遊びと学び 2020年1月8日

大人も学ぶ – マフィン・ライティング!

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2020年1月8日

軽井沢風越学園には、これまで小学校や中・高での実践においてライティング・ワークショップやリーディング・ワークショプ(作家の時間・読書家の時間ともいう)の手法を取り入れてきたスタッフが数名います。

国語について中心的に考えている澤田甲斐崎は、今年の夏頃から風越らしいライティング・リーディングワークショップはどんなものかについて、考え続けてきました。
参照記事:「改めて勉強中、ライティング・ワークショップとリーディング・ワークショップ」

上の記事にも書かれている通り、子どもたちとライティングおよびリーディング・ワークショップを進めていく上で大切なのが「教師自身も読み続け、書き続けること」。12月から午前中の1時間を使って、数人で同じ本を読み、読んだことについて交換しあうブック・クラブの時間を持ったり、澤田から読み手・書き手がニーズや課題があることについてミニ・レッスンを受けたりしています。

その様子を見ていた私(編集部・辰巳)から、せっかくならば、スタッフが書いた文章をホームページでも紹介したい、と提案したところ、みんなで同じものを食べて書きたい!という逆リクエスト。そんなわけで、(食べるなら書けよ〜)という怨念!をこめたマフィンをつくってみました。

マフィンを選ぶところから、書くプロセスの始まり。

読むときと同様、書くときも自分の好きなデバイスや姿勢で書きます。

 

では、7人のスタッフが1時間ほどで書きあげた個性豊かな作品をどうぞ。ホームページへの掲載を前提にしているにも関わらず、これまでの記事のトーンを全く無視して書ける書き手たちを羨ましくすら思います。


1.「もふぃん」PN. PANDAA
2.「マフィンを食す」PN.うすから けいし
3.「登る人」PN.ブルゾン
4.「恐ろしい考え」PN.来年も新婚
5.「幸せなコーヒータイム」PN.ルルルアップル
6.「ピクニック」PN.シエスタ
7.「夜のキッチン」PN. バナナが好き


1.「もふぃん」PN. PANDAA

うるさいなぁ〜〜〜〜
山田君が食べるまえにいろいろ言っている。
前置きが長い!
もういいよ、食べようよ、と私の心と身体が叫んでいる。

わんやわんやとやりとりがあったが、私はずっとやつらを見つめていた。
あすこま先生が、「じゃあとりあえず食べて書いてみましょうか」と言った。
キタコレ!と思った。
よだれを垂らしている生徒の気持ちがわかる先生は最高だ。

改めて、トレーに並ぶ8体を眺める。
輝く黄金色に、ヒビ割れがとても美味そうだ。
とくにそのなかでも2体、マグナ・サファイア!!!!と感じるものがあった。
でも、その瞬間に1体を馬野君にとられた。
仕方ない、自分の一番近くにあるもう1体のマグナ・サファイアを選んだ。

・・・いとおしい。
やっと出会えたね。
リアルに手が震えた。

オー・マフィン!
手にとって、
マイ・マフィン!

ヒビが割れているのだけど、ツヤがある。
おばあちゃんの肌みたいだ。
この黄金色!おばあちゃんの指輪を思い出した。

もう我慢できない。手が震えている。
まずはヒビをめくろう。ペリっとして、口へぽいっ。
カリッ、じゅわーーーーーー
じゅ、ジューシー?!

一枚一枚ヒビ割れをめくって口に運ぶ。
思ったより少しずつしかとれない。
美味いぞ、足りない。

ああ、だめだ!もう、我慢できない!
私はそいつの服をベリッと一気に剥がした。
すると・・・・?
何か果肉のようなものが露出した。りんごかもしれない。
(ヨシタケシンスケさん、ごめんなさい)
そのとき私のなかのフォッサ・マグナに異変が発生。
反射で、気づけば思いっきりガブッといっていた。

ほっほーーーーーーーーーーーーーーい!!!!!!!
私の体内からホルモンが溢れ出る。
おまえってやつは!!!!!!!!最高だぜ。

半分食べたところでふと、私の学生時代を思い出したのだった。
バレンタインの時期に重い腰をあげて何度かつくったことがあるマフィン。
頑張って作ったのだが、まあふつうの味だった。
失敗なわけじゃないけど、美味い!とはならないというか。
どうしてこうも差が出るのか。
過去のバレンタインで絡みのあった男性たちの顔が浮かんでくる。
マフィンをあげたわけではない男性まで浮かぶ。可哀想だ。
誰にも恨みはない!
だが、そんなことを思ってムシャクシャしていたら、
いつの間にか食べ終わってしまっていた。

ただ言えるのは、
やけ食いに使うものではないほど美味かった。


2.「マフィンを食す」 うすから けいし

表面にある焦げ目が、いかにも香ばしそうで食欲をそそる。
割れ目からのぞく中身はなんとも柔らかそうだ。

紙でできたカップを破り開くと、香りが強くなる。
甘くて香ばしい匂いに、自然と口の中にはだ液が出てくる。
胃にもグーっと押されたよう感覚があって、自分の食欲を自覚する。
今こうしてメモを取っている状態がとてもつらい。
早く口にしたい気持ちはどんどん強くなる。

一口食べてみる。
表面のザクッとした感じと、中のしっとりした感じが同時に口の中を満たす。
そして、口に広がり鼻に抜ける香りがたまらない。

よく味わおうと思う一方で、ついつい二口目、三口目と手が伸びる。

三口目にして、ついにリンゴが口に入る。主役の登場だ。
酸味、甘み、そして香り、マフィンの生地に閉じ込められたリンゴがグワっと広がる。
キャラメルのような控えめな甘さが何とも言い難い。
もっと食べたい気持ちに拍車がかかる。今はもう、ただただ口の中をマフィンで満たしたい。

こんなに拍車がかかってりまうと、止めるものは何もいない。
そこから先は四口目、五口目とどんどん早くなる。

やぶれた紙のカップだけが皿の上に残っていた。
もっと味を細かく書きたいと思ったがもう遅い。
舌が口の中にある余韻を味わおうと探るが、すでに欠片も残らず胃に収まっていた。


3.「登る人」PN. ブルゾン

いま、人生最大の壁を目の前にして、私は立ちすくんでいる。
まっすぐ上に高くそびる薄茶色の大きな壁。
ビルでいうと90階くらいの高さがある。そこには、作物のような模様や人の顔のようなものが描かれている。誰がどうやって描いたのだろうか。私には全く想像がつかない。壁に書かれている人の顔は笑っている。その表情が私にこう語りかける。
「登るのを諦めるならいまだよ」、と。
「ここまで来て諦めるわけないじゃないか」
自分を奮いたたせるように1人呟き、私は、意を決して登り始める。
地面が遠くなっていくにつれ、簡単には引き返せない恐怖心が私を襲う。
頭上からは甘いリンゴのにおいがしてくる。
ただ、そのにおいを励みに、私は壁を登り続ける。
丸く縁取られた柵のような最後の壁を乗り越え、目の前にキツネ色の壁がみえてくる。
「やっと着いた・・・」と、緊張がとけた瞬間に手を離してしまい落下する。(ここまでか・・・)と思ったが、キツネ色の地面は弾力があり、私を優しく受け止める。
今まで私が見たこともない、そのキツネ色の地面は少し固い。
不安もあったが、空腹には勝てず一口食べてみる。
これは、バターだ!大好物。
さらに夢中で下に下に地面を掘って食べ続ける。
まるで、モグラになったようだ。
どこにそんな力が残っていたのだろう。
どのぐらい時間がたっただろうか、周りが乳白色になり、そのふわふわに包まれている感触が心地よい。このまま、ここから出たくない。空を見上げると、入ってきた穴からオレンジ色の空がみえる。
さらに下にもぐりつづける。
・・・4時間ぐらいもぐっただろうか。
どうやらここが終点だ。
もってきた懐中電灯で地面を照らすと、濃い茶色だ。
なめてみると、少し苦い。
上を見上げると、すっかり小さくなってしまった穴からは黒い空がみえる。
このままここで暮らすのもいい。
私は満腹感から来る眠気のままに、目を閉じる。
遠くで雷の音が鳴っている。


4.「恐ろしい考え」PN. 来年も新婚

スタッフお手製のそのマフィンの最上部は、かたく焼き締められており、七三分けのように割れ目が走っていた。「七」の方を薄くはがして、そのまま口に放り込む。上の部分はクッキーのようなサクサクカリカリした食感、下側は幸運にもりんごが溶け込んだなめらかな層、そして中は多少の粉感もありながら小麦とバターが上品に香る。一口で3つもの食感に出会えた幸福を噛みしめながら、型紙の側壁をメリメリとむく。中の薄黄色もいいけれど、底に近づくにつれ濃いきつね色となる側面も捨てがたい。
 そのあとは、エイヤと大きく頬張って口の中の様々な粒感を楽しんだり、小さく口に含んでほろほろと口の中で崩れゆくのを惜しんだり。時々りんごの果実の生き残りに出くわすのも楽しい。楽しいのだが、食べすすめるにつれ、頭の端に浮かんでくる恐ろしい考えがあった。すなわち、最初のひとくちが、一番おいしかったのではないか。「どんな味なのだろう」というワクワク感。口に広がった3つのまったく異なる触感。私はそれらを、本当に大切にできていたのか。もう自分は、新しい感動に出会えないのではないか。
 なんだかとてももったいないことをしたような気がしながら食べすすめるうちに、底の型紙をはがすときが来た。ムリムリとはがすと、マフィンの底面はきつね色よりさらに濃い、薄焦げ茶色。その面を上にして、歯をあてる。クッキーとまではいかないが、底面はすこし目が詰まっていて、それでいて空気をたくさんふくんでいる。噛みしめると反発はあるが抵抗はない、不思議な感じ。そして、色から想像できる通り、香ばしい、香ばしいぞ…!!
 ああよかった、私は最後にまた新しい喜びに出会えた。安堵感と幸福感に満たされながら、私は皿を洗いに台所へ向かった。


5.「幸せなコーヒータイム」ルルルアップル

ガチャ…
「おはよ〜」
まってました、まってました、まってましたよ!
今日のメインゲスト、たつみさん登場!
持ってきたよー!と机に置かれたマフィンは8つ。
狐色に焼かれたマフィンが並ぶ。
「やったー!」
「うまそー!」
「たつみさんありがとー!」
みんな口々に騒いでる。
わぁ、本当美味しそう。
1番美味しそうなのは表目が割れて、中がこんにちはしてるアレだな。お、やばい、うまっちとぽんも同じのを狙っている!(気がする…。)うまっちは右端のマフィンに手を伸ばした。おぉ、あぶねぇ、そっちは二番目に美味しそうだと思っていた方だぜ!ぽんはマフィンの写真を見てニヤついているので、お目当てのマフィンを頂戴することにする。
食べる前に、新しいコーヒーを入れて準備万端!
さてさて、いただきまーす!
ビリビリビリ…カップを破いて食べやすくしてマフィンの頭を一口かじる。
おーー!うまーい。
しっとりくるかと思いきや、表面はサクサク系じゃないですか。でも中はリンゴちゃんのおかげでしっとり。りんごの香りが舌を通って鼻の奥の方までやってきたよ。あぁ本当美味しい。幸せ。
しばらくサクサクゾーンが続く。サクサクゾーンに紛れたりんごが、これまた最高!
次にやってくるのがしっとりゾーン。ここはコーヒーとの相性が抜群。一口かじっては、コーヒーも一口飲む。じゅんわ〜…。あぁ最高。
最後にやってくるのはこんがりゾーン。こんがり焦げた苦味もいいね。カップにこびりつくほど焼かれちゃって。君のおかげで美味しいマフィンが焼き上がったのだよ!なんて思っているうちに一個ぺろり。

あぁ美味しかったー
ごちそうさまでした!


6.「ピクニック」PN. シエスタ

ピクニックに行こうよ
あの丘の大きなりんごの木まで
真新しいシートを持って

朝には一緒にマフィンを焼こう
手のひらに収まるほどの

香ばしいオーブンの中で
生地が固くふくらんでくる
庭の木々の幹のように
春のにおいをさせて

ふたりであの丘で
このつややかな膨らみを手に取ろう
ざくりと確かな食感が
スポンジのように溶けていく
きみの指をあまく噛んだ時の
やわらかさで

いつまでも残るりんごの香り

ピクニックに行こうよ
ぼくらの周りにはいつも
蜜の川が流れている


7.「夜のキッチン」PN. バナナが好き

夜のキッチンが好きだ。
と書き出して、吉本ばななの「キッチン」の書き出しを思い出す。

”私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。どこのでも、どんなのでも、それが台所であれば食事をつくる場所であれば私はつらくない。できれば機能的でよく使いこんであるといいと思う。乾いた清潔なふきんが何まいもあって白いタイルがぴかぴか輝く。”

わかる。我が家のキッチンは、ぴかぴか輝くほどきれいではないが。

夜にお菓子を焼くと、甘い香りが部屋中に漂い、それが朝までほんのり残っているのがいい。傍若無人な息子がなかなか寝つかない時、なんだかモヤモヤすることがあった時、ちょっと甘いものの差し入れで労いたい仲間がいる時、隙間時間でお菓子をつくる。
瞑想は苦手だし、流行りのマインドフルネスはふわっとしか理解していないが、セルフケアは得意だ。つまりは、自分のための時間だけれど、そのおまけで誰かが嬉しくなったり楽しくなったり、ほっとできるなら、ラッキー。
そんなふうに、夜のキッチンを楽しんでいる。


作品は以上です。作品が揃ったあとは、書き手同士で読みあい、ファンレターを書きました。例えば、「恐ろしい考え」を書いた来年も新婚さんに届いたファンレターは次の通りです。

1)いやあ、とても面白かったです。詳細な観察眼があって、その描写の上に「私はそれらを、本当に大切にできていたのか」というアイデアが提示されるからこそ面白いんでしょうね。このギャップ。「ムリムリとはがす」っていう表現も秀逸だなあ。とにかく、文章に勢いとリズムがあって、とっても面白かったです。傑作!

2)まず、タイトルでひきこまれた。ん?何が恐ろしいんだろう?って。最後の香ばしいぞのあとの「…」が、時間の経過を表しているような感じがして、いい間だなぁって思いました!

このファンレターを受け取る経験、思っていた以上に嬉しいものでした(私も食べたので、書いた!)。入園・入学する子どもたちと一緒に書きひたり・読みひたる時間を楽しみにしています。

ライティング・ワークショップについては、実践普及を推進しているプロジェクト・ワークショップがまとめている「ライティング・ワークショップ(作家の時間)って何?」のページをご覧ください。

参考図書:「作家の時間」プロジェクト・ワークショップ編著
     「読書家の時間」プロジェクト・ワークショップ編著

 

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園設立準備のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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