
2026年1月21日
幼稚園の園だより「こどものじかん」より、幼稚園スタッフが綴るエピソードをお届けします。
今月は、いつもとちょっと趣向を変えて「森◯わたし」号としました。幼稚園ではスタッフの研究テーマとして「森 ◯ わたし」(もり まる わたし)という言葉を置いています。2023年度の後半から森の案内人であり写真家の小西貴士さんに伴走いただきながら「自然の中で育っていることってなんだろう?」という問いからエピソードを元に、日々の実践を振り返る機会をつくっています。12月号は、「森 ◯ わたし」の視点で切りとったエピソードを集めてお届けします。
「自然の中で育っていることってなんだろう?」と頭の中でめぐらせながら読んでいただけたら嬉しいです。
お昼ごろのこと、グラウンドにある小さな畑にジョウは腰を下ろし、ビニール袋いっぱいに集めたどんぐりを見つめていた。いっぱい集めたね、と声をかけると、赤く色づきひょこっと尻尾が出ているどんぐりを手にして「これは芽が出てる」と言った。土に埋めたらお母さんの木になるかもしれないね、と伝えると、ジョウ「植えてみよ」と言う。
どこに埋める?と聞くと、ジョウ「ここはどんぐりがいっぱい落ちちゃったら畑なのに困るでしょ、だから違うところがいい」と言う。どんぐりの木は沢山のどんぐりを落とすから畑に落ちたら困る…、と想像しているジョウ。そうだね、どこがいいかな、としばらく考え込んだ。ジョウは眉間にシワを寄せながら「やっぱりここは(畑)栄養のある土があるからここがいいかも」と言い、「冬になると全部葉っぱが落ちちゃうから、(もうすぐ冬になるから)葉っぱがならないかもしれないから、次の春にならないと葉っぱがならないかもしれない」と続けた。あいこ「そうだね、れんくん(ジョウの弟で来春入園予定)が来るころには芽が出るかもしれないね」ジョウ「れんくんっていつ来るの?何月に来るの?」と言った。
そして、「その時には樫の木がなっていてね、もうね、どんぐりがいっぱいここに落ちててね。そういう感じになると、ここでゴロリンできるよ。」と言ったジョウは鼻を膨らませてわっくわくしている。さらに「ん〜、でももう少し広いところでゴロリンできるといいな〜」と言って辺りを見回した。
いろいろと悩んだ末、最後には畑に植えてみようということに。
畑を掘っていると、大きくて太い枝が出てくる。すると、「木は土の栄養になるから、それを小さく切って、ここに撒けばいい」と言い、出てくる木をノコギリで切って、畑へ放り投げていった。そして、「おおきくなりますように〜」と、コロコロと転がるどんぐりをじっくり見つめ、ひとつひとつ厳選しては、畑に植えていった。
ジョウがどんぐりとの出会いをぐっと深めていた時間。その身体は今、自分の手でつくることが未来と繋がっているという確信に満ち溢れていた。そんな風にまっすぐに未来を見つめるジョウの姿から、私もまた、そうなるかはわからない不確かさと果てしない時間を思うことを超えて、思わず大きなどんぐりの木を仰ぎ見ることを想像し身体があたたかくなるのを感じた。ジョウとどんぐりとの間に生まれた物語がこれから先、どんな風に広がっていくのかな…、楽しみだ。
南平台へ行く道路から脇道を入り、森を抜けていく散歩に出かける。森に足を踏み入れるとけたたましい鳥の鳴き声が聞こえてくる。(人間の気配に警戒しているのかな。)子どもたちも自分が先頭を歩きたい!とか抜かさないで!と鳥の鳴き声に共鳴しているかのようにやり取りが激しくなってくる。「鳥さん、けんかしてるの〜?話してるのかな〜?」と声を掛けると、レン「あんちゃん、れんちゃんだいすき〜って言ってるんだよ〜。」、ジンタロウ「じんちゃんだいすき〜って言ってるんだ〜。」と森の生き物たちの気配を少しだけ意識する。
森のトンネルの中を歩く。葉が生い茂っているため少し暗がりになり、道路とはちがう雰囲気が漂う。そんな雰囲気になにか出てきそう〜というイメージをふくらませる人が出てきた。「クマがいるかも〜。」「おばけがいるかも〜。」「シロクマかもしれない。」目には見えないけれど”何かがいるのかも”という気配を感じ、色んな事を想像をしながら歩いていた。そこに急にサヤの泣き声が聞こえてきた。事情を聞いてみるとサヤは「しろくまは雪のところにいるからここにはいないって言ってるのにみんながいるっていう。」「おばけは夜しか出てこないって言っているのにいるっていう。」と泣きながら、この時、感じている不安や緊張を言葉にして友だちと話していた。
1週間後、同じコースの散歩に出掛けた。
森に入るときにスタッフが「クマさんおじゃましま〜す」と声を掛けるとサヤが「森にシロクマいるよね〜」とジンタロウに話している。ジンタロウ「シロクマさん寝ているから静かにしてね。」サヤ「シロクマ家族がいるからね。」という会話をしていた。
森の雰囲気を全身で受け取る身体と友だちと一緒に想像の世界を楽しむサヤがいた。「シロクマ、いるよね〜」と話しているサヤは楽しげだった。
子どもたちは、現実の世界と想像の世界の境界が曖昧な世界を生きている。だからこそ、森の中で、目に見えないなにかを感じて怖さや緊張、不安を感じてしまうこともある。そんな時、ユーモアたっぷりのやりとりで想像を膨らませて面白がる人もいれば、怖さや不安の中に留まる人もいる。
そして、季節や天気、気温、風、霧などその時々で姿を変えるからこそ、大人にとっては同じように見える状況だったとしても、微妙な変化やそこにいる友だちとのやり取りの中で子ども一人ひとりの心持ちも変わっていく。そんなことを感じたやりとりだった。
12/10:
朝晩の冷え込みが厳しくなって空気がキーンとすることも増えてきた。
水をいれたままのバケツには氷が張り、それを素手で掴んで「お月様の形だ!」と言う子や、空に掲げてキラキラ光る氷を「きれい〜」と眩しそうに嬉しそうに見ている子どもたち。
もっと大きな氷づくりをしようということになり、エマが張り切ってバケツに水を入れるために水道に向かう。モトアツが大きいシートに水を入れたらいいんじゃない?と言うので夏のプールづくりを思い出して場所をつくることにした。
クウト、ユウタロウ、ソウ、ユカリ、エマたちがバケツや猫車に水を入れて何往復して水を運んでいった。
エイト「ホースの方がいいじゃん」と、蛇口にホースをつなごうとするがうまくいかない。クウトが近づいてきて「みんなでバケツで運んでるのに楽しくなくなっちゃうじゃん」と一言。クウトの言葉がすっと入ったのか、エイトも猫車を押して何度も水道とブルーシートを往復した。
12/11:
朝、最初に登園したユカリ
スケート場に行き、恐る恐る、靴で触ってみる。「できてる!」と嬉しそうに笑う。
ソウも足を氷につけて体重をかけてみると、「全部は凍ってないんだ!」と言う。下に溜まった水が氷の隙間から滲み出てきていた。
そのうちに氷が割れた。
エマ「ハートの形」、テルホ「矢印」、ハナ「ダイヤ」、ハル「マンション」、ソウ「ピザ」他にも恐竜の歯、ルビー、エメラルド、、、出てくる出てくる。ハナは「小さいのと、大きのだと音が違う!」と氷同士を叩いて出る音に心踊らせていた。太陽の光にかざしたり、かじってみたり、大事そうに並べたり、上から落として割ってみたりする、子どもたちの豊かな感性や表現に驚かされた。
そのあと、ユカリ「ありだったらいいのにな〜」カイ「てん(貂)になりたい」
乗ったら割れてしまった氷を見て2人は、自分たちが小さな動物だったら本当にスケートをして遊べるんじゃないかと想像していたようだった。冬休みが終わりこれからもっと寒くなる時期。雪や氷で思い切り遊んだりイメージを広げたり、そんな子どもたちの姿を今から想像すると私もわくわくしている。
