だんだん風越 2020年4月20日

「名」からつくるということ(羽田 鋭)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2020年4月20日

はじめまして、はたちゃんです。
この4月から軽井沢風越学園にジョインしました。

ぼくは風越にきてから、たくさんの新しい言葉を覚えました。「slack」「Googleドライブ」「Zoom 」「typhoon」など…これまで扱ったことのなかったプラットホームにたくさん触れるなかで、新しい言葉を覚えていきました。

そして、風越ならではの様々な言葉にも出会いました。

先生、ではなく「スタッフ」
学級、ではなく「ホーム」
職員朝会、ではなく「チェックイン」
開校式、ではなく「はじまりの日」
生徒指導、ではなく「せいかつベース」
保健指導、ではなく「ウェルネス」
赴任、ではなく「ジョイン」

最初は聞き慣れない言葉の数々に、「これはなんのことだっけ?」と頭の中で辞書をひき変換しながら使っていましたが、慣れてくると愛着が湧き、その言葉をつくった人の願いがだんだん見えてくるようになりました。きっと、子どもたちにとっても親しみやすい言葉になるんじゃないかなと感じています。(こうやって並べてみると、たった一文字でも意味を持つ漢字という言語の偉大さも感じますが…。)

そして、ぼく自身も言葉そのものから「つくっていく」という体験をしていくことになります。

たとえば、何て呼んでほしいのか。


ジョインしたばかりの時、初対面のスタッフから「羽田さんは、なんて呼べばいい?」と聞かれて、ぼくは戸惑ってしまいました。
以前勤めていた学校では、苗字のあとに「先生」をつけて呼ばれることが当たり前だったけど、ここではスタッフも呼んでほしい名前を自分で決めるのです。

ぼくは中学生の時に友だちから呼ばれていた「はたちゃん」にしたけど、スタッフの中には、「去年とは違う呼ばれ方をしたい」とこの4月からニックネームを変えた人もいました。

何て呼んでほしいのか。どういう自分で在りたいのか。自分自身のこともそこからつくっていきます。

オンラインで子どもたちだけでなく、お家の人とつながるための方策を話し合った時にも、その会の名前をどうするのか議題に上がりました。

そこでついた名は、懇談会でも会議でもなく、「ティータイム」。

それは、お家のみなさんとリラックスしながら、柔らかい雰囲気の中でお話がしたいという願いのあらわれでした。質問する側と受け答える側という関係でなく、お互いに困っていて、お互いにアイデアを出し合える、そんな関係を築きたい。

最後にホワイトボードの隅にもぎーの描いた可愛いティーカップのイラストが添えられ、ぼくたちの願う雰囲気がスタッフのなかで広がっていきました。

スタッフの間でオンライン・ティータイムという言葉が共通言語になってどんどん使われていくのを見ると、その言葉が「つくった」メンバーの一人として誇らしいような気分でした。

言葉そのものから「つくっていく」。
ここに風越のコンセプトが通っていると思います。

自分の呼ばれたい名前を「つくる」。ホームの名前をこれからみんなで「つくる」。なぜ言葉からつくるのか?と問われればぼくだったら「言葉が生まれたときにこそ、真に新しいものが生まれるから」と答えたいです。

きっと、いまそれぞれの個人の中に確かに存在しているのだけれど、まだ個人の外、世の中には存在していないものがたくさんある。もしくは、それを世の中にすでにある似た別の名前で呼ぶことで、それがまだ世の中にない新しい「それ」であることに気づいていなかったりする。

もしかしたら、ぼくはすでにある「先生」という言葉に引っ張られて、ぼくの中の先生ではないなにか別の新しい「それ」を見逃していたのかもしれない。見誤っていたのかもしれない。

「羽田先生」と「はたちゃん」の違いはなんでしょう?名づいたことで初めて見つめられるものがある気がしてきました。

名が違えば、人はなぜ名が違うのかを考えます。考えれば、その違いが見えてきます。より知ろうとするきっかけが、そこにはあるのだと思います。

宮崎駿の『千と千尋の神隠し』のストーリーでも、主人公の千尋が千尋という名前を湯婆婆に奪われることで、千尋だったころの記憶が消失していってしまうというシーンがありました。

名を変えるということには、その存在そのもの変えてしまうだけの大きな力があるのかもしれません。

また、名前を別の視点から見れば、語感というのもとても大切な要素だと思います。とくに小さい子どもたちにとってはなおさら。

ラーメンズのコントの中で「名は体を表す」という作品があります。その中ではこんなやりとりがなされます。

例えば、「ましゅまろ」と「せんべい」が並んでて、「ましゅまろ」と「せんべい」を知らない人に見せて、どっちが「ましゅまろ」で、どっちが「せんべい」でしょうか?って聞いたらどうだ?

ああ!わかるね!

そうなんだよ。ふわっふわでコロコロの白いやつと、バリバリで平べったい茶色のやつでは、明らかに前者が「ましゅまろ」で、後者が「せんべい」なわけさ。

なるほど!

きっとぼくも無意識に「はたちゃん」という言葉の語感に惹かれて、どんな自分でありたいのか、自分は子どもたちにとってどういう存在でありたいのかを考えていたのだと思います。

初めてぼくに出会った人に、「あー。確かにあなたは羽田先生というより、はたちゃんで感じだよね。」と言ってもらえたら嬉しいのだと思います。

最後に子どもたちへ。

あなたは軽井沢風越学園でなんて呼ばれたいですか?
あなたのホームはなんて名付けたいですか?

これからも軽井沢風越学園では新しい言葉がどんどん生まれると思います。それと同時に、新しい物事も生まれていくことを想像すると、わくわくがとまりません。

#2020

かぜのーと編集部

投稿者かぜのーと編集部

投稿者かぜのーと編集部

かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

詳しいプロフィールをみる

感想/お便りをどうぞ
いただいた感想は、書き手に届けます。