風越のいま 2025年12月16日

子どもとの関わり方を問い続けて(山本花菜)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2025年12月16日

書き手:山本花菜(2025年8月〜10月インターン)


7週間の軽井沢風越学園での生活は、登校するたびに、様々なエピソードが生まれて問いが生じ、考え続ける日々…毎日が濃くて一瞬にして過ぎ去った。

せっかくだからその日々について書き残したいと思いつつも、かぜのーとの執筆の書き進め方をとても悩んだので、最後のリフレクション回の時にスタッフの皆さんからいただいた「振り返りのための問い」を振り返り、答える形で言葉を置いていきたいと思います。

◯インターン中に心が揺れたことは?

子どもとの関わり方についてです。いつ、どのように声をかけようか、関わろうかと常に考え続けては悩み続ける日々でした。

これまでに行った教育実習では、先生方との何となくの共通理解があって、「注意しないと」と義務感を抱いたり、注意した方が良いなという場面で自分が出て、注意していましたが、風越には、学校に共通のルールがない。スタッフ一人ひとり、そして子どもたち一人ひとりにに、軸や感じ方がそれぞれあって、それらを互いに手渡し合いながら関わり合っていて、その中で、私はどう関わろうかと考えてみるが、子どもの行動の裏にある背景を考えれば考えるほど、その世界を大切にしたい自分と、私自身が感じた違和感等を伝えてみたい自分とがぶつかり合ってしまい、なかなか“伝える”という一歩を踏み出すことができませんでした。

自分の中で手ごたえのあった関わり方ができなかったので、これからも考え続けていきたいなと思っています。でも、この7週間の中で「注意する」ことは一度もなかったです。インターンが始まったころは、注意するか否かで悩んでいたこともあったな。でも、注意って考えている時点で、上下関係が無意識に成り立っていることに、スタッフの方々から気づかせてもらいました。かなち(山本)として、かなちが感じたことを素直にアイメッセージとして受け渡してみる…これからも挑戦し続けていきたいです。

◯来る前の自分と今の自分を比べて変化したことは?

一番大きかったのは、大人としての在り方です。

風越に来て間もない頃は、自分がアクションを起こす時に周りのスタッフの顔色を伺ってしまう自分がいました。自信がなかったし、周りのスタッフに自分の行動がどう思われるのかを気にしすぎて、正解を模索していたのだと思います。だから、観察ばかりしていて、なかなか自分から子どもたちに関わることができませんでした。

でも、関わり方に正解はないことを前提にスタッフ一人ひとりが子どもたちのことをよく見て、自分の考えで行動している姿に、背中を押してもらい、周りから見られることを意識した正解を探るよりも、自分が一人の大人として子どもにどんな影響を与えるのかを踏まえた上で、子どもとどう関わるのか、何を伝えるのか(あるいは見守るか)等をすごく考えて立振る舞うようになれたと思います。無意識に立ち振る舞うことがほとんどないからこそ、インターンが終わって1カ月経った今でも、一つ一つのエピソードが鮮明に思い出されます。

◯子ども観にどんな変化がありましたか?

私は、インターンが始まる前から平野朝久先生の『はじめに子どもありき』(東洋館出版社)を読んでいたこともあり、子どもは力のある存在であるということを頭では分かっていました。でも今振り返ると、その理解はすごく甘かったな~と感じます。

風越での7週間で見てきた風越の子どもたちの姿は、私が思っていた以上に「やりたい」を持ち、その願いをもとに突き進んでいました。その姿は、「私にこのマイプロの時間があったら、この子たちみたいに自分のやりたいことが見つかるのだろうか」と不安になるくらい。子どもたちのエネルギーや創造力、好奇心…衝撃だったし、そんな子どもたちをすごく尊敬していました。

大人は、子どもたちの活動を見守り、広げる等の支えをすることももちろん大切だけど、それだけが役割ではないということも知りました。「○○してあげよう」ではなくて、子どもと同じ目線に立って一緒に活動を面白がり、素直に感じた問いや、客観的に見て広がりそう!と思った問いを出してみて、もし子どもも興味を持ちそうだったら、それをさらに一緒に深めていく…という感じ。もっともっと、子どもたちを信じて良いんだと知りました。

信じる、ということに似ているけれど、私はまっつー(松江)から「ぼーっとすることの大切さ」も学びました。私は、ホーム4・5のホームプロジェクト「野野野」で川へ散策に行った日、自分たちが料理や飾り付けに使う自然を探している子がいる中で、ぼーっとしていたり、ただ遊んでいる子たちに「何か学びに向かうように働きかけなければ」と一人で焦っていました。

でも、まっつーが「ひらめきが生まれるためには、ぼーっとすることも大切だよ。」と柔らかく教えてくれて、それが心に響いて…。この出来事がインターンの序盤にあったこともあり、インターン中は常にこの言葉を頭の片隅に入れて生活していたのですが、こういうことか!と子どもの姿で実感することもありました。

カホ(2年)のマイプロの伴走中の出来事を、少し紹介します。

「ねぇねぇひまー」とウロウロしていた私に伝えてくれるカホは、私の腕をつかんで離れない。「かなちが行くところに一緒に行く!!」と私のウロウロ観察にお供してくれることとなった。雑談をしながら、いろいろな場所を回って「こんなことやってるんだ~」と皆のことを観察した。

まだ、時間がたくさんある。このまま終わるのもな…と思い、ふと「本は好き?」と聞いてみた。すると「カホはあんまり字を読むのが好きじゃないの。だからあんまり。」と教えてくれたのだが、はっと思い出すように「かなち、ちょっと待ってて。面白い本があるの」と持ってきたのは、『あーっとかたづけ』(田中達也著 / 福音館書店)という絵本。

「これこれ」と言いながらページをめくり始めたため、私は何となく読み聞かせをすることにした。すると、ページをめくるたびに次の展開を予想するゲームへと発展した。展開を予測しながら楽しそうに読み進める姿を見て、私も楽しみつつ安心する。

読み終わると、何人かが集まって企画されたBigまつり(魚釣り)が開催されていたため、「それに行きたいんだけど」と私が伝えると、「いいね行こう!」と小走りで向かい始めた。魚釣りが終わると、大ピンチ図鑑を一緒に読もうと誘われて、カホと引き続き2人の時間を楽しむ…と急に「ねぇ工房行きたい!お風呂つくりたいの!」と顔を輝かせて言い始めた。

この出来事から、必ずしも目的のあるマイプロの時間を過ごさなくても、頭を休ませることでひらめくことってあるんだなと実感できました。「目的を先に持っておかないと!」等と感じていた私にとって、時に脱線したり、ぼーっとしたり、ゆったりとした時間を過ごす中で見えてくる閃きや学びもたくさんあるのかもしれない…と、もっと気楽に時間をともにすることの大切さを教えてくれた、まっつーと子どもたち。感謝の気持ちでいっぱいです。

お風呂づくりをするカホと支えるユウジロウ

7週間という短い間の中ではあったけれど、本当にたくさんのことを子どもたちから、そしてスタッフから教えてもらい、考え続けることができて幸せでした。あと半年、今まだ手元にあるモヤモヤを考え続けながら、来年からは風越での学びを活かし、公立小学校で出会う子どもたちに返していきたいなと思います。

#2025

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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