2023年7月25日
5月中旬、学園の入口近くに置いてある屋台型掲示板の屋根裏にアシナガバチが巣をつくりはじめた。
毎朝、たくさんの子どもや保護者が通る場所だ。その巣の下に、「アシナガバチが すをつくっています。しずかにみまもってくださいね。」と呼びかけが掲示された。
その日から、そっと近づき巣を見る子どもの姿、おそるおそる腰をかがめて巣を見る大人の姿が見られるようになった。7月19日現在、女王蜂と数匹の働き蜂は、ゆっくりと巣をつくり続けている。
ハチの巣を見つけたらすぐに駆除、と考えるのは不自然だとは思わない。“安全管理”という側面で、そうしている公的施設は多いだろう。ハチは人を攻撃し刺す。刺されると、赤く腫れ、ひどく痛む。場合によっては重度なアレルギー反応が出る場合もある。やはり、ハチは怖い。刺されたくない。見た目もいやだ。関わりをもちたくない。だから、駆除する。眼の前から消し去る。ハチが花粉を運ぶという大切な役割を担っていることを知っているから、「世の中」には存在してもいい。でも、「わたし」には直接的に関わらないでほしい。そんな気持ちも想像できる。
では、多くの人が、自分とは異質な存在や自分には理解しにくいナニカを「わたし」から遠ざけた結果生まれていく、つくりだされていく社会・世界は、どんな姿になるのだろう。わたしたちは、どんな社会・世界を、子どもたちに手渡していきたいのだろう。わたしたちは、どんな社会・世界をつくっていきたいのか。“学校”というひとつの社会をつくる担い手の一人として、理想と現実との間で心揺れることは、僕には少なからずある。
これからの季節、働き蜂がぐんと増え、50匹くらいが巣作りのために出入りするようになり、夏休みの間に巣もどんどん大きくなっていくだろう。さて、どうする風越。
なんらかの目的を持って風越学園を訪れる人に、こんな話をしたくて最近の視察は駐車場入口からスタートすることにしている。それは、自分に問い続ける行為でもある。「僕は、異質な存在や理解しにくいナニカと、どんなふうに関係をつくろうとしているだろうか…。」
何をしているのか、何が起こっているのか、ぱっと見てもわからないような状況がどんどん生まれるといいなと思っています。いつもゆらいでいて、その上で地に足着いている。そんな軽井沢風越学園になっていけますように…。
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