2024年2月26日
「何してるのー?」キッチンの窓から興味深々で中の様子を伺う幼稚園児さん、暫くすると、「いい匂い・・・」とキッチンに引き寄せられる人たちがチラホラ・・・「楽しみにしてるよ、今日のメニューは何だっけ?」とスタッフの声。そう、今日はコトコトの日。
久々の開催となった「芋煮会」。
芋煮会は、年に一度、有志の保護者によって全校へ温かい風越流芋煮汁が振る舞われる日だ。「おかわりある?」とキラキラの笑顔でやってくる子どもたちにほっこり。具だくさんの芋煮にもほっこり。そして、調理する保護者も調理中や合間のお茶タイムのおしゃべりが、とっても楽しいのだ。子どもの近況やおすすめのお店の事など、とりとめのない話なのだけれど、それがまたいいなぁと思うところ。
「嬉しいね、こういう時間」
「こういう機会があると、学校にも来やすいよね」
「通っていた幼稚園では、毎月お誕生日月のママたちがカレーを作るっていうのがあって・・・毎月あって楽しかったよ」
「へぇー、そんなの風越でもできたらいいかも!?」
早速、毎月お誕生日月のママたちがカレーを作るというアイデアを風越学園のスタッフに相談してみたところ、「いいね!まずはテスト的に一回やってみるのはどう?」ずいぶんあっさり・・・でも、力強いサポートを感じる返事が返ってきた!
こうして雑談から、ひょっこりとコトがはじまった。
風越学園が大切にしたいこと “大人もつくり手” はこんな風にはじまるんだな。
やってみるにあたって、その「大切にしたいこと」をおさらい。
主に子どもたちにフォーカスした文章も、”子ども” を ”大人”に読み替えてみる。
大人についても読んでみる。
大人もつくり手、大人も学び続ける存在でありたい。常に「本当にこれでいいのかな」と前提を問い直し、変態し続けること。そのための手間を惜しまないこと。なにより学ぶことや変わることをおもしろがっていること。私たちは、これから集う多くの仲間と子どもたちと共に、試行錯誤し、”よりよくあろう”とし続けてゆく。
それぞれが自分の出来ることを無理なくやろう、学びながらおもしろがってやろう、試行錯誤で、だんだんでいいんだよ、と確認しあった。そうでないと楽しく続けられないよねと。
いよいよ「ほぼ月イチカレーの日(仮)トライアル」当日。
準備から調理まで、色んな人に関わってもらいながら順調に進んでいた。根菜がゴロゴロ入った和風カレーも美味しくできた!キッチンにあふれる笑顔にホッとしたのも束の間、「あれ、これ足りるかな・・・?」
なんと最後は足りなくなって、何人かの子どもたちとスタッフには、ふりかけご飯を食べてもらうという事態に・・・。でもそんなトホホなはずの場面でさえ「お!トライアルらしさの演出?!」って、なぜかワハハな雰囲気で。風越学園の、”やってみる”に対する、懐の深さを感じる出来事だった。その動じないし動じさせない術や心構え、繰り出される本気のサポートはきっと、”大人も子どもも共につくり手”として重ねてきた、豊かな経験に裏打ちされたものなのだろう。
トライアル後、実施したアンケートからフィードバックを受け取った。
同じものを食べるという給食のような体験、コミュニケーションの場となるような活動に、ポジティブなコメントがたくさん寄せられた。また、「参加のカタチが色々あるとよい」、「カレーに限らなくてもよいのでは」といった具体的なアドバイスも。色んな意見から、課題も見つかるし、次に深めたいことが見えてくる。何より、フィードバックそのものが「一緒に考えているよ」というメッセージとなり、勇気をもらった。
風越学園には、頼もしいつくり手の先輩や、つくり手に心を寄せる人たちが大勢いる。だから未熟なつくり手でもきっと大丈夫。トライアルを経て、いい意味で力を抜いて次のステップへ進むことができた。
学園側から「つくり手として関わるきっかけになるような、優しい仕組みになるといいね」という言葉と大きなサポートを受け取って、新しい取り組みとしてスタートすることが決まった。カレーの日(仮)改め、「ほぼ月イチ コトコトの日」。
そこにこめた思いをのせて、typhoonの掲示板(保護者とスタッフのオンラインコミュニケーションプラットフォーム)で次のように呼びかけた。
同じ釜のものを味わう機会・同じ釜のものを作るコミュニケーションの機会として、「ほぼ月イチ コトコトの日」がはじまります。
「コトコトの日」は、学園のキッチンで保護者が調理した温かい料理を食べられます。
「コトコトの日」は、保護者が運営する取り組みです。子どもたち・スタッフ・保護者 etc. の気楽な関わりの場になり、また色んなコトへのつながりが生まれたら・・・と。
もし調理に参加可能なら、大きな鍋でコトコト煮ている間、学園の日常を感じたり、たわいのない話をしたり、リラックスした楽しいひと時となりそうです♪
関わり方は十人十色。先ずはステキな場づくりを思い、関心をよせていただくところから。どうぞご一緒に!
「コトコトの日」という名前について、人がトコトコと集まってくる感じでいい!という感想をもらったが、まさにその通り!関わり方の一つである『つくリーダー』の募集には、18名が応えて集まった。
つくリーダーは、1年で6回あるコトコトの日のいずれかを担当する旗振り役だ。3~4人のチームになって、担当する日のメニューを決めることに始まり、食材集めに人集め・・・350人前の料理の段取りを受け持つ。コトコトの日の場をつくりながら、仕組みをだんだんと深めてきた。
つくリーダーは、幼稚園生から中学生の保護者、卒業生の保護者やスタッフも。ごちゃまぜコミュニティの学校らしい顔ぶれだ。ほとんどの人は、大人数分の調理経験はない。これまで学園内で活動的だった人ばかりではないし、中には「学園関係ではずっと引きこもってきた」という人や、陰キャを自称する人も(笑)。ドンと任せて!というよりは、ただ場づくりに心を寄せて「私にできることがあるなら」とか「ぜんぜん自信はないけど・・・」と、遠慮がちに一歩を踏み出したという人が多い印象だ。
ゆえに、つくリーダーになって初めてtyphoonへの投稿を経験し「投稿のボタンをポチするとき手が震えたぁ」という感想が聞こえてきたり、「呼びかけに反応が薄かったらどうしよう・・・」とか「お野菜が集まるのに時間がかかってる?」とドキドキもするし、「ちゃんと美味しくできるかな」と心配で眠れなかったという人もいる。
だから、食材募集の箱にたくさんのお野菜が入っているのを見た時、新しい出会いがあった時、「楽しかった」「美味しかった」という言葉を聞いた時、出来上がったあたたかい料理を味わいながら、ホッとして喜びの涙を流すとか流さないとか・・・(笑)。
人見知りだからとか、料理上手じゃないからと、これまで参加を躊躇してきた方に、このリアルが、ちょっと覗いてみようと思うきっかけとして届くと嬉しい。
前日の朝、エントランスのドア横には野菜の回収ボックスが置かれる。お願いした通りに洗ったり皮をむいたりした野菜を、よっこらしょと入れてくれる。みるみる山積みに。
お肉や調味料を購入する費用は学園からのサポートで賄っているが、野菜はこのご家庭からの提供に頼っている。野菜の提供もコトコトの日の参加方法の一つで、とてもありがたい縁の下の力持ちだ。
当日の朝、調理参加を買って出た人たちがキッチンに集まりだすと、チェックインもなくゆるやかにスタートする。「4人くらいで、まずコレを一口大にカットしましょうか」「手の空いた方、こちらの鍋を担当してくださーい」つくリーダーの声かけで作業は進む。1つのコンロに2つの鍋を並べ、合計8つの大鍋で調理する。45人分ほどの量を1つの鍋で加熱してゆくのだから、なかなかの力仕事だ。
作業をしながらおしゃべりをしていると、自然にだんだんと知り合えてゆく。コトコト煮込んで料理が仕上がってくる頃には、初対面だったと思えないほどに、とっても深ーい話に及ぶこともあるという不思議な時間。でも、お話が得意でない方もご安心を、無理に話さなくても調理作業が間をつないでくれますよ。
出来上がったお料理は、一人一人のスープジャーに入れて並べ置く。スープジャーは、登校時にエントランスで預けてもらったものだ。蓋に「ありがとう」とか「にんじん少な目にしてください」などのメッセージを見つけて、頬がゆるむ。スープジャーを介しても人の繋がりって感じるものなんだなと。
お昼が近づき作業が落ち着いてくると、試食という名のランチタイム。ゆっくりとはいかないけれど、ワイワイと机を囲んでのおしゃべりは、お腹も心も満たされる、ご褒美のようなひと時。
お昼休みになると、スープジャーを受け取りにくる子どもたちで、キッチンが一層にぎやかに。「いただきまーす」と元気いっぱいの人も、ちょっとはにかみながらの人も、みんなとてもリラックスした自然な姿を見せてくれる。スタッフ同士や、スタッフと子どもたちの日常も感じられる。普段はなかなか校舎に入ることも、義務教育学校の子どもたちと出会うことも少ない幼稚園保護者にとっては、なおさら新鮮だったもよう。
「これマイプロで作った。見て!」と子どもが大人に話しかけ、「あぁ、そういえばこの前リッキーがね・・・」とスタッフが保護者に話しかける。保護者同士、大人と子ども、もちろんスタッフと、たまに卒業生も顔を見せてくれて、実にカジュアルに出会ったり話したりする場になっている。このカジュアル感が心地良い。改まって報告したり相談したりするほどではなくても、ちょっと話してスッキリするとか、安心するとか、案外そういうコミュニケーションが大事かも。
「ごちそうさまでした」と幼稚園の人たちから、すっかり空になった鍋が戻ってきて、おかわりリクエストもそろそろ落ち着いてきた。さぁ、あとは片付けだ。
この1年を振り返り、コトコトの日は、芋煮会というコトをきっかけに始まり、色んなかたちの人の関わりによって、だんだんとつくられてきたのだなぁと感じる。そして、まだまだつくられている途中。
今年度は、スタート年ならではの「とりあえずやってみよう」「様子を見ながら」という試みの繰り返しだったように思う。それだけに、つくリーダーの緊張がやや大きかったかも。
来年度は、経験を糧にまた一歩。コトコトの日を、より軽やかに、より楽しく続ける道を探しながらまた一歩。いつまで経っても余白があって、その余白をおもしろがれたら、コトコトの日は続いてゆきそうな予感。
キッチンから美味しい匂いがただよって、笑顔の子どもたちが、「美味しかった!おかわりある?」って寄ってくる、そんな様子を感じながら大人も自然に笑顔でいる、それでもう十分な気がしているけれど・・・やっぱり、こういうやさしい関わりが連鎖して、またあたらしいコトにつながるとますます素敵だなと思う。
ゴリさんがうろうろチャンネルで言ってたな。
「お互いに関心を寄せ合う。
お互いの関心に関心を寄せ合う。
それが網の目のようになっていけば、風越はもっとステキになりそう。」って。
新年度の掲示板でもまた呼びかけてみよう。
関わり方は十人十色。
先ずはステキな場づくりを思い、関心をよせていただくところから。
どうぞご一緒に!