開校までの風越のいま 2020年3月16日

かぜあそび・おわりの日によせて

坂巻 愛子
投稿者 | 坂巻 愛子

2020年3月16日

3月13日(金)に1年間限定の認可外保育施設かぜあそびが、おわりの日を迎えました。春から小学生になる年長さんたちだけでなく、全員がかぜあそびからは卒園です。元気にいってらっしゃい、の気持ちを込めて「いってらっしゃいの会」としました。次の文章は、保護者のみなさんにお渡ししたお便りです。


3月のある日、ビュービューと冷たい風が吹き抜けるくろまるとちびまるの間の<風の通り道>で木片とやすりを手にして「これむずかしい、むずかしい…。だんだんまるくなってきた」と、ぼそぼそと声にしながら剣作りに没頭しているタイシンくんがいました。「ぼく、ひとりでやってるんだ、できるかな、きっとできる…。」 タイシンくんの心の内は行ったり来たり…。
その手は休むことなく板を削り続けていました、そして「できた!」と、納得がいったのか満足した表情で剣を持って戦いごっこをしている数名の輪へと入っていきました。昨年の春、「やらない!みている!」と言うことが多かったタイシンくんが自分の手で確かに積み重ねた経験から新たなチャレンジをしている姿がありました。私は声をかけることなく、「できたね、うれしいよね。」と、心の中で一緒に喜びながらしばらく後ろ姿に見入っていました。
ひとりひとりにとって、このかぜあそびで過ごした1年はどんな日々だったのでしょう…。

4月、それぞれの場からこの森に集まり、かぜあそびが始まりました。
初めて家庭から小さな社会に出た子もいれば、幼稚園ってこんなところ…と、イメージを持ち文化を抱えてきた人もいる中で、そのさまざまな思い、考えの中で、子どもも、大人も大きく揺れ動いた1年だったように思います。
私たち自身、大きく揺れた1年でありました。
『いいことって、どんなこと』という絵本があります。女の子が「いいことがある」と聞いて、「いいことってどんなことだろう…。」と森に出かけていく。でも「いいこと」は誰も教えてはくれず、最後に自分の足で探し見つける、というお話です。卒園するこどもたちに「いいことをみつけられますように…。」という願いから、この時期になるとよく読んでいた本です。

いってらっしゃいの会の終わりに「いいことって、どんなこと」を読みました

かぜあそびにとっていいことってどんなこと? 目の前のこどもにとっていいことってどんなこと? そんなことをこの1年模索し続け、何度も話し合いを重ねてきました。
スタッフ1人ひとり、子ども観は様々、信念もそれぞれ…。それぞれの違いから生まれた問いを抱えてきました。そんな中で自分自身の大切にしたいことってなんだったの? ということに向き合ってきました。そしてそこで見えてきたのは、私たちそれぞれが持つ枠組みでした。自分はどんな枠組みにとらわれているのだろう…。それってホントに大事なことなのだろうか…と、問い続けてきました。
例えば、昼食はそれぞれのタイミングに任せているがそれで良いのか、ということはしばらく悩みました。幼児期、生活のリズムをつくることは大事にしたいこと、だから毎日だいたい同じ時間を設定したほうが食事にも集中できるのではと考えていました。
悩みながら子どもたちと日々を送っていく中で新たに生まれた問いは、「子どもたちそれぞれが決めたお昼の時間がその子にとって良いタイミングなのだろうか?」 その問いへの答えはすぐには出ず、できることは「子どもと大人で共に考え続ける」ということでした。
「いま、ここ」というその瞬間を生き、変化していく子どもたちの<今>をどのように見つめ、どう判断し、行動するのかということが大事で、こうあるべきという決まりをつくることではありませんでした。そしてスタッフ間でも対話を重ねながら、新たな視点を持つことが私たちにとって必要なことでした。
「いいことって、どんなこと?」 それは子どもと今を一緒に生きる中で「いいこと」を一緒に見つけたいと願う者たちと応答しあいながら見つけられるもの。今はそんな風に思います。

先日、風越スタッフから「かぜあそびで出来たルールってある?」と、聞かれて、「あれ、ルールは無いかも」と、気が付きました。振り返ると子どもたちは、互いの快、不快を感じあい、ぶつかって、少しずつ心地よい在り方をみつけてきた。そんなふうに関係性の中で、互いに折り合いを重ねて、かぜあそびというコミュニティを築いてきたように思います。
先日、ユウセイくん、ケイスケくんが鬼ごっこをしている最中、「はんそくだよ!」と、ユウセイくんに言われたケイスケくんが大泣きになりました。ユウセイくんはケイスケくんに「わかったよ、じゃあ、こっちはどう?」と伝えると、ケイスケくんはその話しを、涙を止めて頷いて聞いていました。ケイスケくんは、受け止めてもらえたという安心を全身で感じているようでした。

それぞれの在り方を受け止める、そしてどうしようかな…、と考えるようになってきているのではないだろうか…。
そこには関わり合いのなかで育まれている確かなものを感じます。多くを言葉で表現するわけではない時期、子どもたちはお互いに表情やしぐさで相手の思いをみつめているようです。こういう子どもたちの姿をみると、言葉を持つほうが不自由なんじゃないかと思えるほど、身体全体、心全体で表現しあうやり取りのなかで生まれる営みは豊かだなと感じます。

子どもたち一人ひとりに渡した、いってらっしゃい証書には

春の風と共に集まったかぜあそびのみんな
春夏秋冬、鳥井原の森でたっぷり遊んだね。
笑って、怒って、泣いて、沢山ぶつかって、仲間とつながった。
あなたのままで、風にのって新しい世界にいってらっしゃい。

と記しました。「一緒に育ってくれてありがとう」の思いと、「これからも見守っているよ」の気持ちが、子どもたちへと伝わるといいなあと思います。


それぞれのタイミングでかぜあそびに出会い、それぞれの遊びを通して自分を表現して、仲間と沢山出会ってきた日々。これからもそのままの姿で心がわくわくする風にのって、健やかに育ってほしいと願っています。
新たに始まったかぜあそび、保護者の皆さまは心配事も尽きなかったのではと思います。今日の日まで私たちの歩みを支えてくださり、見守って下さり心から感謝申し上げます。これからも「子どもたちにとって良い未来を」と願う同志として、つながっていられたら幸いです。
そして、子どもたちと共に、子どもの世界をのぞきながら私たちもわくわくしながら夢を描いていけたらいいなと思います。
かぜあそびを巣立っていく一人一人の子どもたちに、そして保護者の皆さまの歩みが幸せな時間を紡いでいく日々となりますように…。

坂巻 愛子

投稿者坂巻 愛子

投稿者坂巻 愛子

子どもの世界は面白くてワクワクします。一人ひとりの「おもしろい!」の世界を大切に、実体験を通して深め、拡げていけたらと願っています。そして、暮らしの中で見つける小さな喜びや気づきを共に積み重ねていけたら幸せですね。

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