2019年7月13日
『はらぺこあおむし』( エリック=カール、偕成社)
(アマゾン)(楽天ブックス)
「ねぇ、どうして空は青いの?」
「たしかに。どうしてだろうね。」
すると子どもたちは、う〜ん…としばらく考えて
「分かった!空には色を塗る人がいて、青色にぬってるんだよ!」
「ちがうよ、きっと海が青いから空に色がうつるんだよ」と続けて別の子が言います。
「じゃあどうして夕方は青くないの?」
思いおもいに感じたことを、自分の言葉で話す子どもたち。
その世界はどんどん広がっていきます。
「うんうん、そうだね。でもどうしてだろうね、不思議だね。」
興味、関心、疑問、もやもや、好きなこと…いくつものことがつながって、集まって、広がっていく中で“問い”は生まれていきます。
「実はね…」と答えたい時もありますが、子どものつぶやきからはじまる世界を一緒に過ごしてみます。
そこにはどんな世界が待っているんでしょう。
子どもたちそれぞれが感じる色とりどりな世界…
ワクワクしますね。
さて、僕の紹介したい絵本は『はらぺこあおむし』。
満月の土曜の夜から始まり、日曜の朝の太陽をむかえ、月、火、水……と過ごし、ふたたび日曜がやってくる。 1週間の曜日や、太陽と月が関係する1日に沿ったストーリーは数の概念や自然のしくみを教えてくれます。
とてもシンプルなストーリーですが、どのページも色とりどりの鮮やかな世界が広がっているところも1つの見所です。
見開きでまず目を引くカラフルな水玉。
「どの色が好き?」と問いかけると…
「これ!」「私はこっち!」
と一気に絵本の世界に入っていきます。
そして、1週間後の“どようび”。
10個の食べ物が見開きいっぱいに広がります。
子ども大人もワクワクする場面をリズムよくどんどん読み、最後に
「それから…すいかですって!」
と溜めて読むと、一気に盛り上がります。
読み終わりに思わず子どもと顔を見合ってしまうことも。
さらに右下の
「そのばん あおむしは おなかが いたくて なきました」へとつながり、
場面が一変します。
あおむしのなんとも言えない表情から、話はサナギからチョウヘ変身を遂げる終盤へむかいます。
僕自身、保育者として「はらぺこあおむし」を読んでいた時、こんなことがありました。
いつもよりも時間があったので、ゆっくりと読んでいたら、サナギから孵化しチョウになるシーンでユリがこんなことをいいました。
「あっ!チョウの羽の色が食べたものが色になってる!ほら、だってあれはチーズだし、ピクルスだし」
すると隣に座っていたアツシが羽を指さして、
「えっ、でも上の青い色の食べ物なんてないよ」
それを聞いてアヤカも、
「きっと身体の中で食べたものが混ざって血になるんだよ」と助け舟を出すようにいいます。
その言葉にはっとしたユリは、
「そうだよ、いろんな色の食べ物を食べて、綺麗な色を選んでおしゃれしたんだよ、きっと!」と笑顔。
アヤカ「じゃあきっと女の子だね」
ユリ「うん、そうだよきっと」
やはり納得できないアツシは、
「違うと思う。俺、家で調べてくる」と言い黙ってしまいました。
僕は、このようなその場のやりとりにワクワクするのです。
こんな子どもたちのまっすぐな感性と広がる世界に感心しつつ、どうやって一緒にその世界を過ごそうか考えてワクワクするのです。
僕は絵本に出会うことは新しい世界の入り口だったり、見え方や感じ方がぐっと変わるためのきっかけだと思っています。
特に大好きな家族と読む絵本はなおさらです。
何度繰り返しても面白いし発見がある。
この素敵な一冊をぜひ、親子で色んな読み方を試してほしいと思います。
いつもの調子で読んでみたり、ゆっくりじっくり読んで不思議を見つけてみたり、子ども自身がページをめくって仕掛けを楽しんでみたり、新沢としひこさんの歌に合わせて読んでみたり…。
きっといつもと違った絵本の世界に出会えます。
長野県生まれ。
身体や絵、色などで表現したり、つくったりすることが好きですが、これといって決まったスタイルがあるわけではありません。そのときの自分が「心地よい」とか「よりよい」と思うカタチで表現するようにしています。 風越学園にくるまでは“健康”というキーワードを軸に、ちがった分野の世界をわたり歩いてきました。学生時代からのテーマは『究極の健康づくり』、自分らしくいることで幸せな毎日を過ごしたいと思います。
ダンスを通して子ども〜大人まで伝えたり関わったり、舞台に作品を出したり、自分自身も大小様々な大会に現在もチャレンジしています。かたまった表現にならないように新しいものに出会ったり、こわしたり、つくることが好きです。