2017年7月13日
『子どもは子どもを生きています』(小西貴士、フレーベル館)
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想像してみてください。
世界中の子どもがひとり残らず、
水たまりを避けて歩く。
世界中の子どもがひとり残らず、
「かーしーてー」と言われたら「いーいーよー」と素直に貸してあげられる。
世界中の子どもがひとり残らず、
遊び終わったおもちゃを自分できれいに片づけられる。
世界中の子どもがひとり残らず、
大人の言うことをきちんと聞く。
世界中の子どもがひとり残らずこんな子どもばっかりだったら、
すごくつまらないと思いませんか?
わざと水たまりの中をびちゃびちゃ歩く子どもや、
「ぜったいにいやだ!」とはっきり言う子どもや、
おもちゃを散らかし放題の子どもや、
まったく大人の言うことを聞かない子どもを、
一瞬イラっとしながらも、そんな子どもの姿に僕はほっとするのです。
「あー、子どもらしいなぁ。」と安心するのです。
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先日、5年間で日本全国2,000以上の森をほぼ一人で歩いた三浦豊さんが案内人となった東京の下町を歩くツアーに参加しました。
なんでもないアパートの前で足を止める三浦さん。自転車で外出しようとしていたそのアパートの住人とおぼしき女性が怪訝そうな顔でこちらを見ています。
その女性の存在をまったく気にせずに三浦さんが、
アスファルトのほんのちょっとの隙間から生えている植物を指さして、
「これ、桜ですね。3歳くらいかな。かわいいですねー。」
それを聞いてその女性も、「え、これ桜なの!? そうなのー、大事にしなきゃー」と笑顔。
道端の小さな植物に足を止めながらゆっくり進むと小さな公園。
「見てください、この公園。雑草がいっぱい生えてますね。荒れていますね、公園管理の立場からするとね。」と話し始めました。たしかに、植えられた植物に混じって、あちこちから雑草が出てきていて、このまま放っておくと雑然とした状況になりそうな気配です。
「でもね…」と三浦さんは話を続けました。
「これは、植物が森に戻ろうとしている状態なんです。」
荒れているのではなく、森に戻ろうとしている。
人間の管理を余所に、本来の姿に戻ろうとする植物の姿。
そこに、子ども時代を満喫しようとする子どもたちの姿が重なって見えました。
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山梨県清里の森の案内人であり、写真家である小西貴士さんが、森でたっぷり遊ぶ子どもたちの姿を撮影し、そこに言葉を添えたのがこの本。
小西さんはこんなふうに書いています。
「もし、世界中の子どもがひとり残らず、服の表裏を間違わずに、素早く着替えることができたりしたら!私たち大人の幸せは、ずいぶん減ってしまうことでしょう。」(p.74)
とんでもなくやっかいなことを子どもがやらかして、とてつもなくイラっとして怒鳴りたくなった時、一呼吸して、呪文のようにこの本のタイトルを唱えてみてください。
「子どもは子どもを生きています」
この本に登場するような子どもたちの姿が、たっぷりあふれる軽井沢風越学園でありたい。
そう強く思っています。
何をしているのか、何が起こっているのか、ぱっと見てもわからないような状況がどんどん生まれるといいなと思っています。いつもゆらいでいて、その上で地に足着いている。そんな軽井沢風越学園になっていけますように…。
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