2020年9月10日
風越学園では8/24から夏休み明けの学校生活が始まった。初日はホームごとに過ごして、僕のホーム(異年齢学級)はのんびりと川遊び。そこからの準備期間を経て、8/31から新しい体制が始まっている。後期(3〜7年)の子ども一人一人にパートナーがついたり、これまで基本的に異年齢学級で進行していた授業が、学年の近い集団になったり。夏休み期間の、それまでの体制の成果と課題についての議論をへて、大胆に試行錯誤ができるのは、まだ生まれたばかりの風越学園の強みの一つである。
国語の授業も大きく変わる。これまで、基本的には小学校の先生と同じくホームスタッフが「全教科を教える」体制だったのを、国語か算数のどちらかにスタッフを振り分け、教材研究や週1回の研修の時間をとるようにした。子どもとの関係性を作れれば良い授業になるわけではないことを、教材研究や授業準備の大切さを、僕たち中高の教員はよく知ってる。今まで時間の余裕があまりになかったので、時間を作って、授業の質を上げる方法である。
僕自身にとっても、大きな変化の時期。一つは、これまで「何曜日何時間目」と決まった時間割で実施していた国語の授業を、週1回を除いて、子どもが自分で計画を立てて決めた時間にライブラリーにやってくる形式にしたこと。つまり、子どもが例えば「今週は火曜2時間目と木曜5時間目に国語をやろう」と決める。僕はずっとライブラリーに待機して、それぞれの時間にやってくる子どもに対応する。そんな授業の進め方である。毎回くる人数もメンバーも違う。当然、一斉には指導できないから、個々への対応がメインになる。
これって、「自分の学びを自分で作る」ことを目指す風越学園が、本来目指している方向に、時間割上も一歩近づいた、というわけ。まだ2日目だけど、子供たちが自分で責任を持って選択することの価値や、こちらも一回の授業の人数が少し減るので、一人一人をより丁寧に見られる良さは感じる。一方で、一斉に何かを伝える機会が非常に限られたり、慣れずに来るのを忘れる生徒も出てくるなど、「教えやすさ」の観点からは、前の方がやりやすい。一斉授業を可能にする教室の環境構成って教員の権力の一つだけど、それを手放した影響をうっすらと感じるのも事実(笑)。
もう一つの僕の変化は、今回から特定のテーマプロジェクト(プロジェクト学習の授業)の担当から外れたこと。外れることで、いろいろなテーマ・プロジェクトに関わって、そこに国語の学習要素を自然に埋め込む活動に関われるようになった。パンフレットを作ったり、インタビューをしたり、お礼状を書いたり…。説明的文章や実用的文章を書くこと、話すこと・聞くことの学習は、プロジェクト学習の文脈に埋め込まれてこそ「ごっこ遊び」ではなくなる。僕自身は良くも悪くも、どこまでいっても一介の国語教師であることをやめられない(やめたくない)ので、こういう形でプロジェクトの設計と実行に関わるのが一番自分を活かせる。こちらも、良い仕事をしたいと思う。
いずれにせよ、授業のやり方が大きく変わった9月の授業。まだ慣れない子どもたちも大変そうだ。この取り組みは、当面は10月中旬までの「実験」。自信があると言えば嘘になるけど、成算がないままやっているわけでもない。とは言え、当面は修正が相次ぐ日々だろう。あまり短期間で成果を判断しようとせず、大人が支援しながら子どもが自分の学習計画を立てる良さを信じて、大きく踏み出したい。