開校までの風越のいま 2019年8月19日

練習期間

山田 雄司
投稿者 | 山田 雄司

2019年8月19日

東京の私立中高から軽井沢に移住してきてはや5ヶ月。新生活,車生活,新婚生活にも慣れてきた。しばらくは別居婚だけど。ただ観光地・軽井沢も本領を発揮してきているし,その後は冬が来る…。とまだまだ私生活にも不安はあれど,肝心なのは学校づくり。

4月当初,岩瀬・本城から,「つくり手」として集められたことを告げられた。それはもちろんそのつもりではあったけど,2人の任せっぷりは,自分の予想以上だった。「あぁ,そこまで自分たちで決めるのか!」の連続。

これまで,「設定されたゴールに最短で向かう」みたいなところでやってきた自分としては,どこがゴールかすら自分(たち)で決めるのは予想以上に掴めない話で,なんとなく話し合って,なんとなく進んできてしまったこともあったなあ。

また「目の前に子どもがいない中では仕事がしづらい!」と嘆く他のスタッフを見ながら,そこまで嘆けない自分は,これまで「目の前の子ども」にちゃんと注意を払ってこれてなかったのかもなあ,とも。

自分の感覚に正直でい続けるきっかけ

そういうちょっと悶々とした中で,自分が変わったハッキリしたきっかけは,6/29(土)。風越スタッフと,連携している軽井沢西部小の先生とで,これまでの経験や各々の現状についてがっつり話していた日のこと。自分は中高での経験しかないので,子どもに対する話し方が小学校の先生のように柔らかくないというモヤモヤを打ち明け,他の人たちはそういう話し方を最初から自然にできたものなのか聞いてみた。そしてスタッフの一人の返答にハッとさせられた。

「なにか型とか答えを自分の外に置いてそこに自分を近づけなきゃって考えるんじゃなくて,自分がそれを心地いいと思うかどうかが大事なんじゃないですか」

うーん,たしかに。風越に来てから,これまでと環境が違いすぎて,どこかこれまでの自分を否定して新しい環境に慣れなきゃ変わらなきゃと思ってた節はあったかも。でも言われてみれば,どこか自分の外に正解を置いてそこを目指すってアプローチは変えられていなくて,そここそ一番の変わりどころなのかもな,と。

自分の感覚に正直にいることって,言うほど簡単ではないものの,この日を受けて自分の組織の中での動き方はちょっとずつ変わった気がする。「こうしなくては」ってことはもちろんあるけど,それに向かう自分の気持ちをもっと大切にしようと思えたし,それをちゃんと周囲に伝えよう,とも。特に自分は不安を感じやすいけど,それともちゃんと向き合って,周りに伝えるのって大事なのかなーと。

そんな出来事と前後して,「ホームグループ」について考え始めた(いわゆる「クラス・学級」に相当するもので,軽井沢風越学園では異年齢で組む予定)。異年齢なんて一番経験のない自分が,いつのまにか他のスタッフとの議論を取りまとめるようになってきて,その中で各々の経験・考えからくるイメージを聞いていた。これが面白い。「大きい人たちが小さい人たちにどかどかっと関わりすぎると,小さい人たちは引っ張られて自分の生活をつくれなくなるんじゃないか」とか,「3歳から15歳が1つのホームグループにいて『何したい?』って聞いてみたら何が起こるか,めっちゃ面白そうじゃん」とか。自分が見ていなかった世界を見てきた人たちがいて,自分が見えていない世界が見えている/見ようとしている人たちがいる。

次第に自分の興味は,こういうさまざまな背景を持ったスタッフが,安心して全力を出せるミニマルな枠組みってどんなものだろう,ということに移っていき,ホームグループのある程度の人数組みやスタッフの動き方のイメージを示した。そのプロセス自体は悪くなかったんじゃないかなとは思うけど,そこでつくった枠組みがイケてる感じはしないし,多分2020年4月は別の形で迎えるんじゃないかなと今は思っている。他のスタッフのもっとぶっ飛んだイメージに自分自身ワクワクし始めたこともあるし,どういう枠組みがいいのかは子どもが来てみないと分からないなと納得したところもあるし,何より僕らが安心して全力を出すために必要なのは枠組みじゃなくて関係性なんだろうなと思い始めた。

この記事を読んでも分かるように,上に書いてきたようなグルグルって,本城や岩瀬がすでに1年も前に通ってきた道。自分の周回遅れっぷりを恥じながらも,かといってそれを見ないふりして理事やベテランの言葉にうなずいてたっていいものはできっこないから,こうやって自分が不安を出して他の人たちと考えてみて結局壊して,みたいなことは,一スタッフとして必要なプロセスなんだと信じたい。

なるべく多くを委ねるように

とまあここまで自分の体験を書いてきたわけだけど,これって多分来年4月から風越に入ってくる子どもたちが経験することなんじゃないかな,と感じ始め,その気持ちは日に日に強くなっている。考え抜いてきた理事たちがそれでも僕らスタッフに多くを委ねているように,僕らも来年は子どもたちになるべく多くを委ねたい。今はその練習期間。

「子どもたちだけじゃなく,保護者もまわりの人も,つくり手としてその場に集まり,お互いの考えや気持ちをしっかり聴きながら関わっていく。」なーんて書くと,ちょっとキレイすぎやしないか?って感じだけど,そっちの方が楽しそうだなと感覚的に思い始められているのはこの4ヶ月の成長なんだと思う。

ただもちろん,予期せぬ難しさや大変さ,手間もあるはず。「先生たちこんなことも決めてなかったの!?」と混乱されるだろうし,そういう分かりやすい混乱だけじゃなく,「なんかわかんないけどなんかやりにくい」みたいに,子どもたちがなんとなしのもどかしさを感じることも,きっとありそう。

どうなることやら分からないけど,とにかく開校後,子どもたちよりも懐深く鷹揚にいられる準備をしておきたい。これまた,全然簡単じゃなさそうだなあ。特に自分が専門にしている英語の部分ではつい決めたくなりすぎちゃう,固めたくなりすぎちゃうけど,ぐっとこらえて「本当に必要なところ」だけを準備して持っておこう。大部分は「隠し持っておく」くらいがいいのかもしれない。まだまだ一歩も二歩も足りないけれど,不安や不安定さを楽しめるくらいの備えをするために,残り時間もしっかり使っていこう。

…とは言うものの,どんな使い方をするのがいいかハッキリと見えているわけではないのが締まらないところではある。「子どもってスゴい!」的な信念や信頼感がおそらく一番の備えな気がするから,自分が子どもと接する時間も増やしながら,他のスタッフが持ってるイメージも,もっと具体的なあれこれに即して聞いていきたい。

#2019

山田 雄司

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