2020年3月25日
ファシリテーションについて体験的に学ぶ中で依田が考えていることを書き、それを読んだ甲斐崎がコメントを書きました。ファシリテータートレーニング後のふりかえりでは、こんなやりとりをしています。
教室での子どもと教師の関係を考えるとき、「教える人」「教わる人」って、なんか違うなぁと感じていました。
授業の中で、子どもが私の想定を超えていくことなんてよくあるし、その瞬間、学んでいるのは子どもであり、私自身でもあると思うから。「あー、そう考えるんだ。そう感じるんだ。」と、子どもの発見は私の発見でもあります。一緒に学んでいる、と思う。
例えば、私は音楽の授業で子どもと音楽を聴くときに、子どもをよく観察します。すると、音や曲の感じに合わせて子どもが微妙に体を動かしていたり、表情が変わったりすることがあります。そういうとき、「どうしてそういう動きをしたの?」と尋ねてみると、「え?動いてた?」と全く無意識なことが多い。「動いていたよー。もう一度かけてみるね。」と言って音楽をかけると、やっぱり同じところで動く。「あー、この音に合わせて自然と動いちゃっていたんだ。」と、見えないはずの音が見えるようになって、場に共有されます。もしかして、こういう介入はファシリテーターっぽいのかな。
事前に予測しきれないけれど、確かにその場で起こる学びがあって、それが本当に面白い。私にとって授業は、教える人、教わる人を超えて、発見を共に楽しむ時間です。
「っぽい」じゃなくてファシリテーションだと思います(笑)。「気付きを促す質問」です。この後、さらに質問して「なんで自然と動いちゃうんだろう?」を追求したり、曲ではなく自分自身についての気付きを深めていくこともできますね。別の曲をかけて違う体験を積み重ねられるような場をつくるのもおもしろそう。ファシリテーターの観察によるひとつの発見が、その子の気付きを生み、新しい「何か」に出会うことになる。そういう関わり方や場のつくり方がファシリテーターのとっても大切なところ。「発見を共に楽しむ時間」という捉え方をしているところは、もうどっからどう見ても「ファシリテーター」ですね。
トレーニングでファシリテーター役を担当する依田
なるほどー。自分自身についての気付きを深めていく…。例えば、「私は曲を聴くときに、音に合わせて体を動かしながら聴くのだな。」とかでしょうか。他の曲をかけても、同じような聴き方をしている自分に気付いたり、他の人の自分とは違う聴き方を知って試したりすることで、いくつもの発見がありそうです。
先ほど、「発見を共に楽しむ時間」と書いたのですが、そういう時間にできるときとできないときがあるのも事実です。気持ちや在り方だけではない、技術の部分があるのだろうなと思っています。
そうですね〜、体が動いてしまうということは目に見えて分かることなので、自分自身についての気付きを深めるには、もっと見えないところに目を向けた質問になるかなぁ。「体が自然に動いてしまうってどういうことなんだろう?」とか。本人は動いたことに気付いていなかったのだから、そこを深掘りするとおもしろいかもしれません。そこからコンテンツ(*1)に向かうなら、「音楽ってどういう役割があるんだろうね?」、プロセス(*2)に向かうなら、「どんな音楽の時(曲自体、聞き方、状況、環境など)に体が自然と動くのかな?」、自己内面(*3)に向かうなら、「音楽って、あなたにとってどんな存在?」とか。ちょっと1回聴いただけの体験では飛躍しすぎて振り返れないかもしれないけど、何回かいろんな曲を聴く体験をした後で質問してみるといいかと思います。
後段の部分、「共に楽しむ」ことを学習者側が望んでいるかどうかがたぶん大事なんだと思います。
音楽と自分の関係に目を向けるってことかな。たしかに、そうやって振り返っていく経験を重ねることは、指導要領に記されている「生活や社会の中の音や音楽と豊かに関わる資質・能力」を育むことにつながるなーと思いました。
「共に発見を楽しむ」ことを学習者側が望んでいるかどうか。「共に発見することのよさ」を感じる体験が重要ですね。そのためには、「どのように学んだか」という学びのプロセスについて振り返ることの積み重ねによって、学習者自身が実感していることが大切そう。私はファシリテーターとして、そういう学びの場をつくり、どういう存在としてそこにいるか、ということ意識していきたいです。
友だちと音楽について語り合ったり、バンドを組んだり、みんなでカラオケで歌いまくったり、ピアノやバイオリンのレッスンで先生や友だちと一緒に楽しんだり……いろんなところで子どもたちは音楽を楽しんでいるよね。そして、そのどれにも、必ず「相手」がいる。共に音楽を楽しむ仲間がいるよね。先生はその「相手」になれないかなぁ。なれると思うんだよね。先生と生徒ではなく、ファシリテーターとして子どもたちの隣にいること、どういう存在としてそこにいるのか、一緒に考えていきましょう!
*1 コンテンツ…内容や結果のこと。ふりかえりでは、何を得たか得なかったか、理解したか否かなどを問う。できたか、できなかったかをふりかえると、二面的評価に陥りやすく次へのアクションプランが生まれにくい。
*2 プロセス…プロセスとは、課題に対してどのように関わったかということ。その過程。できるようになった過程(できなかった過程でもOK)をふりかえることで、「次はどうする?」という問いかけを経て、次へのアクションプランが生まれやすい。
*3 自己内面…コンテンツもプロセスも内省した後、「そういう自分についてどう思う?」という問いを投げかけると、自己内面を省みることになる。直近で関わった課題だけでなく、様々な課題に対して汎用性をもつアクションプランが生まれることになる。