だんだん風越 2020年4月20日

感性を働かせる学びの環境づくり

岡部 哲
投稿者 | 岡部 哲

2020年4月20日

子どもたちがやってくる日に思いを馳せながら、環境づくりに取り組む毎日。

特に校舎での学校生活が始まったら、いわゆる「知識」だけを学ぶのではなく、自ら環境に働きかけることを通していろいろな「やり方」を身につけてほしいと考え、環境づくりを行っています。

このような環境づくりがしたいと思い至ったのには、以前の私の失敗があります。教員になったばかりの頃、子どもたちに何か教えることに必死で、より良い授業をすることばかりを考えて授業の準備をしていました。でもある日、子どもたちの要望に応じてためしに休み時間に図工室を開放したところ、授業では見られなかった子どもたちの姿に出会ったのです。

自分の見つけたわくわくの種から、ひたすら無心に描いて、つくって、発見する。

私が苦労して準備した授業よりも、それぞれが思いつく目標に向かって無心に打ち込み、自ら設定する困難な課題を嬉々として解決していました。その姿を見て、子どもたちには目の前の物や空間から、「ここではこんな遊びができそうだ」「こんな道具を使ってみよう!」と自分で考える力があることを知ったのです。

そこから一人ひとりの思いを具体化する道具や材料を自由に使える空間を整える、環境づくりの大切さを感じるようになりました。

風越のラボでは、道具や素材を箱や棚などにしまっておくのではなく、できるだけ子どもたちが自分で物を見つけたり、手に取ったりすることができる「余白」をつくるようにしました。さらに、そのような余白を設けることで、「やり方」を探る余地を持たせようと試行錯誤しています。

例えば、「木工ようぐステーション」

使い方のレクチャーを受ければ、子どもたちは、釘や金槌を自分で使いたいときに使うことができます。

次の人が使いやすいか考えて片付けることも条件ですが、単に「必ずしまう」と言うような指示ではなく、一歩立ち止まって考えて欲しいと思い、このような仕組みをつくってみました。(おまけですが、用具が収まりのいい形状に整えられていることで、自分で元に戻したくなるとろもポイントです。)

こちらは「ざいりょうぎんこう」


アイデアは以前お世話になった先生からいただいたもの。

子どもたちが、家から持ち寄った素材を分別して入れておくことができます。自分が「つくりたい!」「使いたい!」と思った時には別の素材を取り出して使うことができるという、いわば「創作材料流通の仕掛け」です。

ぜひ、お家で不要な空き箱、ひも、包み紙やコルクなど、綺麗でお宝になりそうな物をお届けください。

    校舎の建築で出た端材などを使って、子どもたちの姿を想像しながら環境をつくっています

「知識(※1)」は、本を読んだり人に教わったりして学ぶ「事柄の知識」と自らの身体を通して学ぶ「やり方の知識」、学びのプロセスが異なる2つの知識に分けられます。

前者は分かりやすい知識ですが、後者の「やり方の知識」とは、自転車の乗り方や紐の結び方のように、口で説明されてもわからないが、実際にやってみることで身に付く知識のことです。つまりこれらは、自ら環境に働きかけることによってしか学ぶことができない知識であると言えます。

ではどうすれば「事柄の知識」を学ぶことだけでなく、「やり方の知識」を身につけられる、感性が働くような環境をつくれるのか。

知識を伝達することが念頭に置かれてきた学校で、環境づくりは未だフロンティアです。いい塩梅を見つける作業は、子どもやスタッフとともに年数を経て、ゆっくりと形成されていくものでしょう。一歩立ち止まりながらの環境づくり。ここに打ち込めることに私自身とてもワクワクしています。

※1『アクティブマインドー人は動きの中で考える』(佐伯胖、佐々木正人編)など。

 ラボスペース(図工室、工房、技術家庭室、理科室)とライブラリーをつなぐ「そうぞうの広場」

#2020 #ラボ

岡部 哲

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どういうわけか、大変な方に転がってしまうんです。楽しいけど。

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