だんだん風越 2020年9月16日

「~したい」の風が吹くと。(友廣 さやか)

かぜのーと編集部
投稿者 | かぜのーと編集部

2020年9月16日

(書き手・友廣さやか/22年12月退職)

軽井沢風越学園にジョインして早半年。事務局スタッフとしてデスクワークが中心の勤務をしつつも、少しでも子どもと関わりたいなという想いで、プロジェクトやランチにちょっとずつ乱入する日々を過ごしています。やりたいことを見つけて熱中する子どもの姿を見るたびに、ただただ単純に「すごいなぁ」と感心してしまう毎日です。

というのも、もし「自分のやりたいことをやっていいよ」と言われたら、私自身、やりたいことを見つけて熱中できる子どもだったかなと考えてしまうからです。やりたいことはたくさんあるはずなのに、なかなか動けない、どうやっていいかわからず立ち止まってしまう…そんな自分の姿を想像して、時々胸が締め付けられるような気持ちになることがあります。

だから、セルフビルドの時間になんとなく所在無さそうにしている子を見るとつい声をかけてしまいます。

「最近どう?」
「何もしてない」
「この前やってたドラムはどうしたの?」
「あーもうやめた」

そんな会話をするたびに、その子が何か見つけられるといいなと思う自分と、見つけることが目的じゃないよなぁと思う自分がいて、「今、私ができることはなんだろう」といつも模索しています。

学校を見回すと自分のやりたいことを見つけている子もたくさんいます。でももしかしたら、“見つけているように見える”だけなのかもしれないと感じることもあります。与えられたテーマの中で考えるとしたらこれ、とか、友達との関係性で考えるとしたらこれ、とか。

もちろん、所与の条件や関係性の中で選んでいくことは悪いことではないし、その中で出会ったり深まったりすることもあると思います。だけど、自分のハンドルを自分で持って気の向くままに進んでいることと、なんとなく日々流されることは大きく違うと思うから、できればそこは意識的にいてほしいな。願わくば、ベターな選択の積み重ねじゃなくて、ベストなやりたいことを見つけて没頭する経験をしてほしいな。そんなことを考えて、やっぱり「今、私ができることは何だろう」という自分への問いとなって返ってくる日々です。

そんななか、子どものセルフビルドを更によりよいものにするための一歩として、9月から「パートナー」という仕組みが始まりました。子ども一人ひとりに担当するスタッフがつき、その子の「~したい」にかかわっていきます。

担当するスタッフは「サポート」とか「伴走」という言葉をよく使っていますが、その通り寄り添うような存在として子どものまなびや育ち、もしかしたらもっと深いところにかかっていく可能性を秘めている試みだと感じています。

(余談ですが、このパートナーをどうするか、ということについて後期スタッフは夏休みを挟んでかなり長い時間を費やして全員で議論していました。子どもを中心において徹底的に考え抜くスタッフの姿にはいつも脱帽する思いでいますが、何事も全員が納得するまで話し合おうとする風越スタッフのこの習慣は内部でも時々賛否が分かれます。文化や暗黙知を育むためにはこういう時間の積み重ねが必要なのかもと思う一方、もうちょっと効率的にできるのでは…と思うこともあり、とても悩ましい問題です。でもまだ学校は始まったばかり。私たちの「はたらく」もこれからじっくりつくっていきたいと思っています。)

セルフビルドを一緒につくるパートナーの仕組みがスタートし、自分の中で、スタッフが子どもに「伴走する」イメージが見えてくると同時に、スタッフが子どもの存在関係なしに「走り回っている」イメージが浮かびました。

というのも、私の人生を振り返ってみても、自分がぐっと変わった時や成長した時はいつも誰かの存在がありました。でもその時の「誰か」は寄り添って伴走してくれるだけの存在ではなかったはず。圧倒的な力の差を見せつけながら目の前を猛スピードで走り過ぎて行った“突風”のような存在だったり、ものすごい熱量で訳も分からず周り巻き込んでいった“台風”のような存在だったりしたことを思い出したからです。

スタッフ自身が、自分の「~したい」を貫いて本気であそび、まなび、失敗し、楽しんで、学校中を走り回ってみたらどうなるのかな。

夏休みをまたいでアオダイショウのはく製作りに没頭するココロは、そもそもがちゃのイタチの解剖を見たことがきっかけだったし、昼休みに突然始まるとっくん、こぐま、ひっきーによるミニライブをみた7年生のフウダイは、その日のうちにギターを始めたらしい。校庭に「生物が集まる池」を作ろうとしているシンノスケに「私、サウナ作りたいんだけど、シンノスケの池を借景させてもらいたいから協力する。手を組もう!」と声を掛けたら「は?サウナ?シャッケイ?」ってポカーンとしてたっけ。

すでにその兆しは見えつつあります。子どもにとって一番身近な存在であるスタッフそれぞれの「~したい」が学校中にいろんな風を吹かせて(個性的でパワフルなスタッフばかりなのでただの風では済まない可能性も大いにあるけど)、その風が子どもたちの中に眠っている、まだ本人さえも気づいていない「~したい」を誘い出す…。それも風越のパートナーの一つの在り方として根付いていくといいなと思っています。

でもそれには、スタッフ自身の余裕と余白が絶対に必要。スタッフを支える事務局として「今、私ができることは何だろう」という問いは、スタッフがのびのびと風を吹かせられるような「組織の仕組みと文化をつくりたい」という想いになり、それができる自分でいれるように日々の振り返りを習慣化してみたら「かぜのーとの記事を書いてみたい」(いまここ!)というこれまでの自分からは想像もできなかったような突風が吹いて、この勢いに乗ってそろそろ食欲の秋だしファイヤーピットで「秋刀魚を焼いてみたい!!」というおいしい匂いのする風に変わってきています。

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かぜのーと編集部です。軽井沢風越学園のプロセスを多面的にお届けしたいと思っています。辰巳、三輪が担当。

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