちいさな動物とトロルのやりとりを 少し離れたところから見ていたヨウ。しばらくして「そんなら とっとと いってしまえ!」といつの間にかトロルになっていた。
それぞれがやりたいと思うタイミングで なりたい者になり、加わる。なかなか終わらない動物たちの橋渡り。
そしてついにおおきいやぎがトロルをやっつける。最後は山の上の草を食べていたやぎも数人いた。
「え」の劇あそびと「月のうさぎ」の劇ごっこ、どちらも子どもたちの「演じる」「なりきる」という表現あそび。共に題材はおなじだけれど、楽しみ方が違う。(劇遊びと劇ごっこと書いているのは私が自分でわかりやすいのでこう呼んでいるだけ)
「え」の劇遊びは、絵本のストーリーに沿って展開されていく。絵本の中のキャラクターの役を自分たちが選び、演じることを楽しんでいる姿があった。一方で、「月のうさぎ」の劇ごっこは、絵本の中の一部は再現されているが、自分たちでなりたい者になり、自分のタイミングで入ってくる。絵本のストーリーを楽しむというより、何かに「なりきる」ことや「ごっこ遊び」を楽しんでいた。
今回の三びきやぎのがらがらどんに限らず、月のうさぎでは惑星の活動場所に舞台が出来てから、歌うことや踊ることで自分を表現することを楽しんでいる姿がある。演じることやごっこ遊びの中の想像の世界を友だちと共有することも今の楽しみのひとつと言えるだろうだろう。
「幼児期は、発想が社会に染まってない面白い時期。自分の中の発想をアウトプットしていき、周囲に認められ そのままの感性を大事に おおきくなってほしい。風越は それができるところでありたい。」
これは、愛子さんの言葉。
うんうん。本当にそう思う。感覚で生きている自然体な表現の子どもたち。発想することや想像の世界を楽しむ姿も、ごっこ遊びなどでいろいろなものになりきっている純粋な姿も、絵画や工作でも自分を表現する姿も大事にしたい。そして、それを周りの人たちに見てもらえる機会がたくさんあること。大きい人たちや大人から認められる環境もつくっていきたい。
だって、自分の表現を認められることって喜びにつながるでしょう。
ちなみに、月のうさぎで起きた「三びきのやぎのがらがらどん」の劇ごっこは、いろんな動物の住む家の ごっこ遊びに発展した。役になるための衣装や仮装でさらに演じる世界を楽しんでいる。
絵本を再現してみる「劇あそび」も面白い。絵本のお話を元に「劇ごっこ」を発展させていくのも面白い。子どもたちにはたっぷりいろいろな経験をしてほしい。
歌を歌うことも演じることもその一つに過ぎない。様々な経験の中から自分の「これが好き!」をみつけていけたらいい。そしてその遊びを友だちと共に楽しむ事や、友だちと一緒に楽しむにはどうしたらいいのだろう。と考えることも積み重ねていくだろう。
今はとにかくいろいろな遊びに出会って 心も体も満たされて大きくなっていくといいな。
〜やぎたちは とても ふとって、うちへ あるいてかえるのも やっとのこと。もしも あぶらが ぬけてなければ、まだふとっているはずですよ。
そこでーチョキン、パチン、ストン。はなしは おしまい。