2019年4月14日
『魔女の宅急便』(角野栄子、福音館書店)
四月。新生活。新しい出会い。ワクワクと不安。いろんな想いを抱いて軽井沢へやってきました。
私のそんな気持ちにぴったりの本を紹介します。
この物語に出会ったきっかけは、本ではなくて映画でした。原作を読んだのは大人になってからのこと。私の大好きな物語です。
主人公のキキは13歳。魔女になることを決意して、魔女のいない街へ修行に旅立ちます。旅立つことを決めたとき、相棒の魔女猫ジジがキキに言います。
「どうなることやら、心配だね。決めたらすぐの人だから」
ジジの心配をよそに、キキは自信満々に答えます。
「あら、そう。あたし、心配なんてしてないわ。心配はおきたときすればいいのよ。今は贈りもののふたをあけるときみたいにわくわくしてるわ」
このセリフ、すごくキキらしいなって思うんです。そして、何が起こるかわからないことに怖がるよりも、わくわくしちゃうキキに共感します。
私も軽井沢風越学園ができると知ったとき、どこからともなく湧き上がる興奮を抑えることができませんでした。「不安なことはないの?」って聞かれることもあったけれど、不安よりもわくわくが勝ってしまう。そんな気持ちで軽井沢風越学園に飛び込んだ私は、キキに似ているところがあるのかもしれません。
キキが修行の町に選んだのはコリコの町。魔女が長い間いなかった都会のこの町に降り立った時、キキは人々の冷たい反応にショックを受けます。魔女は悪いことをするんだ、と言う人もいました。キキが生まれた町の人は、魔女と暮らすのを喜んでくれたのに。すっかり“しょげりかえる”キキ。そんな中、「グーチョキパン店」のおかみ、おソノさんに出会います。
おソノさんはキキが魔女だなんてことは全く気にせず、
「あたしはあなたのこと、気に入ったわよ」
とキキを丸ごと受け入れ、住む場所を用意し、お届け屋さんをやりたいと相談したキキに、「魔女の宅急便」というお店の名前まで考えてくれました。
誰とでも人と人として向き合うことができるおソノさん。私はそんなおソノさんが大好きです。
キキはコリコの町で、宅急便の仕事をしながらたくさんの人に出会い、成長していきます。失敗もするし、悩みもするけれど、そこから立ち直る強さをもっています。軽井沢風越学園に関わる大人もそういうしなやかさをもっていたいです。そして軽井沢風越学園という場所を、大人も子どもも、失敗を恐れず挑戦できる場所にしたいと思います。その人であることを丸ごと認め合え、じっくり時間をかけて自分を成長させられる場所。そんな場所をつくるのは軽井沢風越学園に関わるみんななんだなって思います。わくわく。
さて、映画はキキの魔法が弱くなり、うまく飛べなくなったり、ジジと話せなくなったりしてしまうけど、友達の「トンボ」のピンチを、必死に魔法の力を振り絞って助けたことがきっかけで魔法の力が戻り、元気にコリコの町を飛び回りながら宅急便の仕事に励むところで終わります。
実は、原作はこの後のお話の方がずーっと長いんです。
キキが35歳になるまでの壮大なお話が全6巻に渡り展開されます。
6巻でキキはお母さんになり、(誰と結ばれたかは、なんとなくわかるかな?)娘のニニもまた、キキのように魔女の修行に旅立っていきます。
本来なら、結婚したら魔女猫とはお別れというのが伝統的な決まり。でも、どうしてもジジと別れたくなかったキキは、伝統をぶち壊して一緒にいることを選びます。これもキキらしいエピソード。伝統だから、決まりだからってことにとらわれず、自分の意思を貫く芯の強さを感じます。
(余談ですが、ジジも結婚して18匹の子どもに恵まれます。しかも全部白黒の水玉模様!)
「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです」
1989年に映画が公開された時につけられた糸井重里さんのこのキャッチコピーは、キキを本当によく表しているなあと思います。
魔女の宅急便の登場人物はみんな魅力的だけれど、やっぱり私は、キキのような人でありたい!自分を信じてまっすぐに、失敗してへこんでる自分もちゃんと受け止めて、そこから新しい一歩を踏み出す強さをもっているキキのような人でありたいです。