2021年2月28日
前回の第5回、第6回のかざこしミーティングの記事の最後に、このようなことを書いた。
一人ひとりが風越で生活している中で感じている違和感や不快感を話し合える、聞き合える、そんな機会が日常的にあることが、ここでの生活をちゃんと「わたしたちのもの」にしていく上で必要なこと。
よりよくしていく話し合いの種は、一人ひとりの「感じていること」にあって、それは、わたし自身をつくっていくことにもなっていく。
うん、改めて読んでも、そうなっていけばいいなあと思う。では、風越がそうなっていくためにどうすればいいのか、と考えたときに、ぼくが子どもたちに働きかける以前に、スタッフ自身が、かざこしミーティングで大切にしたいことを体感していること、実感を伴ってその価値が共有されていることが、何より大事じゃないかと思った。きっと、体感していることは、身体全体から滲み出る。滲み出たものが場の空気をつくったりもする。きっとそう。
ここまで、「かざこしミーティング」は、ぼく自身の熱量で突っ走ってきたこともあって、スタッフとこの場の価値を分かち合うことを充分に行えていないということに、常に課題に感じていた。(毎月振り返りをしているまーぼー(ファシリテーター・古瀬さん)からも、そのようなフィードバックをもらっていた)
なかなかスタッフみんなに当事者意識を持ってもらうことは難しい。いろんなことを言い訳にして、スタッフみんなと共につくるということから遠ざかっていたのかもしれない。
そこで、第6回のあった11月頃から、毎週金曜日の放課後に20分ほどだが、「大人のかざこしミーティング」を開くことにした。
参加自由にしているので、その週によって集まったり集まらなかったり、盛り上がったり穏やかだったり、毎回来る人もいればあまり来ない人もいる。そんな感じだが、そういった人の動きからも、今のスタッフの現在地が感じられていい。
この場で気になることとして出されたものは、積極的に取り扱っていこう!ということで、風越重点目標(あえて学校っぽく笑)、略して、「かざじゅう」として掲げ、1週間それぞれが意識して過ごすようにしている。
例えば、放課後、残っている子どもたちが下校時刻になってもなかなか帰らないことが気になるということが話題になり、実は、シンガーソングライターの顔も持つぼくが、下校ソングをつくって、下校時刻に流すことに(笑)。
さらに次の週には、放課後、子どもたちが片付けをせずに帰ることがいやだなーという話になったので、下校ソングに、片付けを促す歌詞を加えて、今も、毎日毎日流している。
改善されたものは、その場にいる人たちの合意のうえ、「OK!」と書かれたコーナに付箋を移動させていく。その瞬間は、
「よくなった、よくなった!」
と、ちゃんと言葉にして、わたしたちの風越での生活がよりよくなっていっていることを分かち合う機会になっている。もちろん、まだまだ一部ではあるが。
こうやって、スタッフたち自身が、日々の違和感を丁寧に取り扱い、具体的な行動につなげて、“わたしたちの生活の場”として心地良さをつくっていくことは、きっと、子どもたちにも伝播していく。そして、かざこしミーティングでのスタッフの姿勢もきっと変わるはずだ。そう信じて、2月になった今も継続してる。
第5回のときに、カイノスケが「かざこしミーティングの進め方、これでいいのか」という問いをぼくに投げかけてきた。このとき、今がタイミングだなと直感して、「じゃあ、一緒につくろう!」と返した。
その次の週、ひとまず、最高学年の7年生に集まってもらって、これからはかざこしミーティングをみんなと一緒につくっていきたいという思いを伝えた。
そこで集まった7人の子どもたちとファシリテーターチームを結成して、これからのかざこしミーティングを一緒につくっていくことになった。
はじめは、様子を伺っているようだったファシリテーターチームの人たちは、回を追うごとに、自分たちの場として、だんだん前のめりに関わるようになっていった。
第8回を終えた後、後期で毎週末行われている、「今週のベスト1」を振り返る時間には、ソウタがこのかざこしミーティングのことを選んでいたそう。
最近のミーティングでは、シュウゴが「こんなんやるなら土台(の学び)やった方がいい、と言っている人たちに、かざこしミーティングの話し合いを楽しんでもらいたい」という思いを漏らしていた。ぼくも同じ思いだ。
どっと肩の荷が降りた。もうすっかりファシリテーターチームの人たちの場になりつつある。そして、この7年生の7人が実に頼もしい(現在は、さらに一人加入して現在8人)。
改めて、どこかで、ファシリテーターチームの人たちにインタビューしてみたいな。どんな思いを持ってやっているのか。かざこしミーティングをそのような場にしていきたいか。
さて、もう一度、冒頭のこの言葉に戻ってみたいと思う。
一人ひとりが風越で生活している中で感じている違和感や不快感を話し合える、聞き合える、そんな機会が日常的にあることが、ここでの生活をちゃんと「わたしたちのもの」にしていく上で必要なこと。
よりよくしていく話し合いの種は、一人ひとりの「感じていること」にあって、それは、わたし自身をつくっていくことにもなっていく。
第7回は、かざこしミーティング立ち上げの時にも大事にしたいこととしてもあげていた「日常的な対話」。ここに焦点をあて直そうと考えた。
風越は、毎日、各ホームでの朝のつどいから一日がはじまって、帰りのつどいで一日を終える。それぞれ30分ずつ時間が設けられていて、これは、一般的な公立学校の朝の会や帰りの会の倍の時間にあたる。それだけ、ホームのつどいの時間というものを大切にしているカリキュラム編成になっている。
このつどいの時間は、各ホームに委ねられていて、使い方は様々。それぞれのホーム担当のスタッフの意向もあるだろうから、この時間の使い方を提案することへの躊躇がこれまではあった。
しかし、一人ひとりの「感じていること」を丁寧に取り扱いながら、風越での生活を「わたしたちのもの」にしていくためには、月に1度のかざこしミーティングの時間だけでは限界がある。
「最近どう?」「困っていることはない?」「気になっていることは?」
と、問われても、
「うーん、ないかな。」「まあ、ふつう。」
となるのは、日常的に、そういったことにアンテナを張っていないからで、問われる機会がないと、無意識のうちに流れていってしまうからだと思うのだ。
そこで、以下の表のように、かざこしミーティングとホームのつどいそれぞれの対話の目的を整理し、ホームスタッフに新しいホームのつどいの過ごし方を提案することにした。
ホームでのつどい | ・つどいで、日常的に「感じていること」について話し合う(「気になっていることある?」「悩んでいることある?」「最近どう?」など |
| ・事前に大きな掲示板に出されたテーマを、そのまま取り扱って分科会を開く ・全体で体験する何かもこれまで通りやる |
当日のミーティングの様子はこちらの動画をご覧いただきたい。
集まったアジェンダは、それぞれのホームのつどいで話されてきたもの。これまでのアジェンダを出す時間を短縮できた形にはなったが、やはり、ホームごとにばらつきがあったり、他のホームから上がってきたアジェンダには興味がなかったりと、話し合いたいことを話せる場にはなっていなかったかもなあ。反省。
ただ、それぞれの分科会で話し合っている様子を見ると、有意義な時間だったなとも思う。が、まだまだ改善の余地あり、といったところか。
第7回を終えて、どうだったか、ファシリテーターチームで振り返ると、こんなことが話題になった。
「話し合うだけで、何も変わっていない」
「発散ばかりで、何も決まっていかない感じがしている」
うんうん。なるほど。と思いつつ、疑問だった。
なぜこういうことが起こっているのか。本来は、自分たちのことは自分たちで決めていいはず。話し合って決まらなかったら、また、それぞれの日常に戻って、話し合いの続きをすればいいし、全員の合意を得なくても、それぞれでどんどん決めて、変えたいときに変えていいはず。
すでに、それらができる環境は整っているはずだけど、なぜ、そうなっていないのか。できる環境にあってもできない。できないのか、する必要がないのか。できないと思い込んでいるのか。時間がないのか。権利はあるはずだが、それを行使できない。何が障害になっているのだろうか。何が足りないのだろう。
ファシリテーターチームとのやりとりを通して、「自分たちのことは自分たちで話し合って決めていいんだよ」ということをシンプルに再度伝え直そう、ということになった。口頭で説明することはもちろん、枠組みとして伝わっているメッセージにも注目して、かざこしミーティングのそもそもの場づくりから検討し直すことにした。
また、アンディと第7回のことを振り返っていると、「今は、ホームのつどいとかざこしミーティングしかないけど、いろんなサイズのミーティングがあっていいよね」という話になった。
つまり、ホームのことは、ホームの人たちで話し合って決めていく。後期のことは後期の人たちで話し合って決めていく。風越のことは・・・。といった感じ。
これまでは、ホームでのつどいか、かざこしミーティングという全体の場の2種類しかなかったことで、かざこしミーティングは全体に関わる場であるにも関わらず、個人的な欲求や後期のwifi問題など、いろんな粒度の議題があがってしまっていたのだ。そして、そのミーティングに参加する人たちも前期後期に関わらず様々だった。
今思えば、少し広げすぎていたからこそ、決めにくかったり、続きの話し合いが行いにくかったりしたんじゃないかなと思う。
そこで、第8回は、前期と後期、それぞれに分かれてミーティングをすることにした。そして、「自分たちのことは、自分たちで話し合って決める」ということをテーマに掲げ、議事録に必ず今日決まったことについて記録するという形で、意識付けを試みた。
前期のミーティングは前期のスタッフに、後期のミーティングはファシリテーターチームが中心に場をつくっていくことによって、それぞれの参加度合いもグッと変わった感じがする。
最後の共有の時間には、それぞれのミーティングで決まったことを発表。
こちらの「体育館利用」のチーム(8月からボール救出大作戦として活動してきている)は、なかなか体育館倉庫のモノの扱い方がよくならないので、思い切って、倉庫の1週間閉鎖を宣言。一瞬のざわつきが。
そこで、スタッフのたいちが、とっさの判断で「ちょっと2、3分近くの人とおしゃべりする時間とってもいいかな」と提案。
それぞれで決めるのはいいけど、こういった決め事に対して意見を言えることとか、決めたことに付いて議論できることとか、そういったことも合わせて大事そう。
ファシリテーターチームでの振り返りでも、そんな話になった。
ここまで読んでいただいた通り、この第7回、第8回も、いろんなことが起こり、形を変えてきた。いつも、その場で起こっていることから、より良い道を模索している。
今回の大きな変化は、ファシリテーターチームの結成と前期後期分かれてのミーティングにあった。また、進んだ先に課題は立ちはだかるが、間違いなく、「わたしたちのかざこしミーティング」になっていっている。
あと少しで開校初年度を終えようとしている。
このかざこしミーティングの今年度の閉じ方に付いて、今まさに、ファシリテーターチームと話し合っているところ。閉じるのか、つなげていくのか、どんなイメージを持って場をつくっていくのかによって、ずいぶん変わってきそう。
ここまでグイグイ進んできたからこそ、立ち止まって振り返りたいな。この1年のこと。かざこしミーティングを通して起こっていたこと、風越のみんな、一人ひとりにとって、かざこしミーティングはどんな場になっていったのか。また、これからどんな場にしていきたいのか。
「もっと、一人ひとりの声を聞きたい。」
今はそんな気持ちだ。
奈良県公立小で4年勤めたのち、準備財団時代の2019年から軽井沢にきちゃいました。B型山羊座の左利き。男三人兄弟の長男です。好きな教科は国語。うなぎとうたが大好物。学生時代は、野球部でバンドのボーカルでした。関西人ですが、どちらかというとツッコミの方です。
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