だんだん風越 2020年7月16日

「面白そう、やってみたい!」からはじまる場所

勝山 翔太
投稿者 | 勝山 翔太

2020年7月16日

「りりー、今日もダンスやろうよ!」

お昼ごはんを食べ終えて、YY(幼稚園エリア)に戻ろうとすると後ろから声がする。

「りりー、今日もダンスやろうよ!」

ソノ(2年生)だ。ソノは僕のホームではないけれど、毎日ダンスで会う。その後ろからワカコ(1年生) もやってきた。

「昨日のステップできたよ!ほら!」

ホームベースの前で突然踊りだすワカコ。その様子を見ていたソノも一緒に踊りはじめる。(昨日はできなかったのに今日はできてる!きっと家で練習してきたに違いない…)

「うん、できた!じゃ、先行ってるよ〜!」

ワカコはそう言うとソノと一緒に体育館の方へ走っていった。

体育館の入り口に行くと、すでにダンスをしたくて来ている子、その様子に誘われてきた子、観客としてきたり窓辺にあるソファーに休みに来る子、体育館に遊びに行くために通る子など、様々な子どもたちが自由に集まっていた。

マナ(1年生)が僕がきたことに気づいて走り寄ってくる。

「遅いよ!もう。ほら、やるよ!音楽流して〜」
「ごめんごめん。OK、流すよ〜!」

いつものように鏡の前の椅子にスピーカーを置き、音楽を流し始める。音楽がかかった途端に体を揺らしたり、ジャンプしたり思いおもいに体を動かす。これが最近の昼休みの様子。

ここでダンスがはじまったのは、今から一ヶ月前。ある昼休みにスピーカーを持ってきて、音楽を流したところから。そして、そのきっかけはゴリさんの一言だった。

「りりー、ここでダンスできるよ!」

僕は、ダンスで年齢もホームもとびこえてつながることができるはず!と思っていたものの、どこか自分の中でタイミングがつかめず、はじめられずにいた。ゴリさんの一言もあり、悩んでいても仕方ない、僕ができる「つくる」で新しい場所をつくってみよう!とりあえず、やってみよう!これがはじまりだった。

出会って、憧れて、変わっていく

一番はじめに流した曲はパプリカだった。振り付けも曲もメジャーでなんとなく踊れるダンスをしたかったからだ。

「あっパプリカ!知ってる!」
「私も〜!」
「まがり くねり はしゃいだみち〜♪」

音楽に誘われて集まってくる子どもたち。はじめは小さい子ばかりだったが、お昼を食べ終えて大きい子も集まってきた。一人の女の子がダンスに気づき、近づいてくる。

「可愛い〜!ダンスしてるの?」

7年生のミサトだ。これはチャンス!と思い、声をかけてみた。

「ミサト、パプリカ踊れる?」
「ん〜多分。」

小さい子に混じって踊りはじめるミサト。同じダンスでも、見え方や表情が変わることで違ったダンスに見える。動きの大きさや体の動きをみて、思わず笑顔になったり、憧れて見入る小さい子たち。踊り終えると小さい子たちから「もう一回!」とアンコールがかかり、昼休みが終わるまでずっと踊り続けていた。

踊り続ける子たちからそっと抜けて、ミサトが声をかけてきた。

「りりー、私やりたいダンスあるんだよ。」
「どんなダンス?」
「2002ってやつなんだけど知ってる?」
「どんなダンスだろう。知らないや」

2002を知らなかったので調べてみた。するとSNSで流行っているAnne Marie の「2002」という曲に合わせたダンスということがわかった。

「これやったことないから振り付け覚えておくね」
「じゃあ明日もやろうよ!他にもやりたい子いるから連れて来るね!」

そんな出会いからはじまり、次の日からサナとサクラコもきて、7年生3人でダンスがはじまった。

この7年生のダンスがはじまったことで、一気に雰囲気が変わっていく。小さい子たちは楽しく踊るパプリカは続けつつも、7年生のダンスに憧れてカッコよく踊りたいという思いも持ち始めたようだった。7年生のいない間に、ダンスを思い出しながら真似をするように繰りかえす。7年生がきたら一緒に踊ってみる。

みたことのないものとの出会いや憧れが「やってみたい」を生み、子どもたちの姿がどんどん変わっていく。

僕のダンスのはじまりも「やってみたい」からだった

僕がダンスをはじめたのは、大学3年生のとき。当時、バレーボール部を立ち上げ、春季の大学リーグの真っ最中だった。バレーボールをやりつつも「いつかダンスをやってみたい」と思っていた。いつかっていつだろう、きっと今しかない。えいやとはじめてしまえと思い、一人でやってみることにした。

はじめは深夜のダンス番組を録画し、何度も見返して真似をする。不格好な「できない」を繰り返す日々が続いた。それでも「できない」自分にとって「できる」が増えていく毎日が楽しくて、少しずつハマっていった。その後、仲間を集めダンス部を立ち上げ、舞台をつくり、たくさんの大会やコンテストにも参加した。それからダンスをはじめて12年。“やってみたい”からはじまったダンスは今も続けている。

僕が風越学園に来る前に考えていたことは、子どもの“やってみたい”からはじまることを一緒に楽しみたい!ということだった。

風越学園の日常には「やってみたい、面白そう」に出会える場がたくさんある。それはダンスでも良いし、もちろん違うものでも良いと思っている。どんな入り口でもいい。“やってみたい、面白そう”と思うことにとことん挑戦してほしいと思う。

ここではじまったダンスはプロジェクトや部活ではない。だからこれからどんな場所になっていくのかまだ先は見えないが、今日、7月29日にダンス発表をすることが決まった。

僕自身も自分自身の「面白そう、やってみたい」を持ったまま、子どもたちと一緒に踊ること、つくることを楽しんでいきたい。

#2020

勝山 翔太

投稿者勝山 翔太

投稿者勝山 翔太

長野県生まれ。
身体や絵、色などで表現したり、つくったりすることが好きですが、これといって決まったスタイルがあるわけではありません。そのときの自分が「心地よい」とか「よりよい」と思うカタチで表現するようにしています。 風越学園にくるまでは“健康”というキーワードを軸に、ちがった分野の世界をわたり歩いてきました。学生時代からのテーマは『究極の健康づくり』、自分らしくいることで幸せな毎日を過ごしたいと思います。
ダンスを通して子ども〜大人まで伝えたり関わったり、舞台に作品を出したり、自分自身も大小様々な大会に現在もチャレンジしています。かたまった表現にならないように新しいものに出会ったり、こわしたり、つくることが好きです。

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