風越のいま 2025年10月20日

こどものじかん_9月

こどものじかん
投稿者 | こどものじかん

2025年10月20日

幼稚園の園だより「こどものじかん」より、幼稚園スタッフが綴るエピソードをお届けします。


◯「しっぽとり」2025.09.11 (橋場 美穂)

9月のはじめ頃に原っぱに散歩に出掛けたときのこと。この頃ブームだったコオロギを捕獲しながら、栗やどんぐりも拾いながら、歩いて原っぱまで出た。

みんな下を向いて歩いていたので、原っぱに到着すると一気に視界が開けて身体が開放された気持ちになる。思わず走り出す。カバンを置いてしばらくするとジンタロウが「しっぽとりしよう!」という。その声と共にズボンのおしり部分に帽子を入れてしっぽに見立てる。相手のしっぽを取る鬼ごっこ。参加者がどんどん増えていく。

しっぽをつけるということは、しっぽを”取られる”ということ。しっぽをつけて、思いっきりスピードをつけて走り、逃げまわる。逆にしっぽはつけずに追いかける側をやりたい人もいる。

しっぽを取られそうになるとしゃがんだり、尻尾を隠したりすることもある。でも「止まっている時は尻尾を取っちゃだめ」と、いつのまにかルールもつくられていた。ユウゴは、取られるのが嫌だったらしく「走っているときに取っちゃだめ!」という。「走っている人の尻尾を取るのがしっぽ取りですよ」と言ってみたものの、夏休み前にしっぽ取りをした時は、取られるのが嫌すぎて後ろから友だちが近づいてくるとしっぽを隠していたっけ。そう考えると取られてしまうことを気にしないで思いっきり走るようになったんだなぁ〜。など感じた。

そして夢中で遊んでいるところで突然レンの大きな泣き声が聞こえてきた。「あれ?れんちゃんが泣いてる?どうしたんだろう」とつぶやくとエマが「悔しくて泣いてるんだよ。」という。「なんで?」と聞くと「あのね、エマちゃんがね、帽子を取ったから。」と話す。

「帽子を取ったら泣いちゃった」じゃなくて「悔しくて泣いてる」というエマの表現。そういう時って悔しいんだよなという気持ちがエマにもあるのだろう。するとアンがレンに寄り添う。「レンちゃん、どうしたの〜?って聞いてあげて〜」という。「れんちゃーん!どうして泣いてるの〜?」と遠くから聞いてみると「ママに会いたい〜」という。そう。しっぽを取られて、ママに会いたくなってしまった。それもレンの表現。

レンは涙がおさまったあともしばらく座り込んでいた。実は他にも数人、しっぽを取られると落ち込む人がいる。こういうルールのある遊びを心から楽しむということは高度なことなのかもしれない。でも毎回「しっぽ取りやろう〜!」という声を聞くとみーんな嬉しそうに参加している。一つひとつ積み重ねだな。。。。

と思っていたら、9月の終わりにまたしっぽ取りが始まり、しっぽを取られても泣かない、落ち込まないレンがいた。

ルールのある遊びを楽しむこと。追いかける、捕まえる、逃げる、捕まるをドキドキしながら楽しむことができる身体が少しずつつくられているんだろうな。と感じた。

夏休みが明けてこの二学期は様々な”新しいこと”が年少さんには起こってくる。これまでつくってきた安心のコミュニティの中で一つひとつ一緒に経験しながら、積み重ねていきたいなと思う。

◯「まっかだな〜じゃ、ないじゃん、みどりだなぁだよ」 2025.09.25 (坂巻 愛子)

9月は残暑厳しい日々だったけれど、森の中は秋の花や草、種たちに囲まれて探検が楽しい季節になってきた。秋の涼しさが早くやってこないかな〜という思いで、集いで、『♫まっかな秋』を歌っていたある日のこと、メイ「まっかだなぁ〜じゃ、ないじゃん、みどりだなぁだよ」と言う。そうだよね、どんぐりや栗は落ちてきたけれど、葉っぱはまだまだ緑色だね、と話していると、ヒュウゴは「真っ赤になるまでは時間がかかるんだよ」と真剣な面持ち。ということで「みどりだな〜、つたの葉っぱもみどりだな〜、たろうくんのレインウエアーもみどりだな〜」なんて歌が変わっていった。

それ以来、この歌をうたうときは、今日の森は何色?と聞くようになっていった。

ある日には、

メイ「ピンクだな〜かな」ということで…、
「♬ピンクだな、桜の葉っぱもピンクだな〜、朝顔の花もピンクだな〜」

レイ「オレンジだな〜がいい」ということで…、
「♬オレンジだな〜、オレンジ色のはっぱだな〜、みかんの色もオレンジだな〜」

ジョウ「森だな〜」ということで…、
「♬森だな〜、森にリスは住んでるよ〜、葉っぱもいっぱいなってるよ〜」

と替え歌を楽しんでいる。童謡の魅力と日々様々な歌を口ずさんでいる子どもたちの感性が響き合い、このチームならではの歌が生まれている。

子どもたちの色との出合いは様々である。

年中チームでは春にリツくんがお姉ちゃんから貰ったという朝顔の種を育て、夏休み明け満開の朝顔が子どもたちを迎えてくれた。そして、花びらをすり鉢で擦っては色水をつくる輪があっという間に広がっていった。

エルナは連日のようにすり鉢を手にしていた。朝顔のピンク色の中にツユクサを擦り潰し、じわじわ〜っとピンク色が青色を帯びていく様をじーっと見つめた。そして、さらにツユクサを入れると、色水は群青色のような色へと変わっていった。エルナはそれをボールに入れ替えて、種と花を入れて色彩豊かなご飯にした。

アキは小さなツユクサをたくさん摘んでは色水を覗き込み「みて〜」とうっとりしている。袋の中に広がる青の世界を味わっていた。マロはうろうろしながら慎重に花や葉っぱたちを選んでいたが、広場を指さして、「あれ、ひまわりもいいかもね」と言った。マロについて行くと、山吹色のような色のとても小さな花が緑の葉っぱたちの中に咲いていた。「なるべく軽い花がいいよ〜」と言う。理由を聞くと「(色水の)袋の中にあっちこっち、点々ってあるときれいだなぁって思うから」と。マロは色の世界をデザインすることにワクワクしていた。

ある日の探検では、マナトが「みて!しろいのがある!!」と言って駆けて行った。森の中に一点、真っ白に咲いた花に釘付けになったマナトは、枝を折って鼻に近づけると「いいにお〜い」と目を瞑って言う。純白の花に魅了されたマナトの感性が周りの人を色や香りの世界へと連れて行ってくれた。レイナは赤紫色のススキを手にして「パープルススキ」と飛び跳ねて教えてくれた。子どもたちの観察眼のすごさには驚かされる。

朝顔のピンク色にツユクサの青色が広がっていくように、子どもたちの身体にじんわりと色の世界が広がっていく瞬間がある。森の中に点在する色は名付けようもない色に溢れていて、子どもたちは好きな色、きれいな色、面白い色、ワクワクする色…、とそれぞれが色の感覚を膨らませ、身体に馴染んでいく色とりどりの色との出合いを味わっているように感じる。

「♬真っ赤だな〜」と歌う日はいつになるだろう…。そして、冬が巡ると一気にしずかな森に包まれる。そんな中に不意にやってくる白銀の世界も楽しみだ。

◯「年長まつり」 2025.09.01 (根岸加奈)

夏休み明け初日、簡易タープを「わっしょい、わっしょい」と片付けていたところ、「これ、おみこしみたいじゃない?」というカイの一言から、年長まつりをしたい!とつどいで相談会が開かれた。

おまつりで何をしよう?と聞くと、「おみこし!」「おまつりのとき“わっしょい”ってかついでるやつだよね」「東京では水をかけてた」「神様を洗ってた」「龍神まつりみたいな」「子どもみこしもあるよね」…そんな話から、

ハナ「おまつりといえば、屋台。わたあめ、アイス!」
ハル「ラーメンとか屋台!」
トウカ「ボールすくうやつもあるよね」
セナ「スーパーボール水にうかんでて、ぐるっと回ってるのをすくって袋に入れて持ちかえるやつ!」
ソラ「金魚すくいみたいにすくうやつね」
リン「アルミにマッキーとかで絵を描いて、しずめるとうかぶやつとか!」
ケンセイ「てっぽうで当てて倒れたおもちゃがもらえるやつ!」
テルホ「踊るとか!」
ハルキ「たいことか音楽!」

話し合いながら思わず立ち上がってしまうほど盛り上がる年長のみんな。ノリの良いメンバーではあるが、この日もみんなのイメージとともに気持ちが重なり合い、「年長まつりをやろう!」と即決した。そして、【おみこし】、【ラーメン屋台】、【金魚すくい屋台】、【的あて屋台&音楽】の4つのチームに分かれて準備を進めることになった。

おみこしチームは、まず紙におみこしのイメージを描いてみると、カイ「棒2個必要だ」モトアツ「4個に見えるけど、飛び出てるから2個だね」カイ「おみこしのお腹の部分は小さく、飛び出るところを持てるようにしよう」と倉庫へ段ボールや素材を取りに行き、担ぐ棒をくっつけたり、絵の具で大胆に塗ったりしている。

ハナがおみこしでお菓子を売るという看板をつくったところから、セナは小さなドーナツや指輪を画用紙でつくっておみこしに飾ったりしている。エイトは「おみこし担いでるときに水筒が邪魔になるかもしれないから、入れておく場所があるといい!」と水筒入れもつくり、オリジナルのおみこしが出来上がっていった。

ラーメン屋台チームは、まずハルの提案でまつりの地図づくりをして全体のイメージを共有した後、ケンセイ「ぼく、ラーメン屋の店長やりたかった!(ハチマキ締めるポーズ)」と気合いを入れてラーメンづくり開始。ハルキ「麺はどうする?」という話から、あたりを見回して長細い草をたくさんとってきて、空き箱でつくった製麺機に入れてこだわりの麺をつくっている。他にもチャーシュー風の葉っぱなど、自然のものを見立てて具材に。クウトは「メニューもつくろう」と言いながら、画用紙に7色の虹を描いて「これは虹色ラーメン!」。それぞれの店員さんが好きだというしょうゆ、しお、みそラーメンも追加した。ユウタロウは器作りにこだわり続け、ソウは木の枝のお箸をひたすら集めたりと、大忙しの開店準備だ。

金魚すくいチームは、白紙をみんなで囲みイメージをじっくり共有し合っている。必要なものも含めて計画を詳細に書き終えると、「話し合いでこんなに時間かけちゃったよ〜」と笑いながらも、さっと準備にとりかかる。すくうものは、金魚に見立てた葉っぱや、アンナ「水に浮かべるから濡れてもいいやつ」と、プラ素材のものを組み合わせたものなど、作りながらアイデアを膨らませている。卵パックのへこんだ部分を切って、油性ペンで色を塗り、そこに水を入れて、リン「ほらね、きれいでしょ」。すくう道具「ポイ」は、Y字型に分かれている木の枝を集め、そこに葉っぱをぐるりと巻いて網のようにしている。祭りの準備時間以外も、ユカリ「お客さんに景品であげるんだ」と、どんぐりを箱いっぱい集める姿もあった。

的あて&音楽チームは、数字を書いたダンボールの的を木の枝につるし、ハナ「的と枝の間に入れられた人は100点にしようよ!」と独自ルールをつくって盛り上がっている。タキとエマは景品のアイスづくり。ティッシュ箱に2つアイスを描いて切り抜き、テープで留めるとアイスが完成。切り抜いた残りを見て、タキは自分の顔に当てて「これ、お面になる」と変身グッズの景品もつくっていた。音楽チームとしては、楽器の準備までは辿りつかなかったが、エマ「お家でたいこつくる!」と想いは強く、家でお菓子の缶などを組み合わせたオリジナルの太鼓もつくってきた。

こうして迎えた年長まつり当日。スタッフが何も声をかけなくても準備を始める年長たち。自分たちで年長まつりをつくるのだ、という意識が本当に強いことを感じる。

お客さんとして幼稚園のみんなと年長保護者を招待したが、開店直前、お客さんの数をあらためて数えて、「足りないぞ!麺も足りない!スープも足りなーい!」と焦るラーメン屋台チームを見て、急いで手伝いに回る他チームの姿もあった。それぞれのチームで準備を進めているかと思いきや、チームを超えてしっかり心がつながってるようにも感じた。

みんなの協力でなんとか準備が終わり、年長まつりがオープン。デイキャンプの時に歌った「♪キャンプだほい」の祭りバージョンとして作った「♪まつりだホイ」を歌いながらおみこしを担いで唐松林を練り歩く。だんだん年少・年中さんも集まってきて、それぞれの屋台はあっという間に行列に。金魚すくいに初めて挑戦する小さなお客さんの手をそっと支えたり、ステージに初めてあがった小さなお客さんのダンスにあわせて即興の太鼓で楽しそうにコラボする姿があった。「お客さん、来すぎでもう(商品)なくなっちゃうよ〜!」と言いながらも、その顔はとても嬉しそうな人たちだった。

こうしてみんなでつくることの喜びを積み重ねている年長のみんな。年長になってあっという間に半年が経ったが、「まだまだ年長のみんなとやりたいこといっぱいあるんだから!」というミオの言葉通り、現在はキャンプの提案も出て、またみんなであーだこーだ言いながら進んでいる。一日一日を噛み締めながら、みんなで愉しい毎日をつくっていけたらと思う。

 

#2025 #幼稚園 #森

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