軽井沢風越ラーニングセンター 2023年10月5日

アウトプットデイから学ぶこと(堀内 健)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2023年10月5日

(書き手・堀内 健/2024年3月派遣終了)

ミニテーマプロジェクト『発酵✕ワイン』の発表

アウトプットデイは、「プロジェクト(探究の学び)や日頃の学びのプロセスと成果に対して、フィードバックを受けること(評価)を通じた探究者としての新たな学びの機会」です。発表することを唯一の目標にするのではなく、自分(たち)の学びをよりよくするための機会であり、学年問わず風越にいる仲間の学びを共に喜んで祝う場でもあります。

〜『プロジェクトの学びでわたしをつくる』軽井沢風越ラーニングセンター編 P.176〜

 7月20日(木)。今年度最初のアウトプットデイが開かれました。

風越学園の学びを公開することで、フィードバック(次の学びにつながる真っ直ぐなコメント)をもらい、自分の学びが深まる時間。そして次の挑戦への意欲や新しいこと・人に繋がる時間です。今回、初めての地域公開。地域の人たちと知り合い、学びやプロジェクトに繋がるきっかけをつくりたい。』というスタッフ・子どもたちの思いから、風越学園初めての地域公開となりました。

 子どもたちは、この日に向けて、それぞれのテーマプロジェクトやマイプロジェクトなどの発表の準備をしてきました。テーマプロジェクトはタームの最後がアウトプットデイとなっていることが多いので、そのタームでの学びの発表が主になりますが、マイプロジェクトは年間を通じておこなっている子どもが多いため、途中の学びの発表もありました。私もこのアウトプットデイで、今私が探究している”発酵✕ワイン”について発表しました。まだまだ探究途中のため、ここに至るまでの経緯と今感じている思いやこれからの展望などについて紹介しました。ここでは、私のアウトプットデイに至るまでと、当日の様子について少し紹介します。

アウトプットデイ前日まで

 私がワインを探究し始めたのは、4月24日から。そのことについては、7月11日のかぜのーとで紹介させていただきました。アウトプットデイまでの約3ヶ月間、私はワインについて様々なことを調べてきました。その調べてきたことをまとめることから始めました。そもそもワインのことを知らない私は、以下の質問を自分に課し考えてきました。

1.そもそもいったいワインはどのように作れるのか?(製造過程)
2.ブドウの種類でどのような味の違いが生まれるのか?(ブドウの種類)
3.味の違いってどうわかるのか?(飲む・テイスティング)
4.尾崎さんのように自分で開拓していく人もいれば、企業としてやっている人もいる中で、どんな思いで作っているのか?(生産者の願い)
5.ワインと町づくりのような連携はどうあるのか?(地域連携・地域貢献)
 

 これらの質問に対して、調べたり、フィールドワークをしていくと、様々なことがわかってきました。①②については、インターネットや文献を調べるとある程度わかってきました。③は、ワインを飲んでも味の違いはわかるのですが、正直それをどう表現したらいいのか、私の味覚感覚では難しいことがわかりました。味覚のプロ・専門家(ソムリエ)さんに教えてもらうのがいいのではないかと思いました。④については、ワインフェスタなどに参加して、様々な醸造家さんと会い、お話を聞くことができました。どのワイナリーにも熱い想いがあることをお話の中から感じたので、長野県内のワイナリーのホームページを閲覧し、ワインに対する思いや願い、ワイナリーとしてのビジョンを調べ、まとめました。⑤については、まだ進んでいません。

 このような状況の中、アウトプットデイにむけ準備を進めました。スライドでまとめていく中で気づいたことが、「私の探究の”問い”とはなんだろう?」ということです。調べてわかったこと、聞いてわかったこと、体験して感じたことなど、経験から得た知識や感覚はあっても、”発酵✕ワイン”から私は何を問いとして探究しているのかわからなくなったのです。そこで、アウトプットデイでは、私自身の迷いやこれからどうしていきたいのかを発表したいと思い、スライドを作り直しました。

アウトプットデイ当日

 子どもたちのアウトプットと同じ時間帯に、私とおかつはそれぞれのプロジェクトを15分ずつ発表しました。大人9人ほどが見に来てくださった中で、子どもたちが4人。子どもたちの前で発表することは、なんだかちょっと恥ずかしくもありましたが、嬉しかったです。

 前日のリハーサルでもらったフィードバックをいかし、スライドの枚数を減らし、自分の伝えたいことに重きを置きました。一番伝えたかったことは、「私の探究の”問い”とはなんだろう?」でしたので、これまでの過程の概要を話し、そこからどう発展していったらいいのか、その時点で私が考えていることを伝えました。これまでの私は、誰かに聞けば答えが見つかりそうなものばかりでした。しかし「それで本当に探究となるのか?」と私自身が感じていました。そんなとき、地元(自宅は塩尻市片丘)の新聞の記事に惹きつけられました。『「片丘ワイン振興協議会」始動 ワインと景観魅力アピール』と題された記事。この記事を読んでいくと、私が住んでいる片丘が、これから片丘の土地とワインの力を活用し、町おこしをしようとしているのです。その土地に住んでいる自分が、その土地で何ができるか。ワインと地域。まさに今私がチャレンジしてみたくなるテーマでした。そこで「片丘ワイン振興協議会に入って、未来の片丘ワインヴィンヤードづくりに参画してみる」という大きな問い(目標)を立ててみました。

 また、さまざまなイベントに行ったとき、ワインを飲んでしまうと車を運転することができないという困り感から、「アルコールが入っていなくてもワインの味を楽しめる”ノンアルコールワイン”を作ることはできないのか?」という問いも生まれてきました。醸造家ではない私ですが、ノンアルコールワインが魅力ある飲み物になっていくには何かできることがあるのではないかというワクワク感も生まれてきました。そのような思いを発表に来てくださった方に伝えました。

 私の発表を聞いてくださった方と、その後お話をさせていただきました。ここがフィードバックにあたるところです。お話できなかった人は、付箋にコメントを書いて伝えてくれました。少し紹介します。

◎ノンアルコールワインは、たしかに面白いですね。でも、製造が大変なようです。普通のワインを作るよりも、アルコールを抜かなければいけない分、施設を作るのにお金がかかるみたいです。でも、もし美味しいノンアルコールワインができれば、ぜひ飲んでみたいです。
◎生産者さんの生き方への憧れが探究を加速したのを感じて、自分の心の動きを感じ取る力が大切なんだと考えた。酒造で蔵人見習いをしていますが、酒が人と人とをつないでいるなと、日々実感しています。
◎ワインのわくわくをこれからワインを知っていく小中高生にも伝えてほしい!その学びに地域の方々もつなげていくともっとワクワク広がりますね。
◎調べると答えがわかることの先に面白さがありそう!気づきがすごい!
◎ワインのノンアルコールワイン絶対Goodだと思います。ぶどうのおいしさ、ワインのおいしさが伝わる探究ですね。何かブドウのことで知りたいことがあったらぜひ来てください。

 このように温かいコメント、今後の励みになるコメントを頂き、ますます探究を楽しみたくなりました。

アウトプットデイから学ぶこと

 もし、アウトプットデイがなかったら、私自身の探究をふりかえることはあったでしょうか?きっと、それなりにふりかえるかもしれませんが、誰かに伝えるということを意識するかで、ふりかえり方も変わったのかもしれません。誰かに伝えるためには、自分の考えを整理する必要があります。そして、何を伝えたいのか、じっくり考えます。そういう考える時間があることで、自分の中にあるものを取捨選択したり、よりあるものを強化したりすることができるような気がします。今回私がアウトプットするにあたり、今までしてきたことが果たして探究だったのかという問いが生まれてきたのも、発表するための資料を整理していたときに、どれも答えがあるものばかりだなと思ったからです。当然、私の調べたことは、まだまだ浅いもので深めようと思えば深めることはできますが、私はワインの専門家になるわけではありません。そう考えたとき、知識として学ぶことは大切ですが、その知識をどういかすかということは、もっと大切な気がしました。アウトプットデイという場があるから、自分を見つめ直すきっかけができたのだと思います。

 フィードバックをもらうことで、得られるものは?まず、事前のリハーサルで真っ直ぐなフィードバックをもらったことで、自分のプレゼンテーション内容で何を伝えたいのか、どう伝えたらいいのかが明確になってきました。相手に伝えるということは、相手にわかってもらうことも大切な要素なので、聞いてくれる人に伝わらなければ意味がありません。そう考えるだけで、プレゼンテーションの内容を吟味しますし、伝えたいことに重きを置くことができます。次に当日の発表でフィードバックをもらったことで、私の思いが伝わった喜びやテーマにかかわる情報を得ることができたり、これからの探究の進め方のアイディアをいただいたり、とても励みになりました。

 アウトプットデイという場があることで、私自身の立ち位置が見えたり、今後の意欲につながったり、学び手としてとても貴重な体験ができるなと感じました。風越学園には、このようなアウトプットデイが年に4回程度あります。こういう体験を子どもたちが繰り返すことは、自分を見つめ、他者との関わりの大切さに気づく素敵な場だなと思います。今回は、私自身の発表があったため、子どもたちの発表をほとんど見ることができませんでした。次回のアウトプットデイでは、子どもたちのこれまでの学びがどのように進んできたのか、何を大切にしているのか、じっくり見てみたいなと思います。

#2023 #軽井沢風越ラーニングセンター

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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