2019年5月16日
月に一度集まって、子どもも大人もたっぷり遊んだ鳥井原の森は、この4月から、2〜5歳まで27人の子どもたちが毎日通う認可外保育施設「かぜあそび」として、再スタートしました。
足元にはぴょんぴょんと動きまわる蛙、にょきにょきと背をのばす土筆。空は、青さや雲のカタチを少しずつ冬から春模様へ変えてゆく。
「なんで“かえる”ケロケロっていわないんだろう」
「おれ、おばあちゃんちで“つくし”たべたことあるんだ」
子どもたちは毎日鳥井原の森で、新しい動植物に出会いながら、そしてすでに知っているものとは関わり方を変化させながら、周りの世界と関係性を築いています。
それは、人間に対してもおなじです。
「あの“おともだち”がくれたの」
「“そのこ”がつかまえたんだって」
他者の呼び方から伝わってくる距離感。
関係性ができあがって初めて、自己主張もはじまりますから、4月のこの時期はあそびの中でも、ケンカがない。貸してもない。
泥団子づくりをしていても、作った団子は同じ皿にのせるけれど、遊びはそれぞれに進んでいて、並行遊び(※1)と協同遊び(※2)を行ったり来たりする姿が見られます。
かと思えば、
「さんさいさん(3歳の子)もいるんだよ」
「しんさんはね、いつもなにかつくっているの」
と自分の生活をする場や関わる人を紹介することも。
さまざまな「関係性」の育ちがはじまる春。
こどもたちは、少しずつすこしずつ、でも時に大胆に関係性を育んでいます。
思いがけず遊びが交差し、お互いの関係性がぎゅっと縮まることもあります。
この日、何人かの子どもたちとスタッフが、シャベルとスコップを使ってつくった小さな川に、昼ごはんを食べてからすぐに向かった、ゆうすけ。
ゆうすけは午前中、ホースから流れる水で遊ぶ他のこどもたちをじっと見つめる時間がありました。
水源であるホースを手に取り、小さな川へ、そして周りへ、水を流していく。
結構な勢いで流れる水に、足元が濡れる。
でもそんなことはちっとも気にしない様子で、溢れ、流れていく水を、にやっと笑いながら眺めるゆうすけの姿を見ていると、午前中に目にした彼の姿をつい思い出してしまう。
「おとするよ!」
そんなゆうすけが使っていたホースに、水道の近くで興味を持った、あいとしょうた。
水道をひねっては、ホースに耳を近づける。
「まだおみずがはいってるみたい」
「あ、おとしなくなったね」
水が流れていると音が聞こえること、流れる水の量で音の大きさが変化することに気づいたよう。
すると少し離れたところから、「ちょっとーーーー!」という声が。
水で遊んでいた、ゆうすけの声です。
あいとしょうたは、ゆうすけの存在を確認すると、蛇口を右にひねり、また水を流し始めたが、すぐにまた、今度は蛇口を左にひねり、水をとめる。
「もーーーー!!」
さっきよりも大きな声で、水がとまったことを知らせるゆうすけの声が聞こえる。
その声を聞いたふたりは、水を強めたり、弱めたり、だしたり、とめたり。
「もーーーー!!」
「もーーーー!!」
「もーーーー!!」
そのたびに聞こえてくる、ゆうすけの声。
遊びがいつの間にか交わりあい、互いに相手の反応を楽しんでいるのか、その声(音)を聞く、あいとしょうごも、そして「もーーーー!!」と叫ぶゆうすけも、その顔は、なんとも言えずうれしそうでした。
※1 並行遊び…遊びの発達段階のひとつ。同じ場所で同じ遊びをしながらも、相互に関わりを持たない状況のこと。
※2 協同遊び…役割などをもち、同じ目的で一緒に遊ぶ状況のこと。