2020年7月15日
(書き手・村上 聡恵/2023年3月 退職)
風越学園の「土台の学び」に位置づけている算数・数学。
後期(3年生〜7年生)は、ひとり1台持つChromebookにインストールされたアプリ・「Qubena」(AI型の算数・数学教材)、教科書、ライブラリーの本、身の回りのものなどを使いながら、一人ひとりのペース(自由進度学習)で学んでいます。
ホームのスタッフたちは、一緒に学ぶ子どもたちが「よりよく理解できるように」「学び合えるように」「ゆるやかにつながり合えるように」と工夫をして環境づくりをし、ていねいに伴走をしています。
「3年生だから教えてもらう」ではなく、
「7年生だから教える」でもなく。
3年生から7年生がまざりあって、学ぶ。
自分で自分の学びをコントロールしながら、算数・数学の学びのサイクルを意識しながら学びます。
4月14日。オンラインで始まることになった算数・数学の学び。
オンライン授業そのものが初めての経験。しかも出会ったことがない子どもたち。
「オンラインで自由進度は無理じゃない?」という声もありましたが、子どもたちの手元にあるChromebookと教科書を利用して、自由進度で学べる環境をつくるべく動き出しました。こちらで何も準備をせず「はい、やって」の丸投げでは学習とはいえない。かといって「これをやりますよ」と全てをスタッフが決めたものを学ぶのでは、風越が大切にしている「つくる」を子どもたちと一緒に経験することができない。葛藤の中オンラインで取り組んだのは、次のようなことです(いずれも任意参加)。
こうした約1か月半のオンライン期間中の学びから「ドリルみたいに問題を解くだけでなく、パズルみたいな問題もやりたい」「Qubenaで学習する内容がひと目でわかるようになると、やる気が出るかも」「みんなで楽しく学びたい」という意見が子どもたちから出てきました。この声から始まったのが、Typhoon(コミュニケーション・プラットフォーム)上の「数とパズルの世界」そして、「Qubenaをよりよくしようプロジェクト」というコミュニティ。このように算数・数学を学びながら、自分たちにとってよりよい学びの環境を作り出していこうという取り組みも生まれ始めています。
校舎に全員が登校できるようになった6月1日。
算数・数学の全体像がわかる「さんすうとすうがくのせかい」という地図を渡しました。
自由進度の中心となるように作られた地図は、かなめんの頭の中の算数・数学のイメージをデザイナーさんがステキなデザインに仕上げてくれたもの。義務教育学校では、自分の学年の学習を中心に、関連のある学年の内容を復習したり、ジャンプの課題として上の学年の内容に取り組んだりすることができます。地図には「子どもたちが自分で決めて、自分で学びを進められるように」という風越算数チーム(KAI・かなめん・たいち・れいか)の想いも込められています。
次の日から、この地図で自分が学んでいる場所や次に学ぶ場所を確認しながら、3年生から7年生までの子どもたちがまざりあって学んでいます。トランプで同じ番号になった人同士で集まって最初に座る場所を決めたり、7年生が中心となってみんなが学びやすくなるような場所を工夫したり。ホームごとに「どんなふうに学べば、自分もみんなもより良く学べるのだろうか?」ということを考え、学び合う場作りについても試行錯誤をしています。もちろん、自由進度なので一人ひとり取り組んでいる場所はバラバラ。でも、みんなで一緒に学んでいるという空間が、子どもたちとスタッフによってつくられています。
校舎に登校できるようになって2週目。ホームごとの3年生〜7年生20人で行うミッション(学習した算数・数学を身近なことに生かす学びの手法)がはたちゃんによって行われました。今回のミッションは、「伊能忠敬(いのうただたか)になって、校舎の地図を作ろう」というもの。限られた道具だけを使って、独特の形をした風越学園の校舎の地図をかくという取り組みです。自分たちの知恵を出し合いながら異年齢で、楽しそうに校舎中を歩き回り、計測する姿。
「楽しみながら算数・数学を学んでほしい」というスタッフの想いが実現した瞬間でした。
子どもからも「今まで習ったものをいかせた気がして、嬉しかった。単元ごとにミッションがあると思うと、ものすごく進みそう。」という感想が聞こえました。
Qubenaの担当者様、学びの地図を描いてくださったデザイナー様、保護者の皆様など、スタッフ以外にもたくさんの力をお借りしながら、算数・数学の自由進度での学びがスタートしています。お力添えをくださった皆様、本当にありがとうございます。
これからもたくさんの人とまざりあいながら。
子どもたちと共に、算数・数学の学びの世界を広げ続けていきたいと考えています。