2020年6月13日
通常登園が始まって2週目のこと。グラウンドの入り口で、ケーキ屋さんごっこを始めた子どもたち。さら砂や葉っぱでケーキをきれいに飾りつけたところで、お昼ごはんのベルが鳴った。
「あーあ、これからケーキを食べようと思ったのに」「片付けたくないな」「せっかく、いいさら砂作れたのに・・・」と残念そう。子どもたちの気持ちが残っているようだったので、「明日続きやるのはどう?」と声をかけた。すると、「そうする!明日もっとケーキを作って、みんなで食べようね!」と約束して遊びに区切りをつけた。
その日の帰り、ケーキ屋さんごっこの話が出た。「明日続きやるんだー」と楽しみな様子のソノ。「私も!」とユイとアオイ。その会話を聞いていたマトイが突然はっきりとした声で「わたしも、もちろん明日つづきするよ!」と言った。
マトイの言葉に私はとても驚いた。なぜなら、オンラインではほとんど言葉を発しなかったし、分散登園中は友達の遊びをじっと観察することが多かったから。はっきりとした声には、4月から温めていたマトイの気持ちが詰まっているような気がした。自分で一歩踏み出した瞬間。友達とのつながりの中で安心を得て、気持ちが高まって思わず発した言葉だったのかもしれない。
翌日登園してくるなり、「昨日のつづきでケーキ屋さんしようね!」と待ち切れない様子。お母さんとの別れ際に泣いていたユイも友達との約束を思い出して、「私もケーキ屋さんやるんだった」と泣き止んだ。「さら砂なくなってるかも」「ケーキ食べられちゃったかな?」気になって仕方がない。
朝のつどいが終わると、レオ・コウマ・ヒカリも加わり、グラウンドに移動して昨日の続きを始めた。「どこで作る?」「何を作る?」とおしゃべりしながら、アップルパイ、ホットケーキ、チョコケーキと、思い思いのケーキを作っていく。
ケーキ作りに励んでいると、近くでお寿司屋さんをしていた他のホームのマハルとミキが、「お寿司食べに来てよ」と誘ってくれた。
「ここは回るお寿司屋さんじゃないんだよー」というマハルの言葉通り、目の前でおすすめを握ってくれるカウンター形式のお寿司屋さん。泥のごはんを本物の寿司のように握り、その上に葉っぱのネタを乗せてくれる。
そんなお寿司屋さんの様子に刺激を受けて、ケーキ屋さんのオープン準備が始まった。お客さんからよく見えるところにケーキを置く台を作り、葉っぱを敷いて飾りつけ。
「ケーキやおだんごいかがですか?」と呼びかけたところ、近くにいた子どもたちが次々とお店に来てくれた。「石一つでケーキがひとつ買えますよ」とソノ、アオイ。石を一つ受け取ると、「はい、これおつりです」と代金以上の石をお返しする太っ腹な店員さん。お客さんは、おつりでもらった石を持って、何度もお買い物に来てくれたのでした。
それぞれが役割を見つけて関わり合い、翌日も続きがしたくなる遊び方。子どもたちの遊びの様子が変化してきたなと感じる一日でした。
この春、風越学園の仲間になった子どもたち。ホームの担当である私に、「今日は何するの?」「これやっていい?」「これはどうするの?」と、許可や承認を求めることがよくあります。
でも、大人が正解を持っているわけではない。「自分の好きなことをして遊んでいいんだよ」「あなたはどうしたいと思ってる?」「自分で考えてみて」と、その子の中にある思いを出せるように言葉を返したり、一緒に考えるように心がけています。すぐには出てこなくても、自分を出せる安心の場をみんなで作っていくことで、いつか大切な自分の思いが出せるようになるといいなと考えています。
子どもたちの中に眠っている「○○したい」が溢れ出すことを願って、たっぷり遊びに浸れる環境を大人も作っていきたいと思います。
生き物たちのドラマに魅せられて、軽井沢で森のガイドを15年。子どもたちと自然を見続けたくて軽井沢風越学園へ。学園の森の保全しながら、子どもたちと自然の不思議や面白さを見つけていきたい。幼少期は、近所で評判のお転婆娘。実は、冒険や探険に誰よりも心躍らせている。
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