2023年10月24日
本年度,本校(松本市立丸ノ内中学校)は,本校の学区にある開智・田川の両小学校と共に,「学びの改革パイオニア校」として,「総合的な学習の時間」を窓口とした“探究”の実践に取り組んでいます。
年度当初,3校の職員に意識調査を実施したところ,『「総合的な学習の時間」の授業を進める上で,心配なことはありますか?』という問いに対して,約80%の職員が「ある」と回答しました。特に,「児童・生徒が問いをもち課題を設定するための支援」と「児童・生徒が主体的・協働的に問題を解決していくための支援」に関する不安は,とても大きいことが分かりました。
非常に恥ずかしい話なのですが,探究コーディネーターという役をいただいている私自身も,これまで「総合的な学習の時間」に本気で取り組んできたとは,正直言い難く,どのように「探究的な学習」を進めればよいのか,大きな不安を抱いている職員の1人でした。
このような状況をふまえ,3校の探究コーディネーターによる打合せでは,軽井沢風越ラーニングセンターの助言をいただきながら,それらの不安をどのように解消していけばよいのか,具体的な手だてを話し合いました。その過程で,本年度の目標として,次のことを掲げました。
『「探究的な学習」の不安や喜びが語り合える職員集団を形成する研修計画の模索』
まずは,“探究”に対する不安や喜びを語り合い,共有できる職員集団をめざす・・・
そのために各校では,研修のあり方を見直し,従来陥りがちだった「トップダウン型研修」から,職員の必要感に基づいた「ボトムアップ型研修」への転換を図り,その時間を位置づけていくことにしました。
各校の実情に沿って,様々な「ボトムアップ型研修」が計画・実施されましたが,3校で連携しながら実施した研修の1つに「チューニング研修」があります。3校が連携する研修に,なぜ「チューニング」を位置づけたのか・・・その理由に,私たち探究コーディネーターが風越学園を訪問し,職員研修の様子を参観させていただく中で,「これならば自校でも実践できる」と思えたことと,実際に自分自身も体験し,授業担当者の願いに寄り添い,共に創り上げる“共同設計”のよさを実感できたことがあります。
以下は,本校の3学年職員が「チューニング」を経験した際,リフレクションで出された感想です。経験年数を越えて,様々な職員から肯定的な声が聞かれました。
講座別学習が始まって,教師主導の活動が,うまくはまらなくなっていたところで,これからどうしようか,ちょうど思考停止していたところだった。先生方から,困り感に寄り添った助言をいただき,ありがたかった。新しい視点から,今後の活動が見えてきた気がする。講座内での情報共有等,次からの授業の可能性を感じられた。(若手職員)
よかった。自分の頭の中ではつながらない生徒の活動が,複数の視点から考えることで,つながった。 新しいアイディアも得られ,価値ある時間になった。他の人の話も聞きたいので,次回が楽しみ。(中堅職員)
授業をする際,自分が何を考えていかなければならないのか,改めて明確になった。講座別総合の活動を通して,どのような生徒を育みたいのか,めざす生徒像が見えてきた気がする。(中堅職員)
楽しかった!あのような研修ならよい!!発表者として,思いを伝えると,温かな反応があり,様々な視点からの突っ込みによって,考えが活性化した。自分が考えている展開の方向性は,間違っていないという自信をもつことができた。子どもの願いに,寄り添っていきたい。(ベテラン職員)
もちろん,全てがうまくいっているわけではありません。「総合的な学習の時間」で,私が担当している講座では,「探究に値する問い」が,なかなか生徒に据わらず,しばらく胃の痛い日々が続きました。担当する教科の授業や学校行事に追われ,慌ただしく過ぎる日々に,正直「総合的な学習の時間」のことばかり考えてはいられない現実があります。研修時間の捻出にも,苦労しています。仮に,このような悩みを自分1人で抱えなければならなかったら・・・きっとがんばりきれません。しかし,研修を通して,一緒に考えてくれる同僚がいることを実感できました。職員室では,昨年度以上に「総合的な学習の時間」やそこで学ぶ生徒の姿が,話題になっているように感じます。そこに,何よりも,本年度の取り組みの価値があるのだと思っています。
これからも“探究”に頭を悩ます日々は続きますが,『共同設計する“探究的な学習”』をめざして,小中連携のもと,実践を重ねていきたいと思います。
*松本市での先生方の学びの様子は次の資料からもご覧いただけます
「学びの風便り」(リーディングスクール通信第4号,2023.6.30)松本市教育委員会 教育研修センター
書き手:
松本市立丸ノ内中学校 上條春城